研究の概要


論文名

Memory of Macromolecular Hecility Assisted by Interaction with Achiral Small Molecules
(アキラルな低分子との相互作用を介した高分子のらせん構造の記憶)
doi:10.1038/20900


科学技術振興事業団 個人研究推進事業「形とはたらき」領域(領域総括 丸山工作)
研究課題 「動的らせん分子の創生と応用」
研究者 八島栄次 名古屋大学大学院工学研究科 教授
研究実施場所 名古屋大学大学院工学研究科
研究実施期間 平成10年10月〜平成13年9月

Fig. 1

光学不活性な高分子であるポリ((4-カルボキシフェニル)アセチレン)(poly-1)への一方向巻きのらせん構造の誘起とその記憶の模式図

(説明)

(a): (R)の絶対配置を有する光学活性アミン((R)-2)をpoly-1のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に加えると左巻きのらせんが誘起される。
(b): 同様に、(S)の絶対配置を有する光学活性なアミノアルコール((S)-3)を加えると(a)とは逆に右巻きのらせんが誘起される。加えるアミンの絶対配置を変えることによって、らせんの向きを制御できる。ただし、らせんの向きについてはtentative。
(c): 強い酸(CF3CO2H)を加えると光学活性なアミン・アミノアルコールがポリマーから剥がれ、らせんはほどける。
(d): (a)で作った溶液に、(S)-3を加えると、(S)-3が選択的にポリマーと相互作用し、らせんの向きは反転する。これは、(S)-3(アミノアルコール)のポリマーへの親和力が(R)-2(アミン)より強いためである(実験で確認済み)。
(e): (a)で作った溶液に、(R)-2より親和力の強いアキラルなエタノールアミン(4)を大過剰加え、ゲルろ過クロマトグラフィーで(R)-2を完全に除去した後も、ポリマーの一方向巻きのらせん構造は記憶として保持される。

注(用語の説明)

キラル: ギリシャ語の掌を意味し、右手と左手のように、鏡に映した時に、実像と鏡像が互いに重なり合わない形(分子)をいう。核酸やタンパク質を構成するアミノ酸や糖はキラルな分子であり、右手分子と左手分子の両方が存在するが、これら生体高分子は、一方の鏡像体だけからできている。一方、実像と鏡像が重なる場合、その分子(形)はアキラルであるという。
光学活性: 分子に光を当てたときに偏光面が回転し、左旋性あるいは右旋性を示すことをいい、このような性質を示す物質は光学活性体と呼ばれ、キラルな分子に特徴的な性質である。

This page updated on June 16, 1999

Copyright©1999 Japan Scienceand Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp