メタボロームMSスペクトル統合データベースの開発(Metabolome-Mass Spectral Database)

代表研究者: 西岡 孝明 (慶應義塾大学大学院 教授)

①目的

私たち生物は、細胞内の化学反応を複雑に組み合わせた代謝反応ネットワークによって多様な代謝物質をつくりだし、生命活動の物質的基盤としています。代謝物質を化学分析するメタボローム解析は、物質に基づいて生命活動を理解することによって、医療をはじめ生物を利用した物質生産に役立てようとする研究です。本研究開発課題では、微生物や植物由来の2次代謝物質の化学および生物学データの収集と、高精度な質量分析(MS)で測定したマススペクトルの収集とを併せて、メタボローム解析を自動化します。また、生理活性を有する2次代謝物質の代謝反応ネットワークを明らかにして、ゲノム情報と関連づけます。

②研究概要

植物や微生物でこれまでに見つけられた2次代謝物質のほとんどは、代謝反応ネットワークが明らかにされていません。そこで、2次代謝物質の化学構造や見つけられた生物種を、学術論文から収集したデータベース、KNApSAcK、を作っています。それと同時に、収集した2次代謝物質を化学構造式に基づいて系統的に分類することによって、代謝物質をゲノム情報とリンクさせるために必要な代謝反応ネットワークの推定などのツールを開発しています。また、代謝物質を高精度MSで測定したマススペクトルを収集したデータベース、MassBank、を作っています。これは新しい2次代謝物質の探索、発見などのメタボローム解析に特化したデータベースです。

③研究概要図

西岡孝明メタボロームMSスペクトル統合データベースの開発(Metabolome-Mass Spectral Database)

④成果

データベースKNApSAcKは、植物の既知代謝物質の約40 %にあたる 21,314 化合物と、それが見つけられた生物種との関係 43,096 対を収集しました。化学構造の階層分類と生物分類はデータベースMetabolome.JPの代謝反応ネットワーク推定ツールなどに反映しています。データベースMassBankは、データ形式を共通化することによって、マススペクトルを測定した研究機関で公開する分散型データベースを実現しました。国内6ヶ所、海外(ドイツ)1ヶ所にサーバーを設置しています。11の異なるMSで測定した1,174代謝物質、10,344のマススペクトルを検索することができます。データベースは以下のアドレスで公開しています。

【関連リンク】

KNApSAcK[外部リンク]
MassBank[外部リンク]
関連したデータベース Metabolome.JP[外部リンク]