進化型計算と自己組織化による適応的画像分類法の開発

代表研究者: 馳澤 盛一郎 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)

①目的

本研究では、現代の生命科学や医療に欠かせないツールとなっている「画像解析」の高度化と効率化を目指しています。細胞や組織の形や状態を撮影して専門家が解析することは、病気の仕組みや生命現象の理解を進める上で重要なアプローチです。そのために顕微鏡やCT、MRI、核医学画像など多くのイメージング装置で研究開発が進み、画像の量や質は向上を続けています。一方、多様で膨大な画像データは従来の解析手段で処理しきれず、生命情報の凝集している画像データを活かしきれないという問題に直面しています。そこで、多くの画像の種類や解析の目的に柔軟に対応できる、汎用性の高い画像分類や画像評価のシステムを構築することを目的とします。

②研究概要

生命科学の基礎研究から応用分野にまで幅広く利用できる画像分類や画像評価のシステムの基礎として、撮影対象や撮影装置にあわせて最適な画像の評価基準(特徴)を探し出すアルゴリズム(計算手法)の開発を行います。また、研究分野や実験ごとに目的に応じた分類や評価を行うために、各分野の専門家の知識や判断基準を取り入れることが容易となる仕組みを研究します。そして「細胞分裂のしくみ」、「癌組織の診断」、「植物の環境への適応」などを具体的テーマとして、光学顕微鏡、CT、MRI、核医学画像から得られる実際の画像を用いたテストと改良を進めることにより、関連した専門分野ですぐに利用できるシステムを構築します。

③研究概要図

馳澤盛一郎進化型計算と自己組織化による適応的画像分類法の開発

④成果

平成19年度は、画像を自動的に分類するシステムのアウトラインとして、画像の評価基準を約百種に限定したプロトタイプを作成し、顕微鏡画像を用いたテストを行いました。そして繊維状構造の方向性や粒子の大きさと密度を評価するために適した評価基準を複数追加し、細胞内部の動きの解析に応用しました。さらに癌組織の画像診断への応用のためにマウス移植モデルの開発と画像の評価基準の検討を行いました。
なお、http://hasezawa.ib.k.u-tokyo.ac.jp/zp/Kbi/AdimicProj にて、画像からの評価基準の測定に関する個別のプログラムを、フリーの画像解析ソフトウェア ImageJ 用のプラグインの形態で公開しています。