研究課題別中間評価結果(単一4)


1.研究課題名

 オキシジェニクス(高分子錯体)

2.研究代表者名

 土田 英俊(早稲田大学理工学部 教授)

3.研究概要

 高分子錯体が構築する極微小空間を利用した電子過程制御に関する基礎研究で、一段階多電子移動を利用する「錯体部の配位活性制御と革新的化学反応の構築」を研究課題とする。標題は、酸素分子が関与する展開を出発点としていることに由るものである。
 まず、多電子移動については、極微細空間に取り込まれた酸素が、μ-dioxo型複核錯体を経て、容易に開裂することを見い出した。この結果を利用して、ポリチオフェン、ポリスルフホニウム等の新規な高分子合成法を編み出した。
 一方、逆に配位子場を調節することにより、電子移動の阻止、あるいは抑制が可能となった。この結果は、新規な分子機能の開発につながるものである。現在では、この結果を活用して、液相や固相での酸素濃縮、または促進輸送(例えば、人工血液等の開発)を進めている。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 土田教授のチームは、早大の一研究室を中心とする構成で、まとまりは良く、当初の計画通りに進捗している。特に、錯体による酸素の電子状態をコントロールする手法により、高分子合成への途が開けた。また、電子移動を抑制することにより、酸素の濃縮を可能とし、それによる酸素輸液(人工血液)の開発も行っている。どちらかというと、高分子工学的研究であるが、錯体内における酸素分子の開裂過程の解明等、基礎的分野でも計算化学を活用して、多電子移動の実証が進んだ。得られた高分子材料につき、実用の可能性も見られる。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 多電子移動系の構築によるポリチオフェン、ポリスルフホニウム等の高分子合成法を編み出した。これらの知見を用いて、新しいエンプラ、新しい高分子電解質を創出する方法を提案している。また、前述の人工血液等も概念として興味あるものであり、次の段階として、これらの材料につき実用化(生理作用も含め)を目指した性能評価を行うこととなる。
4-3. 総合的評価
 独自の概念(多電子移動制御)を駆使して、新規高分子合成法を開発したこと等は、充分評価される。
 今後、これまでの知見を活用した実用化への道を探ることになろうが、大量合成、性能把握、コスト削減等の解決すべき課題に関しては、共同研究体制が必要と思われる。

This page updated on Feburary 3, 2000

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