1. | 研究の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
半導体中の電子10nm程の超薄膜(量子井戸)構造に閉じ込めると、膜面に沿った(x,
y)面内には自由に動くが、膜に垂直なz方向には、一連の定在波状態が形成され、その固有エネルギーは離散値Ez(1)、Ez
(2)…を取る。この超薄膜構造は、既に高性能レーザやFETなどの実現に広汎に利用されているが、最近も更に新しい可能性が模索され、準位間の遷移を利用した赤外検出器やレーザなど新しい素子が開発されている。 このような電子の量子力学的な制御をさらに発展させる手段として、極微な寸法の細線や箱に電子を閉じ込め、電子の自由度をさらに下げる試みが20年程前に榊らにより提案され、80年代の後半に実験的な試みが開始された。当初、形成可能な量子細線や量子箱の寸法は100nm程度であったため、各種の量子効果の発現は極低温条件下に限られていたが、90年代前後から10nm級の構造を形成する独特な手法が我々を含めて世界の先進グループで開発され、不完全ながらも量子準位間隔の大きな細線や箱が得られるようになってきた。本プロジェクトでは、まずこの新しいナノ構造の形成法を発展させるとともに、種々の極微量子細線や箱構造を設計・試作して1次元および零次元の自由度を持つ電子の量子状態がどこまで制御できるかを探索する研究を進めた。特に、先行の量子波プロジェクトで発表した自己形成法による量子箱の研究は世界的に大発展を見せているが、その推進には日米双方のグループにより少なからぬ寄与ができたと考えている。また、本グループ提案のエッジ形の量子細線などについても、多くの制約を残しながらも広汎な進展が得られ、1次元電子や励起子の特色がかなり明かになって きている。 本プロジェクトの第2の狙いは、量子井戸から量子箱に至るまでの様々なナノ構造において、ひとつの量子状態にある電子が他の量子状態へ遷移する過程を詳しく調べ、これを巧妙に制御することで、どのような新しい物性や機能が実現できるかを探索・解明することである。この研究にあっては、各種のナノ構造中の量子準位の間隔に共鳴するテラヘルツ電磁波の活用が極めて有効である。特に、UCSBの自由電子レーザは、この目的に極めて適している。今回の共同研究では、この可能性を活用したため、量子井戸中の励起子によるテラヘルツ領域での光混合や動的フランツ・ケルディシュ効果の発見や量子箱のユニークなテラヘルツ応答など様々な新知見を得た。さらに東京においても、量子遷移を利用した遠赤外・近赤外波長変換効果など様々な成果を得ることができた。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2. | 研究体制と参加研究者 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○研究体制
○参加研究者(*副代表研究者を含む)
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3. | 研究成果の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
○特許出願件数
○外部発表件数(1999年3月末)
○発表主要論文誌 Physical Review Letters/Applied Physics Letters/Physical Review B 主な研究成果
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4. | 研究交流 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本プロジェクトでは、カリフォルニア大学(UCSB)に常駐する研究員を日本側から派遣した。前半(河野)と後半(辻野)で交替したが、共同研究の推進で中心的役割を果たした。さらに東京側のすべての研究者は、随時出張し、東京で開発した量子構造を対象とする共同実験や、理論モデルに関する討論を推進した。これらの交流が呼び水となって、研究推進委員や日米双方で関連の研究者・大学院生が共同研究の推進に積極的に協力し、(別経費で1年間滞在するケースなど)両者をつなぐパイプがさらに強化された。このため、多くの実験試料と着想が両者の間を往来することになった。 米国側からは、東京での長期駐在者は1名に留まったが、共同研究のために短期の滞在や来訪を数回受け入れた。2人目の長期滞在者の候補を数名検討したが、米国の市民権(永住権)を持つもので、NSFのポストドクトラルの基準年俸(JSTよりかなり低い)で、東京の住宅状況に対応することの困難さなどのため、残念ながら実現しなかった。ただし、日米両グループ間の意思疎通は、両者の相互の訪問に加えて、多数の国際会議での出会いの機会に恵まれたため、極めてスムーズに進行したと考えている。特に、プロジェクト当初の1994年春に米国で行ったシンポジウムと打合せ、中問点の1997年夏にUCSBで行ったワークショップ、終了時点(1998年11月東京および99年3月UCSB)での終了シンポジウムで、多数のメンバーによる実り豊かな情報交換を達成した。 今回の日米共同研究には、フィンランドやオランダの研究者(量子波プロジェクトの元研究員および短期研究員)が興味を持ち、貴重な貢献をした。さらにフランスからの研究員を東京で受け入れたため、3極(多極)構造の研究交流が進展したことも記しておきたい。 |
This page updated on December 8, 1999
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