研究課題別中間評価結果(極限7)


1.研究課題名

 画素の小さいX線検出用CCDの開発

2.研究代表者名

 常深 博 大阪大学 大学院宇宙地球科学研究科 教授

3.研究概要

 当研究チーム結成の直接の動機は、天体からのX線の偏光を観測する為に高性能な微小画素X線CCD素子の作製技術を開発するとともに、その測定利用技術・データ処理技術を開発し、それらを用いてX線発生源である天体の詳細なダイナミックス等を調べることにある。これらの新技術の開発を先駆けて行ない、X線天文学の発展に大きく寄与する。本研究目的の達成に付随する産業的・社会的効果として、我が国におけるX線CCD作製技術の進歩、ならびに将来医療分野で利用される場合の基盤技術整備が期待できる。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 X線CCDとして既に欧米製の画素サイズ12μmのものが有るが、偏光を測定するには画素を更に小さくすることが必要である。そのため浜松ホトニクスとの共同研究を行なっている。当初の目標は画素サイズ9μmであったが、既にそれを越えて8μmのCCDをほぼ完成し、現在6μmのものの開発の可能性を調べている。高感度のX線CCDとしては空乏層の厚いことが必要であるが、ノウハウの蓄積により50μmの厚さのものが可能になってきた。X線CCDを観測衛星に搭載した場合に宇宙線から受けるダメージを回復する方法として電荷注入法の研究を行なっている。また、受光面積を大きくする為に3面接続可能な素子の開発を行なっている。
 新しい展開として、実験室内で使用可能な偏光X線発生装置の開発が有る。これにより偏光X線の測定実験に放射光施設を利用すること無く常時実験ができ、且つビーム径の大きい偏光X線が得られる。他の新展開としてX線入射位置測定精度を飛躍的に高める「メッシュ法」の開発が有る。本方法により入射位置精度をμm単位まで小さく出来る。この方法はX線入射位置測定のみならず、CCD内部構造及び内部の局部的X線感度の分布を検査することに利用できる。
 X線CCD素子の低雑音性、空乏層の厚さ、大面積素子の作製では欧米製の素子に比して未だ不足の面が有るが、共同研究グループの浜松ホトニクスの技術は確実に向上し間もなく追い付く見通しであり、画素サイズでは優っている。
 当研究チームに於ける小画素X線CCDの開発、CCD利用技術及びソフトウェアーの開発、CCD損傷回復法の開発等は当初スケジュール通りに順調で、天体からのX線の偏光を測定する方法の開発と云う目標に向かって今後も順当に進展させて行く見込みである。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 挙げた成果は上記の様に実験室用偏光X線発生装置、メッシュ法の考案、8μmサイズCCD作製、CCD利用技術開発、3面接続可能なCCD素子の開発等である。小画素CCDを用いた偏光X線観測法は天体物理学に於ける新手法として注目され世界のX線天文学者等が利用する様になろう。当研究チームではアメリカおよびヨーロッパが天文衛星に搭載するX線CCD素子の性能試験にメッシュ法を早速適用した。天体観測のみならず、医学分野に於けるX線用CCDの利用が充分予測される。現在、X線CCDは可視光CCDに比べると産業上の比率は小さいが、ひと度医学関係に使われ始めれば飛躍的な需要が見込まれる。当研究課題の遂行は我が国のCCD作製技術の向上に貢献しており、産業上の面からも当課題の研究推進の意義は大きい。当研究チームによるX線CCDの開発及び利用技術の確立の将来的意義は大きい。画素サイズ8μmのX線CCD作製は目途が立っており、6μmサイズのCCD作製も可能になろう。
4-3. 総合的評価
 当チームは計画に沿って研究を遂行し、満足な成果を挙げている。阪大研究グループも民間製造グループも充実した研究を展開してきた。それにより、欧米に比べて出遅れた観の有った我が国のX線CCD製造技術は早くも追い付いた。これは本研究課題が採択され、必要な研究費の投入によって初めて実現したことであり、大変喜ばしい。
 今後は世界の市場に進出して行く為にも本研究を更に発展させることが必要であり、当チームは研究代表者を先頭に、それに充分応え得るレベル、能力、組織・統率力を具えている。画素の小さいX線CCDの特徴・利点を最大に活用するには製造技術、測定技術、データ処理技術の開発、展開、改良が必要であり、それはまた先端の基礎、応用の技術レベルの発展を促す。

This page updated on Feburary 3, 2000

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