研究課題別中間評価結果(生体6)


1.研究課題名

 「Fc受容体を介する生体防御システムの解析」

2.研究代表者名

 高井 俊行 東北大学加齢医学研究所教授

3.研究概要

 Fc受容体は、免疫複合体を認識し、エフェクター細胞の活性化あるいは抑制を行うことで生体防御システムを調節する重要な分子群である。システムの変調によって発症すると考えられるアレルギーや自己免疫疾患とこのFc受容体との関係を、遺伝子ノックアウトマウスの解析などを通じて明らかにする。炎症・アレルギーの治療法および薬剤の開発が新たな視点で可能となる。具体的には、3種のFcR欠損マウスを駆使してアレルギー、およびいくつかの自己免疫疾患におけるFcRの役割の解析を進めている。また、FcR近縁分子群として発見したPaired Immunoglobulin-like Receptor (PIR)分子群と、その近縁分子gp49についても欠損マウス作成および生化学的解析を進めている。今までに、FcRはアレルギー、およびいくつかの自己免疫疾患を正と負の両方向にコントロールする重要な分子群であることが分った。PIRとgp49は抑制型と活性型の受容体有する分子ファミリーを形成することが分ったが、そのリガンドや生理機能は不明であり、今後の重要課題となっている。

4.中間評価結果
4-1. 研究の進捗状況と今後の見込み
 当初の目標である(1)III型FcγR(FcγRIII)、IgAのFcRであるFcaR、そして新規なFcR近縁分子であるgp49の欠損マウスの作成、(2)IIB型FcγR(FcgRIIB)欠損マウスの過敏症応答能などの解析、(3)FcaRおよびgp49 cDNAの発現による機能解析に関してかなりの進展がみられる。また、PIR(Paired Ig-like Receptor)が興味深い分子であることが分かり、国際的な競争も激しく、望ましい展開となっている。共同研究グループからの成果は、今後に待たれる部分があるが、高井グループとしては、これまでのところ順調に推移していると言える。PIRとFcRに関する成果とが相俟って、免疫学の中での新規な研究分野ともいうべき「Immunoglobulin-Like Receptor(ILR)分子群の機能」というテーマが形成されつつあり、今後より一層の進展が期待できる。
4-2. 研究成果の現状と今後の見込み
 FcRに関しての原著論文は、Journal of Experimental Medicine、Journal of Biological Chemistryへ掲載されるなど、質、インパクトともによい成果がでていると思うが、さらにNature,Cell,Scienceなどへの掲載を目指して欲しい。特許は国内出願が2件ある。既に作製している3種類のFcR欠損マウスやPIR、gp49欠損マウスなどを用いて、広い意味でのFcR関連分子ファミリーの機能解析を行うことにより、アレルギー、自己免疫疾患、癌の征圧に向けた基礎研究基盤を確立して、さらなる展開と応用が期待される。また、FcRと癌免疫との関係、樹状細胞のFcRの利用などに関する特許出願もなされており、全く新規な成果が期待される。
4-3. 総合的評価
 FcR及びこれの近縁分子群として代表者らが見つけたPIRやgP49の欠損マウスを作成し、生化学的手法によりそれらの機能を解析し、多くの興味ある新知見を得ている。アレルギー治療への応用など有用な目的を持った研究で、アカデミックなレベルも高く、国際的にも先端的と評価できる。

This page updated on Feburary 3, 2000

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