研究課題別中間評価結果(環境1)


1.研究課題名

 東アジアにおける酸性物質及びオゾンの生成と沈着に関する観測と環境影響評価

2.研究代表者名

 秋元 肇 東京大学先端科学技術研究センター

3.研究概要

 本プロジェクトは、人間活動の影響が東アジアにおけるオゾン及び酸性物質の濃度変動や分布に与えている影響を定量的に明らかにし、その環境影響評価を行うことを目的とする。
 この目的のため、東アジアにおけるいくつかのリモート地点におけるオゾン、酸性物質などの通年連続観測、大気ラジカルを含む大気微量成分を測定するための専用観測機器の開発、酸性・塩基性ガス、アルデヒド等の自動連続測定装置の開発を行い、それらを利用した大気観測の実施を目的としている。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 これまでに、東アジアのリモート地点として、八方、隠岐、沖縄、小笠原、利尻の国内5地点及びモンディ(シベリア)、インタノンおよびスリナカリン(共にタイ)の3地点においてオゾンの通年観測を行ってきた。また、中国におけるオゾン観測地点として安徽省・黄山を新たに設定し、観測を開始した。
 これまでに得られた観測データの解析結果から、北東アジアにおける大陸性気塊は、シベリア東部に代表される「ユーゴスラビア大陸バックグランド気塊」と中国、韓国など「アジア大陸バックグランド気塊」に大別されることがわかり、それぞれの気塊別の地表オゾンの季節的変化が明らかにされた。北東アジアの「地域的汚染気塊」中では、1990年代において、オゾンが約2.5%/年ずつ増加しつづけており、今後のこの地域におけるオゾンの農作物、森林への環境影響の評価が今後重要であること等が明らかになった。
 専用観測装置の開発では、OH/HO2 ラジカル測定装置、PAN測定装置、HNO3ガス測定装置、酸性・塩基性ガス、アルデヒド自動連続測定装置などを開発し、観測地点で実用試験を行いつつある。これらの観測機器は、今後の東アジアにおけるオゾン、酸性物質などの生成、沈着の解明に貢献できるものと期待される。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
本研究で計画された東アジアのリモート地点における観測とその解析についての計画の進捗状況は、ほぼ予定通りである。また、観測機器の開発については予定より完成度の低いものもあるが、今後挽回できる予定である。
 今後、下記のような研究課題に取り組む予定である。
(1)東アジアにおけるオゾン等の光化学的生成及び長距離輸送メカニズムの解明と大気微量成分の高感度測定装置の開発と光化学反応メカニズムの解明。
(2)東アジアにおける酸性物質等の分布の実態と収支に関わる実態、トレンドなどを明らかにする。
(3)わが国におけるオゾンの植生に与える影響を評価する。
 これらの成果は、今後のわが国を中心とした東アジアにおける環境政策に科学的な知見を提供できるものと期待できる。
4-3. 総合的評価
 優れた研究にまとまる可能性がある。
その成果は、環境政策への一つの有効な提言として活用できる可能性がある。
また、本研究で開発した観測機器は、今後、測定装置として製品化が期待される。

This page updated on Feburary 3, 2000

Copyright©2000 Japan Science and Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp