研究課題別中間評価結果(環境6)


1.研究課題名

 環境低負荷型の高分子物質生産システムの開発

2.研究代表者名

 土肥義治 理化学研究所 主任研究員

3.研究概要

 生物の物質生産機能を利用して、再生可能な炭素資源(糖、植物油など)や二酸化炭素から優れた性能や特異な機能をもつ高分子物質を生産する、持続可能な高分子物質生産システムの確立をめざす。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 バイオポリエステル(生分解性高分子)について、生合成、機能解明、構造解析、遺伝子解析、高生産生物の育種、効率的生産、高性能材料化、高機能材料化、リサイクリング技術開発等の一連の基礎研究を推進してきた。微生物の高分子物質合成反応に関与する酵素群と遺伝子構造の解析を進め、遺伝子工学的、及び代謝工学的手法により、合目的構造の新規バイオポリエステルを生合成する手法を開発した。また、遺伝子操作により特定のバイオポリエステルを高効率で生産する微生物や植物の育種のための基礎研究も行った。生合成された高分子の表面構造や、固体構造を制御することによって高性能・高機能材料を創製することを試みている。また、これら高分子の微生物分解メカニズムを解明し、分解酵素の構造と特性を理解することによって高分子材料のリサイクリング技術を確立する研究を行っている。今後は、ポリエステル合成酵素の大量生産手法を確立して、合成酵素の構造と機能を明らかにする。藍藻を用いての、共重合ポリエステルの効率的生産法の確立、植物油からのポリエステル高効率生産手法の開発を進める。表面・固体構造の制御により、生分解速度をコントロールする技術を開発し、ポリエステル分解酵素の結晶化と酵素作用機構を解明する。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 新規ポリエステルの生合成ポリエステル生産菌、生合成に関与する酵素遺伝子の取得に成功した。ポリエステルの生合成機構は形態学的に解明され、生合成酵素の遺伝子操作で糖類、植物油、有機酸から共重合ポリエステルを高効率生産する微生物を育種出来た。ポリエステルの構造とその制御により、分解速度をコントロールすることに関しては、構造と、分解速度の相関を調べて、かなりの知見を得ている。ポリエステル分解酵素を精製して酵素の構造と機能の関係を調べているが、今のところ、結晶化には成功していない。遺伝子工学的に酵素遺伝子の各ドメインの機能と酵素分解活性を探求している。分解性を中心とする研究は重要で、生分解速度のコントロール、分解酵素の解析等、 期待される。研究実績は、着実に積み重ねられており、研究展開はほぼ順調で、今後は、実用的な課題に、考慮を払いつつ、基礎的な研究におけるブレークスルーを期待したい。
4-3. 総合的評価
 新規ポリエステルを生合成する数種のポリエステル生産菌の探索に成功した。更に関与する酵素の遺伝子取得、構造、機能の解析を通して、合目的構造の分子設計に基づく生合成手法の開発、構造制御による物性、分解速度のコントロールの研究等、着実に成果をあげている。今後は植物への遺伝子操作による効率的生合成等、発展的な展開を期待したい。

This page updated on Feburary 3, 2000

Copyright©2000 Japan Science and Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp