事後評価報告書


バイオインフォマティクス推進事業
平成17年度終了「生命情報データベース高度化・標準化」研究開発課題 事後評価報告書

バイオインフォマティクス推進センター 統括
勝木元也

1.研究開発の概要

「生命情報データベース高度化・標準化」研究開発は、膨大な生物情報からの有用知識の発見、実験計画の立案に不可欠なデータベースの構築、およびその高度化を目指した課題を選定している。これらの成果が21世紀のバイオインフォマティクスの先駆けとして発展するよう支援を行っている。

今回、平成13年度より5年間の研究開発期間を終了したことにともない事後評価を行ったのでここに報告する。

2.研究開発成果の概要

<パスウェイ・データベースについて>
パスウェイデータベース(KEGG)の高度化・標準化の観点から、生命システムに関連した様々な機能階層情報をBRITEデータベースとして、金久實博士が代表研究者として構築した。パスウェイマップでは表現できない幅広い機能情報を語彙の体系およびそれに伴う分子の体系としてコンピュータ化し、また、機能解釈の自動化についても技術的に達成した。

シグナル伝達データベースの高度化・標準化の観点から、シグナル伝達系を主とする細胞機能の分子機序について生命科学知識を扱う情報処理技術を開発し、たんぱく質、生命現象、相互作用、細胞局在部位オントロジーの体系化をINOHデータベースとして、高木利久博士が代表研究者として構築した。パスウェイデータフォーマットの国際標準化の仕様策定にも積極的に関与した。

<国際協力データベースについて>
国際塩基配列データベースの高度化・標準化の観点から、データ品質に関する問題と遺伝子発現データへの対応として、ゲノム配列のアノテーション(注釈)の再評価に役立つOASYSおよびGTOPの拡充、遺伝子発現情報の登録・査定・蓄積・公開さらに空間的・時間的比較解析を可能とするMADBおよびBSD を、菅原秀明博士が代表研究者として構築した。これらに、パスウェイデータベース、蛋白質立体構造データベースを加えた情報資源の統合検索システムの構築もXML技術とWebサービス技術により試みられた。

蛋白質立体構造データベースの高度化・標準化の観点から、XMLを用いた標準化記述の確立へ貢献し、オリジナルデータに欠損している分子機能や実験条件等の情報を文献から抽出して追加する他、類似構造(フォールド)の検索や類似分子表面の検索を可能とするなどを、中村春木博士が代表研究者として実施した。国際協力として、アジア・オセアニア地区からのデータ登録を担当し、2005年は全世界の登録の1/3を担当するまでになった。

3.各課題の事後評価結果

(1)「 2項関係に基づくゲノムと生命システムの機能解読」(PDF形式、178KB)
金久 實(国立大学法人京都大学化学研究所 教授)
(2)「 ゲノム生物学バックボーンデータベースの構築提供」(PDF形式、154KB)
菅原 秀明(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 教授)
(3)「 シグナルオントロジーとバイオタームバンクの開発」(PDF形式、2M)
高木 利久(国立大学法人東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
(4)「 蛋白質立体構造データベースの高度化」(PDF形式176KB)
中村 春木(国立大学法人大阪大学蛋白質研究所 教授)
(参考)

1)公開されているデータベースの主要なホームページ
http://www.genome.jp/kegg/brite.html
http://www.jst-bird.nig.ac.jp/
http://www.inoh.org/
http://www.pdbj.org/

2)外部発表件数*1

国内 国外
論文*2 24 112 136
招待・口頭講演 121 133 254
ポスター発表 196 37 233
合計 341 282 623

*1:件数は各代表研究者が研究開発終了報告書に記したデータを採用した。
*2:論文は原著論文のみで印刷中のものは含むが、投稿中のものは含まない。

3) 特許出願 なし