研究課題別中間評価結果(量子3)


1.研究課題名

 超構造分子の創製と有機量子デバイスへの応用

2.研究代表者名

 雀部博之(千歳科学技術大学 教授)

3.研究概要

 光電子機能を階層的・構造的に付与した超構造分子を合成し、この超構造分子を分子単位で操作して有機分子量子デバイスの基盤を築くことを目標とする超構造分子グループ、ならびに、電子授受、光照射、格子変調に応答する各種の有機磁性分子を合成し、量子スピン素子を創出することが目標である量子スピン素子グループからなる。両グループが超構造分子という共通の概念のもと、それぞれに機能の創出、探索を進めている。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 超構造分子グループはデンドリマーなどの光電子機能を構造的に制御した超構造分子を設計、合成し、それらを個々に分子操作して有機量子デバイスの基礎技術を確立するという観点からみると、具体的な成果の姿が見えてきていない。目標達成には相当の集中、努力が必要である。
 量子スピン素子グループは有機磁性材料の合成ということで、体系化した目標のもとに各種の有機磁性体を開発し、研究を進展させてきている。学問的に新しい分野にパイオニアとしての地歩を固めて学会をリードし、国際的にも注目されている。量子スピン素子の創出は難しい課題であるが、室温で強磁性的にスピンが整列する有機分子が得られてきており、芽は出てきている。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 超構造分子グループ: 単一分子からなる有機材料によるフォトリフラクティブ効果を観測し、これを用いた連想想起光メモリーの実証をしているが、本来の目標からすると副次的な成果である。 当初計画にあげたデンドリマーの合成に困難をきたし、超構造分子のレーザマニピュレーションなどの分子操作の対象となる具体的サンプルの確保に至っていない。超構造分子の概念を世界に先駆けて提唱してきており、その概念の具体的実証に本グループが先陣を切ることを期待する。
 量子スピン素子グループ:電子授受によるスピン分極ドナー、光応答性スピン分子、光子変調磁性体など、各種の有機磁性分子の創出とその磁性発現のメカニズムを明らかにして、この分野をリードした成果を出している。中でも、金ナノ粒子に有機ラジカルを吸着させることによる室温における強磁性の発現は、磁性量子ドットとして有機磁性分子の研究にブレイクスルーとなり得る新しい発見として興味深い。量子スピンデバイスの創出には道は遠いが、電子輸送をスピン状態で制御するようなアイディアも出てきており、デバイスプロセス研究者との共同研究ができれば、実現実証に向けた進展が期待できる。
4-3. 総合的評価
 有機分子に超構造分子という概念を持ち込み、有機分子の量子機能の発現とそのデバイス応用の可能性を実証するという目標で研究を進めてきているが、磁性機能を目指す量子スピン素子グループとは順調な進展を示し、量子スピンデバイスの創出を触発させる芽が育ちつつある。しかし、光電子機能を超構造分子にもたせて有機量子デバイスを目指す超構造分子グループは目標に沿った研究の進展が遅く、目標に向けての研究の集中が必要である。

This page updated on Feburary 3, 2000

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