研究課題別中間評価結果(単一3)


1.研究課題名

 X線解析による分子の励起構造の解明

2.研究代表者名

 大橋 裕二 (東京工業大学大学院理工学研究科 教授)

3.研究概要

 本研究では、結晶中で励起状態にある分子の構造を解析するために、まず、迅速に回折データを集めることができる二次元検出器を搭載したX線回折装置を開発し、この装置を用いて、放射光をX線源として利用する、マイクロ秒での時分割構造解析法を確立する。そして、比較的長寿命の励起状態をもつ無機・有機化合物の結晶を検索して、この手法により励起構造を解析し、その分子の示す物理的、化学的性質を解明する。
 現在までに、新たな二次元検出器、MSGC(Micro Strip Gas Chamber)の基礎開発が終わり、独創的な時分割測定用の回折装置を作成し、SP-8等、放射光を用いるデータ収集の段階に入った。また、別途イメージングプレートを二次元の検出器とする回折装置に関し、共同開発を行って、広角度のデータを数時間内で測定する装置の開発を終えた。この装置は、一部で市販されている。本題の励起構造の解明に向けては、結晶フォトクロミズム等につき検討を加えてきた。そして、これらの機器を活用することにより、従来よりはるかに早く、かつ、精度も高く、準安定領域の構造を解明することに成功している。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 大橋教授の率いるグループの目的は、「迅速X線回折装置の開発」と、それによる「分子の励起状態の解明」にあるが、前者の装置開発は、当初の計画を上回るスピードで進行している。まだ、開発途上とはいえ、世界初のMSGC検出器を用いることで、ミリ秒以下の時間分解能が達成され、準安定領域にある結晶の構造解析も進展した。
 今後は、SP-8等へ、機器を持ち込んで、準安定領域や励起状態の構造解明を進展させることが予定されている。その達成確度は高い。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 世界に先駆けた二次元検出器MSGCの開発、新規イメージングプレートの開発等、短期間に大きな成果を出した。それぞれ特許の確立を見ることで、第三世代のX線回折装置として、単なる迅速構造解析だけでなく、医療用にも、放射線分析にも応用が可能で、世界的にも大きなインパクトを生み出すものと期待される。また、実用化に向けての新たなプロジェクト等も動きつつある。
4-3. 総合的評価
 全体的に、ハイレベルの研究で、かつ、世界水準を抜く研究成果が既に得られている。これらの成果の活用で、当初の目標である励起状態の構造解明に向けて、より高時間分解能、データ取込安定性等のさらなる挑戦を期待する。

This page updated on Feburary 3, 2000

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