研究課題別研究評価
研究のねらい: | ||||||||||||||||||||||||||
生物はいろいろな分子の秩序のある集まりで、生命現象とはそこから生まれる機能である。分子の秩序ある集まりは、選択的な分子間での相互作用(分子認識)によってもたらされている。しかしながら生体の分子を認識することは、生体の分子にしかできないのであろうか? 生体分子を認識できる人工分子を合成することができれば、生体分子の高感度センサーや酵素のような特異的な触媒を開発することができるかもしれない。ある分子を認識するためには、いくつかある分子間での相互作用(静電相互作用・疎水性相互作用・van der Waals 相互作用・水素結合性相互作用)をうまく選び、かつそれがうまく働くように、認識する方の分子の構造を「設計」する必要がある。本研究では、最新の計算機化学と有機合成化学を活用して、生体分子を認識できる人工分子の開発を検討した。 | ||||||||||||||||||||||||||
研究結果及び自己評価: | ||||||||||||||||||||||||||
<研究結果>
<自己評価> 「生体分子を人工分子で認識する」 この研究題目は、時間の経過による妥協の芸術(?)である。 「完全人工分子による水中での水素結合場の構築」 これがさきがけ研究に採択された当時の研究題目である。 水という、水素結合が最も難しい溶媒中で水素結合によって生体分子を認識する。この目標を達成するために、いくつかの具体的な研究のサブテーマを設定した。その各々のテーマを遂行する過程で、この新しい化学の一分野はトライ&エラーであり、まったくもって予測も論理も未熟なレベルでしかない自然科学であることを痛感した。さらに本研究者がかつて身をおいていた有機合成化学は、分子を構築する唯一の学問でありながら、その内側にいたときに感じた完成度とはほど遠い未完成な学問であることも認識した。 「どこまで論理的に分子を設計することができるか?」 「どこまで自在に分子構造を構築することができるか?」 「そして合成された分子は、本当に予想された機能を持つのか?」 本研究者の興味は、「水中での水素結合場の構築」という具体的な研究課題から少しづつ離れ、現在の有機化学の限界に挑戦する抽象的な意識にシフトしていってしまった。それが上述の妥協の芸術としての研究課題に集約されたといっても過言ではない。もちろんそこから生まれた成果は,これまでにない新しい知見を含んだ結果であると自負している.しかしながら当初の目的からはかなり逸脱したことも事実である. したがって3年間の研究を狭義の到達度として自己評価すれば、はっきり言ってしまえば0点である。本研究者が3年間で到達したことは、自身が身をおいていた(現在もおいている?)有機(合成)化学を、外から冷静に見つめることが本当の意味でできたということであり、その意味では高い自己評価(自己満足?)を与えられると思うのみである。 <今後の展開>
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領域総括の見解: | ||||||||||||||||||||||||||
研究というものは必ずしも当初予想したように展開するものではなく、そうでない程興味ある結果が得られる場合もある。リボースに対するポケットを形成する分子、そして疎水ポケットと呼べるような分子、そして小さなDNAを認識できる人工分子の作成の成功は3年間のさきがけ研究としては十分といえる。そしてまた、この間獲得できたこの分野の研究についての認識も貴重なものかも知れない。 | ||||||||||||||||||||||||||
主な論文等: | ||||||||||||||||||||||||||
(特許、受賞、招待講演等): ◆招待講演:
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This page updated on March 30, 2000
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