研究課題別中間評価結果(環境8)


1.研究課題名

 微生物の機能強化による水環境修復技術の確立

2.研究代表者名

 前川孝昭 筑波大学農林工学系 教授

3.研究概要

 本研究では、水環境の汚染原因である窒素の除去に係わる硝化・脱窒菌の機能向上を、菌体をとりまく、環境的制約、微生物間阻害や相乗作用など混合培養系の秩序の解明と遺伝子修飾により達成を図る。さらに本研究は、生態系を工学的に制御するバイオレメディエーション技術を含めた生態工学の確立と熱帯・温帯地域への適正化技術の開発をめざす。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 水域の窒素汚染問題に対し、微生物の機能強化による水環境修復を目的としているが、微生物の繁殖を助けるための、栄養塩、微量金属供与法を開発してきた。栄養塩包括の担体を作成し、担体表面に微生物を高密度に繁殖させる。又、磁性担体を活用して、担体のバイオリアクターとしての操作性を高める等、水環境修復技術の基礎的な要素技術を確立してきた。ただ、メタン発酵時、プロピオン酸の生成等の律速要因も明らかになっており、全体として、水環境修復技術を仕上げる上での課題は一部、残されている。効果を検証する目的で、実地適用テストも部分的に実施しており、実用への見通しもある程度得られている。今後は、更に、有効な菌種の探索、硝化・脱膣の阻害要因の克服等の個別要素技術において、ブレークスルーを狙うとともに、実地適用テストを通じて効果の持続、コスト等の実用性に対する検討も進める。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 栄養塩、微量金属を包括固定した担体、磁性担体による操作性の向上を中心的なアイデアとする水環境修復のプロセス技術に関しては、国内外で、特許を申請している。又、微生物による修復に関して、微量金属の吸収速度で評価する方法を開発した。霞ヶ浦に 流入する江戸崎で硝化・脱窒の河川構造物を考案、生活廃水に対する浄化効果を検証したが、ほぼ実用の見通しを得ている。今後は、硝化・脱窒に関する、更に効率の高い菌種の開発と硝化・脱窒の律則要因の解決が課題になる。また、微生物による方法の限界について、実用性を考慮した、検証が望まれる。国内外で、過酷条件下での実地適用テストを行うことで効果を検証すると同時に、効果の持続、処理時間、コストなどの実用性につき見通しを得ることが期待される。
4-3. 総合的評価
 水域窒素汚染に対し、微生物の機能強化による修復技術の目処をつけ、国内外に特許を出願している。今後、本技術の有効性を国外も含めて、より広範囲に実証するための実地適用テストと、更に一歩進めて、処理時間、コスト等の実用性の見当をつけたい。

This page updated on Feburary 3, 2000

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