研究課題別研究評価
研究のねらい: | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
生物の生理現象の元となる様々な化学素反応を担う蛋白質は、水環境下で立体構造形成され、その機能を発現している。精緻な分子機械ともいえる蛋白質の動作原理や複雑な立体構造の構築原理を解き明かすために、これまでに10,000個にも及ぶ蛋白質の立体構造が、X線結晶構造解析によって明らかにされてきた。しかし、それら蛋白質の立体構造形成や生理反応の場を提供している水が、蛋白質のダイナミクスにいったいどのような影響を及ぼしているのかといった点については十分明らかにされていない。その第一の原因は、蛋白質立体構造解析の王道として用いられてきた常温下での結晶構造解析法では、動きやすい水分子の位置同定が困難であったからである。本研究では、 (1) 上記欠点を克服することが可能な極低温下での結晶構造解析技術の展開。 (2) 同技術による生理的、蛋白質物性的に興味ある蛋白質の低温結晶構造解析。 (3) 蛋白質分子を取り巻く水分子と蛋白質の相互作用形態の解明。 (4) 水和水の蛋白質の振動ダイナミクスへの影響の探求 を目指した。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
研究結果及び自己評価: | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
◆研究結果
◆研究者自己評価 各研究目標についての自己評価
◆今後の展望 この3年間を通じて、低温解析が蛋白質の水和構造解析に重要な寄与をしうることを示すことができた。しかし、比較的高い分解能で解析できる蛋白質に限られることも事実であった。生理的に重要な膜蛋白質や巨大分子複合体の立体構造解析では、分解能も低く、水分子の同定は容易ではない。しかし、分子のダイナミクスや生理反応を議論するためには分子の水和構造を構築する必要があると考えられる。例えば、最近、解析が完了したカルシウムポンプでは、どのようにしてカルシウムイオンの水和水が蛋白質によってはぎ取られ輸送されるのかは依然として不明である。本研究では今後、これまでに得られた水和構造を分類整理して水和構造のデータベースを作成し、あらゆる蛋白質の水和構造予測を行えるようにしたいと考えている。 また、現在解析中である温度変化下での原子分解能立体構造から、温度に依存した水素原子の揺らぎとガラス転移温度の相関について議論することが可能になるであろう。 本研究の今後の発展は、蛋白質、核酸、脂質、糖鎖といった生体特有の物質の活躍の場を与える第五の生体物質としての水について新しいパラダイムを展開できるものと期待している。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
領域総括の見解: | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
生命科学の基本命題である蛋白質の構造解析に関連して、蛋白質の環境である水分子との相互作用は重要な知見である。3年間の成果として、十分な数の系の水和構造の低温解析に成功した。特に水素位置が定まるまでに分解能を上げる見通しを持ったことは評価される。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
主な論文等: | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
外部発表48件(論文9件、総説・解説5件、口頭発表:国際会議10件、国内会議24件) (特許、受賞、招待講演等): ◆国際会議招待講演 M. Nakasako "Crystallographic studies on the hydration structures and the vibrational states of proteins" at Telluride Summer School "Protein Dynamics", Telluride, Colorado, U.S.A. July, 1999. |
This page updated on March 30, 2000
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