原子力システム研究開発事業
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平成18年度募集要項― 特別推進分野 ―

技術用語の解説(III章関連)

アルファベット順
CMPO〔オクチル(フェニル)- N、N -ジイソブチルカルバモイルメチルホスフィンオキシド〕
SETFICS法によるTRU抽出工程に用いられる溶媒。
DRACS(Direct Reactor Auxiliary Cooling System、直接炉心冷却系)
崩壊熱除去系の方式の一つで、原子炉容器内に冷却コイルを設け、原子炉容器内の冷却材を介して炉心を直接冷却する方式。冷却コイルに伝えられた熱は、原子炉容器の外に設けられた空気冷却器から大気中に放熱される。
EVST(Ex-vessel Storage Tank、炉外燃料貯蔵槽)
新燃料及び使用済燃料の中継貯蔵を行う貯蔵容器、遮蔽プラグ、回転ラック等から構成される設備である。また炉心内で所定の燃焼期間を経た使用済燃料を炉心から取り出す際に、使用済燃料から発生する崩壊熱が十分低下するまで、一定期間ナトリウム中で貯蔵できる冷却系統設備を有する。
FP(Fission Product、核分裂生成物)
ウランやプルトニウム等の核分裂に伴って生じた核種及びその一連の放射性崩壊で生じる核種のこと。大部分が放射性であり、その半減期は1秒以下のものから数百万年に及ぶものまで幅広い。
IHX(Intermediate Heat Exchanger、中間熱交換器)
ナトリウムや溶融塩等を冷却材として利用する原子炉では、熱交換器の伝熱管に欠陥が生ずる場合等の事故対策のために、二段階熱交換方式が採用される場合がある。この場合、原子炉側からみて初段の熱交換器を中間熱交換器という。
LBB(Leak Before Break、破断前漏洩)
内部流体を含む構造物中に欠陥が存在し、それが運転期間中に進展して貫通に至ったとしても、材料の靱性が十分に高いか、または作用応力が低ければ、漏洩を検知することにより破断することなしに適切な対応処置が講じることができ、すなわち全断面瞬時破断(いわゆるギロチン破断)は起らないとする概念である。
MA(Minor Actinide、マイナーアクチニド)
周期律表において原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムに至る15の元素を総称してアクチノイド元素といい、このうちアクチニウムを除いたものをアクチニド元素という。原子番号90、91、92のトリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)は天然に存在するアクチニドである。使用済燃料中でウラン、プルトニウム(Pu)に比べ存在量の少ないネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)をマイナーアクチニドと称する。
MOX燃料 (Mix Oxide Fuel、ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料)
ウラン酸化物とプルトニウム酸化物を混合して作った燃料である。
ODS鋼(Oxide Dispersion Strengthened フェライト鋼、酸化物分散強化型フェライト鋼)
フェライト系ステンレス鋼は、燃料の高燃焼度化を達成するために必要な耐照射性には優れているものの、高温強度が不足している。ODS鋼は、微細な安定酸化物粒子をフェライト系ステンレス鋼の中に分散させることにより高温強度の飛躍的な改善をねらった材料で、高燃焼度燃料被覆管として期待され開発中である。当面は、製造技術の確立、製造コスト低減の見通しが最重要課題となっている。
O/M比
酸化物燃料の化学組成は、おおまかにはウラン、プルトニウム等の重金属元素1個に対して酸素2個をもつ化合物と考えられるが、正確には酸素(Oxygen)原子数と重金属(Metal)原子数の比(「O/M比」という)は2からわずかにずれる。このわずかな差が原子炉中の燃料のふるまいに影響を及ぼすので、O/M比の調整は燃料の性能を確保する上で特に重要な項目である。
PNC-FMS鋼
PNC-FMS鋼は、オーステナイト鋼に比べて耐スエリング性が格段に優れていることから、高速増殖炉の燃料集合体ラッパ管部材として開発が進められている高強度フェライト/マルテンサイト鋼である。
PRACS(Primary Reactor Auxiliary Cooling System、1次系共用型炉心冷却系)
高速増殖炉プラントの安全性を確保するために、原子炉異常時に確実に原子炉を停止し、炉停止後の崩壊熱を確実に除去する崩壊熱除去系の一つの方式である。1次冷却系中間熱交換器(IHX)に組み込んだ補助熱交換器(冷却コイル)により、1次系を介して炉心を冷却する方式である。
PSA(Probabilistic Safety Assessment、確率論的安全評価)
原子力施設等で発生し得るあらゆる事象を対象としてその発生頻度と発生時の影響を定量評価し、その積としての「リスク(危険度)」がどれ程小さいかで安全性の度合いを表現する手法である。PSAは、決定論的安全評価を補完する有用な情報を提供できるため、世界各国で広範に利用されている。また、この評価手法については、核燃料サイクル施設の安全評価への適用も試行されている。
SETFICS(Solvent Extraction for Trivalent-f-elements Intra-group Separation in CMPO-complexant System)
使用済燃料の硝酸溶解液からウランやプルトニウム等を回収した後の高酸性廃液からアメリシウム(Am)やキュリウム(Cm)を回収するために、核燃料サイクル開発機構が開発した溶媒抽出法ベースのMA回収システム。廃液からAm、Cmを回収しFPを取除くプロセス(一部のランタニド元素はAm、Cmに随伴)と、その中間製品から前プロセスで使われる硝酸塩等の試薬を取除くプロセスで構成され、最終製品は一部のランタニド元素を含むAm、Cmである。後者のプロセスの抽出溶媒には、CMPO/TBP混合溶媒を用いる。
TBP (Tributyl phosphate、リン酸トリブチル)
リン酸トリブチル〔(C4H9)3-O4P〕はウラン精鉱からウラン精製を行う際の溶媒抽出、使用済燃料再処理の際の溶媒抽出などの場合に抽出溶媒として用いられる。融点-80℃、沸点289℃、比重0.98(25℃)、水に難溶で有機溶媒に容易に溶解する。放射線分解及び加水分解によりMBP(リン酸モノブチル)を生成する。ランタノイド元素、アクチノイド元素を酸溶液から選択的に抽出する性質があり、硝酸に対し安定であること、耐放射線性も比較的高いことから、ドデカンなどと混合して、粘度、比重を調整して再処理用抽出溶媒として用いられる。
TRU (Transuranium、超ウラン元素)
原子番号がウラン(原子番号92)より大きい元素.いずれも人工の放射性元素で、現在112番元素までが知られている。このうち原子番号103のローレンシウムまでの元素はアクチノイドに含まれる。
UIS(Upper Internal Structure、炉心上部機構)
高速増殖炉の原子炉容器の回転プラグから炉心上部に吊り下げられ、遮蔽部、胴、整流板、熱電対支持物等で構成される構造体。燃料集合体出口での冷却材温度検出、制御棒の所定位置への支持等の機能を持つ。

五十音順
アクチノイド(Actinoid)
原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムに至る15元素Ac, Th, Pa, U, Np, Pu, Am, Cm, Bk, Cf, Es, Fm, Md, No, Lrの総称。詳細は「MA」を参照
希土類元素
元素番号57から71までのランタニド元素(15元素:ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gb)、テルビウム(Tb)、ジスプロジウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテシウム(Lu))に加えて、これらに性質が極めて類以したスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素を加えた17元素のこと。化学的な性質が類以しており、相互の分離が難しい。
決定論的安全評価
決定論的安全評価は、原子炉の安全評価において確率論と対比して用いられる手法のことで、ある規模まで事故は起きるものとして、その時のプラントや環境に対する影響を定量評価し、それがある一定基準以下であれば、その事故に対して安全性が確保されていると判断する。
再臨界回避
高速増殖炉の安全評価で考えられてきた仮想的な炉心損傷時には、炉心冷却材の大規模な沸騰によって反応度が増加して即発臨界を超過した場合、あるいは溶融した炉心燃料が大規模に集中して再臨界を超過した場合、溶融燃料の急激な温度上昇によって、核分裂性ガスや冷却材蒸気の膨張、燃料被覆管や集合体管等のスチール並びに燃料自体が蒸発・膨張して、炉心内で機械的なエネルギーを放出する可能性が考えられる。このような再臨界が発生することがないように、炉心燃料設計の段階からあらかじめ考慮し、即発臨界を超過しないこと及び溶融燃料が集中しないよう、溶融初期に炉心外に流出するような工夫を講じることを再臨界回避方策という。
晶析技術
溶液を過飽和にして溶質を結晶として取り出す操作をいう。温度変化による溶解度変化の小さなものは蒸発濃縮により過飽和状態を作り出す。温度変化により溶解度が急激に減少するものは冷却法を用いる。溶解液からのウラン(硝酸ウラニル)の晶析は後者による。
除染係数(DF: Decontamination Factor)
燃料サイクルにおける製品の不純物である放射性物質が、除染処理によって除去される程度を示す指標である。通常、除染処理前の放射能濃度を処理後の放射能濃度で割った値で表す。再処理工程において精製したウランあるいはプルトニウム製品の除染係数は、〔使用済燃料の放射能濃度〕/〔再処理後の製品中の放射能濃度〕の比(ここで、放射能濃度は特定核種の濃度とする場合もある)で求められ、除染係数が高いほど、核分裂生成物等の不純物が除去されたことを意味する。
先進湿式法
軽水炉燃料の再処理法として実績のあるPUREX法をベースに、これを大幅に見直した「簡素化溶媒抽出法」(抽出溶媒にTBPを用いるが、プルトニウムをウラン及びネプツニウムと分離せず、低除染で共回収する)と「晶析法」を組み合せ、更にTRU回収機能を付加した先進的な湿式再処理方法。
抽出クロマトグラフィ
イオン交換法の原理に基づき、交換体への任意の元素の吸着速度を制御する手法。
低除染
再処理前後のDF、従来の軽水炉燃料再処理では106〜108が要求される。これに対し、高速増殖炉では中性子経済が良いため、軽水炉ほどの除染は必要とされない。現在までの評価では、5〜4,000程度を低除染の指標としている。
デブリ
炉心損傷事故時において、溶融または崩壊した燃料棒等が冷却材中で冷却され、がれき(debris)状となったもの。
ボイド反応度
固体燃料と冷却材に液体を用いる原子炉の炉心内において、冷却材の沸騰あるいは気泡通過等の原因によるボイド(気泡)化による炉心反応度に及ぼす核的な反応度効果。ナトリウムを冷却材に用いる高速増殖炉では、冷却材の沸点が炉心内では900℃以上となり、安全評価で想定される事故事象に対しては冷却材が沸騰することはないように設計される。仮想的な炉心損傷を仮定した場合には、冷却材沸騰(ボイド化)による正の反応度効果が炉心損傷の事象推移に影響を与えることが、炉心崩壊事故に関する研究から示されており、再臨界を回避するためには正のボイド反応度の大きさを制限する必要がある。
崩壊熱除去
原子炉では核分裂連鎖反応の結果、エネルギ−を発生するとともに、核分裂生成物が生成される。この核分裂生成物は放射性物質であり、崩壊により、放射線を放出しながら熱を発生する。即ち原子炉の炉心は、炉停止後も核分裂生成物の崩壊により、持続して熱が発生する。これを崩壊熱といい、その発生量は、原子炉停止直後では、定格出力の約10%に相当する。その後、核分裂生成物の崩壊に伴って崩壊熱の発生量は減少する。したがって原子炉は運転停止後も一定時間冷却系の一部を用いて、この崩壊熱を除去する必要があり、この目的のための冷却系を崩壊熱除去系(余熱除去系)と呼んでいる。
溶媒抽出法
完全には混ざり合わない二種類の液体間で、一方の液体中の特定の成分を他方の液体中に移動させるプロセスのこと。液-液抽出ともいう。再処理法において現在主流となっているPUREX法では溶媒抽出法が用いられている。PUREX法では、燃料を溶解した硝酸水溶液から、ドデカン等で希釈したTBP中にウラン、プルトニウムを抽出する。高レベル廃液の群分離工程にもこの溶媒抽出法の応用が研究されており高レベル廃液からのマイナーアクチノイドの分離回収、またマイナーアクチノイドと希土類元素との分離のために、様々な溶媒抽出系が試されている。
ラーソンミラーパラメータ
長時間破断試験の結果が得られない場合は、それより短時間のデータに基づいて外挿する必要がある。この外挿法として、温度補償時間パラメータを用いる方法がある。有名なパラメータの一つが、ラーソンミラーパラメータ P=T(C+log tr)であり、Tは温度、Cは定数、trはクリープ破断時間である。
ラフィネート
簡素化溶媒抽出工程において、U、Pu、Npを回収した後のMA元素やFP元素を含む硝酸溶液。
臨界管理
燃料サイクル施設において臨界事故の発生を防止するために核燃料物質を管理すること。取扱う容器の形状により臨界を防止する形状管理と、取扱う量そのものを制限する質量管理、取扱い時の濃度により管理する濃度管理等の方法がある。
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