転写制御領域の構築原理解明

代表研究者: 中井 謙太 (東京大学医科学研究所 教授)

①目的

本研究の目的は、単細胞生物からヒトにわたる様々な生物種のゲノムにおいて、遺伝子の転写制御情報がどのように書き込まれているのかを理解することである。具体的には、与えられた遺伝子の周囲の塩基配列から、その遺伝子が受ける制御の内容(たとえばどのような外部刺激に応答するか、どのような組織や発生時期特異的に発現するか、など)を読み取ることを目指す。そのために、主に転写開始点上流配列中に存在する転写因子結合候補部位の一次元配列上の配置パターンに着目することで、転写制御領域のデザイン原理を追求する。

②研究概要

上述のデザイン原理を理解するために、3つのアプローチを試みる。まず、近縁種の配列が多数得られている細菌(または哺乳類)のゲノムにおいて、制御配列が進化を通じてどのように保存されてきたかを観察することで、重要な性質を探索する。次に、比較的プロモーターサイズが小型で、共通の発現パターンを示すプロモーター群が得られるホヤなどのモデル生物のデータを用いて、組織特異的発現プロモーターの共通構造を数理的にモデル化する。最後に、表現形が詳しく知られているヒトプロモーターの構造を網羅的に改変するなどの実験により、その性質をより直接的に探求する。最終的にはこれらの研究を総合して、普遍的な原理の発見に努める。

③研究概要図

中井謙太転写制御領域の構築原理解明

④成果

グラム陰性菌のクラス内で保存される保存配列を系統的に取り出して、文献による既知転写因子結合部位データベース(DBTBS)に追加した。ホヤと線虫における筋肉特異的プロモーターの構造をマルコフ連鎖という確率モデルを使って表現し、未知の筋肉特異的発現遺伝子をゲノムから探索した。またグラフィカルモデリングという手法を用いて、哺乳類のヒストン遺伝子プロモーターや出芽酵母のプロモーターを解析し、転写因子間の相互作用を予測した。ヒトの培養細胞を用いて、451種類のプロモーター配列の活性を測定し、塩基配列上の特徴と活性との0.8程度の相関を得た。

【関連リンク】

DBTBS[外部リンク]
DBTSS[外部リンク]
Melina II[外部リンク]