研究課題別中間評価結果(量子6)


1.研究課題名

 配列したミクロ空間での新物質系の創製と物性

2.研究代表者名

 寺崎 治(東北大学大学院理学研究科 助教授)

3.研究概要

 高品質ゼオライト結晶などの配列したミクロ空間を作成し、それを利用してクラスターを三次元的に配列した新しいタイプの物質系を作成する。これらの物質系の構造解析とその生成機構を解明する。そして、これらの物質系に発現する磁性、超伝導、非線形光学特性、触媒特性などの新奇な物性発現の基本的理解を進めるとともに新しい機能物質の創生を目指す。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 透過電子顕微鏡を使ったミクロ多孔体の構造解析を確立し、ゼオライト以外に有機無機複合多孔体など、新物質を発見したことは進展といえる。新奇な物性の理解としては、アルカリ金属クラスターの磁性理解の進展はあるが、採択時の磁性理解を再検討して進めたもので、機能物質創出に結びつく新しい物性発現の期待は満たされていない。本チームの最大の特徴は、電子顕微鏡によるミクロ多孔体構造解析など、高い物質構造解析能力にある。その力を最大限に発揮することによって新奇ミクロ多孔体を発見創出し、「構造解析-新奇ミクロ多孔体の発見-新機能の探索」ということで、よりダイナミックな研究の展開が期待される。物性・機能といっても、単に「物理」ということに拘ることなく、「量子化学的」な視点からの探求も必要になる。この意味でゼオライトの触媒機能探索などの新しい芽も重要である。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 1) 低密度ミクロ多孔体の構造解析に極めて汎用性の高い電子顕微鏡構造解析法を開発し、各種ミクロ多孔体発見の強力な武器となっている。
2)1)を用いての各種ミクロ多孔体の構造解析と新奇ミクロ多孔体の発見。
 特に、シリケートに界面活性剤をインターカレートした無機有機ハイブリッドミクロ多孔体の発見は、新多孔体としての機能探索を期待させる。
3)ゼオライト空隙Co-Mo複合硫化物クラスターを合成し、その構造解析と触媒機能発現のメカニズムを解明した。高い水素化脱硫反応を示す物質で、ゼオライトの応用上からも注目されるものである。量子化学的な理解と機能探索に期待する。
4) ゼオライト空隙カリウムクラスタ-の強磁性の発現について、基本的理解の進展。新しい磁性発現メカニズムのモデルの完成を期待する。
4-3. 総合的評価
 ミクロ多孔体の構造解析手法の開発とそれを用いた各種ミクロ多孔体の解析と発見は評価される成果である。ミクロ多孔体に作成される各種クラスタの物性機能の発現が期待されるが、それに関する探求が十分でない。「構造解析-新奇ミクロ多孔体の発見-新機能の探索」という線上で、よりダイナミックな研究を新しい機能物質創生をめざして展開することを期待する。そのための環境はこれまでの研究で醸成されているはずである。

This page updated on Feburary 3, 2000

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