学生が企業を見るきっかけを作るには指導教員の責務です。

立命館大学
防災フロンティア研究センター センター長
深川 良一
本学のMC学生を対象としたコーオプ研修で、企業でのインターンシップ経験後に大きく成長する学生がいることを見て、DC学生にも重要と実感するようになりました。そんな中、「イノベーション創出若手研究人材養成」への提案段階から係わり、H22年度に「産学連携コーオプ型高度人材育成プログラム」が採択されて以降、私の研究室に来たDC学生の全員に参加を勧め、毎年、一人ずつ、企業へインターンシップに派遣しました。指導教員の中には、学位論文の観点などから、インターシップ中の時間ロスを心配される方もいると思いますが、それ以上に、学生に「企業でバリバリと仕事できることを知る」きっかけを与えること、また、学生を「親元(指導教員)から離して自分で考えて自分で解決させる」きっかけを与える方が重要で、そのために、学生の背中を押すのが教員の責務だと思っています。今後は、広く海外企業にも派遣したいと準備を進めています。
([PD・DCの方へ]もお読みください。)若手研究者が適性を生かして人生を送れるような進路選択を支援

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大阪大学・大学院理学研究科・宇宙地球科学専攻 教授
芝井 広 -
現在の所謂「ポスドク問題」は、大学院定員の大幅増員にもかかわらず教育の中身を変えてこなかった大学院教育(及び拙速に定員増員を推進した政府)に責任の一端があると考えています。大学院教育の中で、後継者や大学教員を育てることに固執していないか、研究と教育を両立させることによって社会で役立つ人材を育てるように、教員は意識を変えていくべきだと思います。このような考えから私は、DC学生に本学のCLIC(協働育成型イノベーション創出リーダー養成)を紹介し、時には企業への就職を勧めます。私の研究プロジェクトでは、ポスドクに研究を任せるのではなく、なるべく多くの大学院生と一緒に研究を進めることにしています。これが大学院生の実力の向上にたいへん役に立っています。このようにして、大学院生本人にとって充実した人生を送れるように支援することが大学院教員の責務の一つであると考えています。
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若手研究者との信頼関係構築が一番大切です。

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北海道大学大学院 獣医学研究科 教授
昆 泰ェ氏 - 韓国で獣医師資格を取得後、将来において研究者を希望する留学生が私の研究室に所属しました。指導教員として日常の大学院教育および研究指導だけではなく、大学院修了後の進路相談も行っているのですが、欧米あるいは自国での就労より日本での就職を強く希望するようになりました。また、我が国の獣医師免許の取得も大きな目標となりました。日本の獣医師資格を取得すれば就職には困りませんが、製薬系企業に深い興味を抱くようになったことから、我が国の企業を知るためにHoP-Station(北大パイオニア人材育成ステーション)に登録させました。本人のやりたいことが明確であったため、製薬企業のニーズと一致してインターンシップを経て就職が内定しました。教員が親身になってPD/DCと接して信頼関係が構築できれば、優秀な若手研究者は力を発揮できる場を得ることができると思っています。([PD・DCの方へ]もお読みください。)
行動力と人脈、そして人間性

- 北海道大学大学院 環境科学院 助教
星野洋一郎氏 - 海外青年協力隊での活動後に、私の研究室に来たMC学生がいました。海外での専門経験から組織培養の研究を深めようとする意志が明確で、そのため、将来進路については早い段階から相談できました。MC後半になると、将来、国際協力の仕事がしたいことを明確にし、そのステップとしてDCに進みました。3年間で学位を取らせたいとの教員としても思いもありましたが、本人の希望を尊重し、将来、役に立つであろうスキルをDC時代に身につけて欲しいと考え、二つのことを実践しました。一つはCoSTEP(科学技術コミュニケーション教育研究部門)の受講、もう一つは国際学会への参加です。インターンシップに関しては、自分自身で、国際学会で知り合った人脈を活かしてオランダの会社を決めてきました。行動力と人脈、そしてこの間に養った人間性が信頼されたことを示しているのだと思っています。([PD・DCの方へ]もお読みください。)
インターンシップはDCと企業がお互いを知るチャンスです。

- 信州大学 工学部 環境機能工学科 准教授
牛 立斌氏 - DC学生をD2後期に地元のオリオン機械株式会社に3か月間のインターンシップに派遣。
- D2後期に機械メーカーに3か月間のインターンシップに派遣しました。博士論文を書くのに非常に忙しい時期でしたが、このインターンシップ終了直後に就職内定し、結果的には、D3は博士論文に没頭でき、本人にとっては、研究面、並びに、就職面の両方において非常に効率よく進めることができました。今回のインターンシップでは2つの幸運がありました。一つは、インターンシップ先が地元の企業であり、平日は会社の研究、土日と夜間は学校の研究と、両立することができました。もう一つは、この学生が一度社会人の経験があり、3か月で学生と企業の双方がお互いに「良い」ことを確認できたことです。インターンシップはDCと企業がお互いを知るチャンスです。([PD・DCの方へ]もお読みください。)
インターンシップで企業が熱意を持って求める情報を得ることができました。

- 北海道大学大学院 農学研究院 教授
増田 税 氏 - D2学生を大手ゼネコンに6か月間のインターンシップに派遣
- 植物バイオ分野からの企業就職は農業関連が中心ですが、修士卒に比べDCでは難しく、特に女性では更に難しいのが現状です。そんな中、当大学の「北大パイオニア人材協働育成システムの構築」に、通常の就職活動では見つけることのできない企業、それも「○○分野の学生がほしい」との真剣なオファーがありました。しかし、インターンシップに出すには博士論文をまとめることへの不安もあり、1年間の期限を設けて博士論文の目処を立てることを「縛り」として、当時DC1にいた学生の背中を押してみました。その後、学生が学術論文を短期間で書き上げたのを評価して、半年間のインターンシップに思い切って出しました。そしてその学生は見違えるように成長し、就職内定も取りました。繰り返します。インターンシップの良さは、@普通では入ってこない企業情報が入り、A更に企業もマッチすれば採用するとの熱意を持っており、Bそれを目指すことにより学生のモチベーションが上がります。([PD・DCの方へ]もお読みください。)
インターンシップは進路を真剣に考えさせる高い教育効果があります。

- 北海道大学大学院 水産科学研究院 教授
佐伯 宏樹 氏 - D1学生を企業に3か月間のインターンシップに派遣
- 博士課程学生を対象としたインターンシップは、一定の期間が設定されているので、研究や生産現場などの日常に触れることができます。そのため、イメージと実際の相違を様々な観点から実感できる良い機会となり、進路を真剣に考える大きなきかっけとなります。当研究室から参加した大学院生の場合、企業と大学間の研究に対する取組の違いが理解できて進路選択の幅が広がったようです。このようにインターンシップは、就職活動としてだけでなく、キャリア教育の一環とも位置づけることができます。「D1で参加する場合はキャリア教育の位置づけ、D2以降では具体的な就職活動の一環」と大枠で理解すると、参加目的に応じたタイミングと期間を考慮することが重要です。今回はD1生が3か月間インターンシップに参加しましたが、事前に不在期間を年間計画に盛り込むことで、学位取得研究への影響を避けることができました。研究の進捗に不安を持つことでインターンシップ参加に消極的な学生には、指導教官の後押しが必要と思います。また結果の副産物ではありますが、インターンシップ後に企業との新しい共同研究が始まり、研究室の活動にとってもプラスとなりました。今後もD1からD2前半での参加を奨励したいと考えています。([PD・DCの方へ]もお読みください。)
学生を社会に送り出すことが教員の義務。インターンシップはそのためにすばらしいものです。

- 北海道大学大学院 水産科学研究院 教授
宮下 和夫 氏 - D1、D2の二人の学生を企業に3か月間のインターンシップに派遣
- 私の研究室では学位を取得後、大学教員や研究機関へ就職していますが、このままでは間口が狭いと考えていたとき、「北大パイオニア人材協働育成システムの構築」が始まりました。まず、二人のD1学生に勧め、二人ともインターンシップに行かせました。インターンシップによる3か月や半年の研究の遅れは何とも思いませんでしたが、インターンシップに行ってそのまま企業に就職することを「可」とする覚悟が必要でした。つまり、「DC学生は3年間で学位をとることがまずありき」ではなく、学生を社会に送り出すことが教員の義務と考えています。インターンシップはその考えにはすばらしいものです。今後も、積極的に学生の背中を押していくつもりです。([PD・DCの方へ]もお読みください。)
インターンシップを先行して推進している機関ではどのようなキャリアパス形成支援を行っていますか?
科学技術振興調整費「イノベーション創出若手研究人材養成」採択機関に聞いてみました。
Q1.キャリアパス形成支援のためにどのような取組をしていますか。
Q2.本事業を実施して良かったことはありますか。

武田 穣
産学官連携推進本部連携推進部長・教授
- 名古屋大学(平成20年度採択)
- A1.社会貢献人材育成本部を創設し、若手研究人材(大学院生・ポスドク等)の人材育成を行う『ビジネス人材育成センター』を新設しました。
センターでは、B人研修という座学形式で、①就職活動期研修②ビジネススキル研修③業界別基礎研修を実施しています。そして多様な派遣先での長期インターンシップを実施しています。
A2.本事業に対して、自校にとどまらず、国内外の大学、研究機関より登録があり、900名を超えています。また、長期インターンシップを実施した養成者の9割はポスドクであり、養成者の9割以上が民間企業に就職をしました。
また同時に、若手人材に対して個別面談も重要視しており、年間約80人の就職実績を残し、多彩なキャリアパス開拓に成功しています。

三島良直
大学院総合理工学研究科・教授
- 東京工業大学(平成20年度採択)
- A1.産業界で活躍できる研究者の養成と多彩なキャリアパス創出のための支援機構「プロダクティブリーダー養成機構」を設置し、企業の視点・知識を涵養する学内外専門家・実務家講師陣による講義、ポテンシャルや意欲発揮の場として企業と繋がる価値創造インターンシップ、就職への機会作りの場となる各種企業交流機会など、企業との多彩な交流機会を提供しています。また、専任キャリアアドバイザーによる全受講生との「キャリア面談」を設定し、個々の受講生が新たなキャリアパスに歩みだすまでフォローアップしています。
A2.プログラムに参加した受講生で、学部・修士時代に就職活動を一度もしていないなど自信を失っていた者も、実際にインターンシップを経て就職まで至ることが出来ました。当初10社から始まった企業との連携も、企業交流プログラム等への参加が年々高まり、100社に届く企業と関係を構築できました。研究室の学生やポスドクに、教員が自ら進んでプログラム参加を打診してくれる、教員からの勧めで受講を決めるという例が増え、主旨に賛同する教員が増えてきました。

松井利之
産学協同高度人材育成センター教授
- 大阪府立大学(平成20年度採択)
- A1.産業界への博士人材輩出の方針を明確に打ち出し、学長の強いリーダーシップにより、全学を挙げてその実現に取り組んでいます。キャリア開発支援事業実施母体の21世紀科学研究機構、産学協同高度人材育成センターでは、産学協同による産業指向型人材育成を推進し、プログラムを大学院教育として全学展開する取組を行っています。本プログラムによる学生教育の一貫として開催される異分野融合研究会には、学生のみならず若手教員も積極的に参加し、専門外の技術分野へも視野を広げるための意識改革を進めています。
A2.博士後期課程学生に企業で活躍したいという機運が芽生えてきたことが確実に感じられます。また、進学説明会や異分野融合研究会などの活動による波及的な効果として、意識の高い博士前期課程学生が後期課程へ進学するという意欲が着実に高まってきています。これらを受けて、学内教員の人材育成 センターの活動への理解が深まり、プログラム運営に積極的にかかわる教員の数が増えるなど、教員の意識改革も広がりを見せています。また、本学プロ グラムを利用し学位保有者を積極的に採用する大手企業が現れるなど、産業界にも大きなインパクトを与える結果となっています。
どのようなキャリアパス形成支援を行っていますか?

西河淳
アグロイノベーション高度人材養成センター センター長
- 東京農工大学(平成20年度採択)
- A1.食糧、水資源、人口、感染症対策など21世紀の諸問題に関連する技術革新、産業創出、社会政策提言ができる人材育成を推進する中心母
体として「アグロイノベーション高度人材養成センター」を設置し、農学を中心として全国から養成者を公募し、選抜を実施しています。大学を拠点と
したオープン型のネットワークを構築し、全国での説明会やTV会議セミナーに加え、ツイッター等も活用し幅広く情報を発信しています。
A2.全国の農学系博士人材との情報交換や、キャリアパスに関するマッチングを通じて、今の博士がおかれている状況と、産業会での活躍や社会貢献意識が強い博士人材が生まれてきていることが実感できました。長期取組とともに実施した、ワークショップ、研修の運営を通じて、従来の講義にはなかった、グループワーク形式による、イノベーションプロセスを実践的に行う講義についての手法・ノウハウを蓄積したほか、全国から養成者を公募したことで、全国の大学、博士人材とのネットワークを形成することが出来ました。

伴戸久徳
人材育成本部北大パイオニア人材育成ステーション(HoP-Station)教授
- 北海道大学(平成21年度採択)
- A1.企業等で活躍するために、マーケティング、リーダーシップ論をテーマに含む講義と演習、著名な企業人の講演会の開催などにより、企業等での研究開発を理解し、幅広い知見を取得させる「キャリアマネジメントセミナー」や、ポスターセッションや個人面談等により、企業とポスドクのマッチング、人脈形成を目的とする「キャリア形成パートナーシップ」を実施しています。さらに、「博士力実践インターンシップ」プログラムで、意欲と能力のあるポストドクター等を長期インターンシップに派遣し、企業等における研究開発を実体験してもらっています。
A2.まず、DC, PDが企業で活躍するためのキャリア形成に対して、大学が行うべき教育内容やシステムを充実させる必要があるという認識が、大学部局内に広がってきたことが挙げられます。次に、サイエンスやアカデミック研究以外にも大学院で学ぶべき内容があることの認識が大学院生(MC, DC)に認知されてきたこと、最後に、北海道大学の大学院教育システム改革に向けた取組みに賛同し、それに参加・協力する企業群が増えてきたことです。
インターンシップ派遣者の指導教官に、インターンシップの効果を聞いてみました。

- 東北大学イノベーション博士人材育成プログラム
情報科学研究科長亀山充隆 - 博士後期課程学生のインターンシップは、とりわけ意義深いと考えておりました。その理由は、現在行っている研究とは必ずしも一致しない、自分にとって未知の分野の研究・開発の研究体験をできるからであります。これは博士後期課程学生であるからこそ、意義あることであると思います。すでにある研究テーマを通して、常日頃から研究スタイルをある程度身に着けている後期課程学生でも、未知の研修テーマに臨むときは、緊張感と共に、キーポイントを素早く飲み込むという理解力も要求されます。この種のことは企業に入ってからも重要な要因となります。例えば、未知の新製品開発には今まで蓄積した知識や実践力以上のものが必要になり、いかにそれを迅速に身につけるかというようなことです。このためには、既にその技術に熟知している人に可能な限り聞いてみることが効率的で、コミュニケーション能力も大いに要請されます。
今回私の研究室の学生1名がそのようなインターンシップ研修の機会を得たことは大変意義深く、終了後の効果は顕著でありました。そのテーマ内容は守秘義務があるため私も具体的には聞いておりませんが、大学院ゼミなどでも自分の専門外のテーマの発表に対しても質問を積極的にするようになったなどというようなところにも現われております。また、当該部門とは異なるもののインターンシップ先の企業への就職が内定しております。我々の電気・情報分野は、後期課程学生の就職に困ることはないのですが、やはり本人が納得して企業を選ぶ確信を得ることにも有用でありました。社会的なマナー・礼儀もさらに磨かれたような気もしております。
人間は日常性すなわち日頃なれていることは違和感なく臨めるのですが、変化があることには敷居が高くなります。「物理法則において変化を妨げる方向に作用する」というのと類似しており、日頃の日常性に打ち克ち挑戦をしていくという姿勢を持てることは誰にでも出来ることではありません。したがって、インターンシップに臨んでみようと思うことはたいへん称賛に値することと思います。企業において、従来の延長上ではない新製品・システム開発をしてい くという姿勢にも相通じるものであります。
「科学技術人材育成費補助事業ポストドクターのキャリア開発支援についてポストドクター・インターンシップ推進事業」
文部科学省 科学技術・学術政策局 基盤政策課
編集協力:(独)科学技術振興機構 科学技術システム開発事業推進室

