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プログラム
13:00 ~13:20 開会挨拶
13:00 ~13:10 主催者挨拶 北澤 宏一 JST理事長
13:10 ~13:20 来賓挨拶 藤木 完治 文部科学省研究開発局長
13:20 ~14:00 第1部 基調講演
13:20 ~14:00 低炭素社会を実現するには 小宮山 宏 JST低炭素社会戦略センター長
株式会社三菱総合研究所理事長
東京大学前総長
三菱総研HP 議事
14:00 ~15:00 第2部 講演 ― 低炭素社会を目指して
14:00 ~14:30 低炭素社会に対する
科学技術の貢献
濱野 稔重
シャープ株式会社代表取締役
副社長執行役員
発表資料
PDF
議事
14:30 ~15:00 低炭素社会実現に向けた
地域の取り組み
三村 申吾 青森県知事 発表資料
PDF
議事
15:00 ~15:15 休憩
15:15 ~16:55 第3部 パネルディスカッション―
低炭素社会実現のために必要な行動とは
議事
司会 山田 興一
JST低炭素社会戦略センター副センター長
東京大学
パネリスト
相澤 益男
総合科学技術会議議員
発表資料
PDF
伊藤 智明
ソーラーフロンティア株式会社執行役員
発表資料
PDF
濱野 稔重
シャープ株式会社代表取締役
副社長執行役員
発表資料
PDF
三村 申吾
青森県知事
発表資料
PDF
松橋 隆治
JST低炭素社会戦略センター研究統括
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
発表資料
PDF
16:55 ~17:00 閉会挨拶
16:55 ~17:00 主催者挨拶
山田 興一
JST低炭素社会戦略センター副センター長
東京大学
小宮山 宏 第1部 基調講演要旨
小宮山 宏(JST低炭素社会戦略センター長)
「低炭素社会を実現するためには」

低炭素社会戦略センター(以下LCS)は低炭素社会を目指す日本に対して答えを出していきます。具体的には、「エネルギー効率3倍、物質循環システムの構築、再生可能エネルギー2倍」というビジョンの基に、具体的な方策を示していきます。

資源が少なくエネルギー源を輸入に頼ってきた日本は、高価なエネルギーコストを削減するために、省資源、省エネルギーを積極的に推進してきた過去があります。しかし、他国では未だ効率化の余地があります。温暖化対策に対する世界的な風潮は、これら課題先進国の日本にとって、他国に技術を売り込む大きなチャンスです。

途上国での人口増加が進んでいる中、自動車、住宅、セメント等の人工物も急速に増加していますが、必ず飽和する時期がきます。飽和した人工物に対して、課題先進国の日本が世界をリードして、リサイクルによる省資源化、エネルギー効率の向上を推進していくことで、世界的にエネルギー消費量を抑えることが可能と考えています。

低炭素化というと、化石燃料によるエネルギー生成を再生可能エネルギーに代替していくという議論に陥りがちですが、まずは既存のエネルギー供給の枠組みの中で、エネルギー効率を最大限、向上していくことが重要です。途上国に対して、温室効果ガス削減の数値目標を課すのではなく、最大限のエネルギー効率化を義務化し、経済成長については権利として与えることで、世界的に合意可能な目標を策定することが可能と考えています。

エネルギー効率の向上を考える上で、明確な目標を示すことも重要です。産業界においては、現存技術に囚われて意欲的な目標を掲げることを嫌う傾向があります。そこで、学術界において理論的な見地から実現可能な目標を示すことが重要となっており、これが、大学の役割と考えています。

しかし、産業界に代表される「社会」と、大学に代表される「科学技術」にはお互いに距離があります。LCSは「社会」と「科学技術」をついないでいくことを役割と捉えて、低炭素社会に対して実現可能な回答を示していきます。また、様々な温暖化対策技術を社会に導入していく上で、初期投資を誰が負担するのかが問題になります。LCSは実現性の高い政策として、投資負担の仕組についても提言していきます。

LCSはこれらの行動計画の基、実際に動き始めています。大学、自治体、LCSを含む「プラチナ構想ネットワーク」の構築を図りつつ、市民主導で暮らしをよくし、新しい産業を興し、GDPを増やしていきます。

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濱野 稔重 第2部 講演(低炭素社会を目指して)要旨
濱野  稔重 (シャープ株式会社代表取締役、副社長執行役員)
「低炭素社会に対する科学技術の貢献」

1.シャープの概要・紹介

シャープ株式会社は、1912年に創業し2年後の2012年には操業100周年を迎えます。事業内容としてはAV・通信機器、情報機器、健康・環境機器、電子デバイス等の4分野で構成されています。事業ビジョンとしては、省エネ・創エネ機器を核とした環境・健康事業で世界に貢献し、またオンリーワン液晶ディスプレイでユビキタス社会に貢献する、エコポジティブカンパニーを目指しています。シャープはこれまでに液晶で37年、LEDで40年、太陽電池で47年の量産実績を有し、省エネ、創エネ商品の歴史は古いと言えます。

2.低炭素社会をリードする環境技術

地球温暖化は、世界の環境問題の一つとして大変話題を呼んでいるテーマです。世界の動向としては、新エネルギー・省エネルギーに関する大規模プロジェクトが拡大しており、日本政府としては、環境省が策定した中期ロードマップでは太陽光発電システム導入目標としては2020年度では最大50GWとしています。日本はGDP1ドルを生産するためのCO2排出量が非常に少なく、中国と比べても1990年、2007年では8.9~12.9倍の違いがみられています。これは、日本が国際競争力を高め、世界市場へ邁進するビジネスチャンスになると考えています。

シャープが試算したCO2削減シミュレーションによると、太陽光発電システムは120GW級の導入で基準年比6%の削減を、家庭におけるLED照明と電気製品の省エネ機器の普及によって基準年比2.1%削減でき、当社の得意とする僅かな事業分野だけでも1990年基準年比で8.1%のCO2削減効果が期待されています。新エネルギーへの期待は大きく、2010年時点で新エネルギーは全電力量の2.2%しかありませんが、2050年には太陽光発電だけで25.1%まで伸びるとみる予測もあります。今後の太陽光発電の普及に向けては、発電コストにおいて家庭用電力や原子力発電コスト並みにするようなグリッドパリティの実現に向けた技術開発が必要です。さらには安定電力供給を踏まえたスマートグリッドへと進化させていかねばなりません。しかし、世界における日本の太陽光発電市場規模は8%程度である一方、世界的にはメガソーラーによる発電コスト競争が行われており、技術開発だけに頼らずにバリューチェーン全体で必要コストを実現するという取り組みが行われています。この動向からも、今後は日本国内市場だけを見た過剰な技術開発競争から世界市場で戦えるバリューチェーンの最適化を目指したビジネスモデルへのチェンジが必要だと考えています。

3.グリーン社会を目指すシャープの戦略

現在、シャープは企業ビジョンとして「エコポジティブ カンパニー」を掲げています。その取り組みを具現化したものが、大阪府・堺市に設立した「グリーンフロント堺」です。液晶パネル工場とその関連企業、および、薄膜太陽電池工場を集積した形で建設し、総合エネルギー管理センターによるエネルギー、ユーティリティの集中管理、棟間搬送システムによるトラック削減、大規模ソーラー発電、LED照明全面採用などの取り組みによって、従来の分散型工場と比べてCO2原単位排出量の35%削減が可能となります。シャープは、これらの技術を社会に普及させるとともに、DCエコハウス、スマートメーターなどとを含めたシステムへと発展させ、より低炭素社会に向けた社会貢献ができればと考えています。

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三村 申吾 三村  申吾 (青森県知事)
「低炭素社会実現に向けた地域の取り組み」

青森県は2020年までに1990年比25%の温室効果ガス削減を目指しています。そのために行政は計画を具体化するための戦略を作っています。青森県では、「青森低炭素社会づくり戦略」や「青森県エネルギー産業振興戦略」を策定し、各分野における温室効果ガス削減や各地域におけるエネルギー産業振興の具体的な方策を示しています。次に具体的な各取り組みを紹介します。

1.青森県太陽エネルギー活用推進アクションプラン

県内で太陽光発電や太陽熱利用の普及拡大を目指しています。青森県の太平洋側は晴れていることが多く、太陽光の発電電力も多い地域です。八戸ではメガソーラー(1500kW)の計画があり、これは500世帯分の電力需要を賄える容量です。

2.青森県地中熱利用推進ビジョン

青森県は温泉が多く、地中熱資源が多い地域です。この資源を活用して、低炭素社会を実現していくことを考えています。青森県では除雪が大変であり、普段は石油を使って融雪を行っている例が多く、これが県内のCO2排出量増加に影響しています。融雪等に温泉などの低温熱水を利用して、エネルギー利用することも検討しており、実証して示していく予定です。

3.蓄電池併設型ウィンドファーム、風力発電事業のモデル構築

県内の風車の設置基数は約200基あり、導入量は全国第1位です。ただし、風力の電力は変動が多く制御が困難です。そういった状況の中で、蓄電池併設型のウィンドファームを建設しました。この風車からの電力が東京の丸の内のビルに供給されています。
実際に実証を進めるなかで効率のよいシステムを作ることができたものと思われますが、最も作りやすい分散型電源は蓄電池併設型風力であり、これが世界で貢献できるシステムであると考えています。

4.EV・PHV導入による低炭素地域モデル構築事業、青森県EV・PHVタウン提案

CO2削減効果の高いEV・PHVを世界に先駆けて普及促進し、低炭素社会の実現に貢献したいと思います。気象条件の厳しい青森でこの先進技術の実証が行われれば、世界に通用すると考えています。

5.青い森セントラルパーク低炭素型モデルタウン構想

青森市内の中央部に旧国鉄の跡地があり、青森県が所有しています。この地域を対象に低炭素型モデルタウン構想の検討をしています。具体的には、弘前大学をはじめ、現在50数社と連携して進めていく予定です。ここで研究開発をしていき、我々日本はグリーンエネルギーの分野で蓄積した技術を「青森モデル」として広く世界に発信していきたいと思います。

以上、本県の「低炭素社会」への取り組みをご紹介してきました。

私達は、一人ひとりが考え行動し、日本の新しいあり方を世界に提案することで、世界から尊敬され、世界の安全保障や平和な社会が訪れることを目指していきます。こうして青森県は持続可能な社会を目指し、地球規模な温暖化対策に貢献していくつもりです。

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第3部 パネルディスカッション-低炭素社会実現のために必要な行動とは-
  発言者
(敬称略)
発言内容 
山田 山田

(パネリストの紹介)

相澤益男氏は、東京工業大学の学長を歴任した後、現在は内閣府の総合科学技術会議の議員として活躍されている。

伊藤智明氏は、昭和シェル石油の環境安全・研究開発・研究所担当の執行役員を経て、現在はソーラーフロンティア株式会社で調達・物流担当の執行役員をされている。

濱野稔重氏は、シャープ株式会社の副社長として海外事業、経営企画、ソーラーシステム部門を統括されている。

三村申吾氏は、新潮社での勤務、衆議院議員を歴任された後、2003年から青森県の知事をされている。

松橋隆治氏は、東京大学大学院新領域創成科学研究科の教授であり、エネルギーシステムと気候変動の対策を専門とされている。現在は、兼任で低炭素社会戦略センター(以下、LCS)の研究統括をされている。

パネルディスカッションでは、低炭素社会実現のために必要な行動について議論する。各パネリストから5分程度でプレゼンをお願いしたい。

パネリストからの発表 
相澤 相澤   国家戦略として推進するグリーン・イノベーションの狙いについて説明する。

現在日本が直面している3つの課題、つまり、国際競争力の欠落、地球温暖化、高齢化社会に対して、科学技術により解決策を見出していく必要がある。2009年12月30日に閣議決定された新成長戦略基本方針において、「グリーン・イノベーション」と「ライフ・イノベーション」の2つのイノベーションを推進していくことが記載されている。さらに、これらイノベーションを支えるプラットフォームとして、「科学技術」と「雇用・人材」が位置づけられている。

これらの新成長戦略基本方針の基、数年間の具体的な行動計画となるものが、現在策定中の次期科学技術基本計画である。

すでに、来年度の科学技術関係予算の予算編成プロセスが開始されている。現在、2つのイノベーションについてのアクションプランを総合科学技術会議が各府省と連携して作成している。これは質の高い予算編成へのチャレンジである。

総合科学技術会議では、「課題解決型の科学技術」を目指している。グリーン・イノベーションについても、技術主導による戦略策定ではなく、課題解決を起点として知恵を集約し、社会システムの改革を伴ってイノベーションを推進していく。

伊藤 伊藤   昭和シェル石油は、太陽光発電の研究開発およびビジネス展開を30年以上行っており、2007年に生産開始した最先端のCIS系薄膜系太陽電池については、現在、第3の工場として宮崎に1GW級の薄膜系太陽電池プラントを建設中である。これは1つの工場としては世界最大規模である。太陽光発電設備の需要は世界中で旺盛であるが、各国政府からの補助金制度も大きな役割を果たしている。(太陽光発電の普及予測曲線でスペインの設置台数が急減速しているのを示して)

一例として、スペインの事例を挙げておく。一旦大きな補助金制度を適用しておいて、突然普及政策を打ち切ると、途端に大きな需要減につながる。かつて日本でも同じような事象があったが、補助金のあり方については、財政面も考慮した緩やかな変更を伴う政策実現をお願いしたい。

一方、石油については運輸部門での将来シナリオを描いている。、石油の代替の観点からみると、2025年まで燃費効率向上によって化石燃料の使用量が低減していき、2025年以降は電気自動車や水素自動車のように化石燃料から代替エネルギーへの転換が起こるというものだ。このようなシナリオのもと、ますます低減していく化石燃料の需要にどう対応していくのかを考えている。

たとえば、将来のガソリンスタンド像については以下のようなことを理想像として描いている。それは、現在の化石燃料由来のガソリン、灯油、軽油に加え、バイオ燃料、水素、電気、など今後普及するであろうすべての燃料を供給し、さらに、ソーラーパネル、燃料電池などを設置して事業所としてもエネルギーを生成するエネルギーのコンビニのような存在になる必要があると考えている。しかしながら、現在の日本の法規制ではこのようなガソリンスタンドは設置できない現状がある。米国では実現できていることを考慮すると、是非とも日本においても規制緩和を進めていただきたい。

昭和シェル石油は、総合エネルギー会社として、スマートコミュニティについても、社会システム全体として何をすれば低炭素社会の実現に貢献できるのかを、産官学連携で検討を行っている。

濱野 濱野

先ほどの講演において、ソーラーパネルの導入、家電の省エネ、LEDへの転換で8.1%のCO2削減が実現可能であると述べた。これらの施策についてシャープが描くシナリオを説明する。

エレクトロニクス業界は規模の大きな市場で、世界中の企業が参入してくるため、非常に競争が激しいという特徴がある。シャープの液晶テレビ(30型相当)を例にとると、2002年から8年間で7分の1に価格が下落している。現在ソーラーパネルについてもこの価格競争のフェーズに入ってきていると考えている。パネル価格は、2009年時点で61万円/kWだが、ここ数年のうちでグリッドパリティレベルの30万円/kW程度まで価格が下がると確信している。そのためには、メーカーとして大変な努力と覚悟が必要だ。

次に、家電の省エネについて説明する。10年前のシャープの各家電製品と比較すると、エアコンでは20%、冷蔵庫では75%、カラーテレビで77%、平均で54%の消費電力削減を実現している。この3品目で家庭の消費電力の50%を構成するので、3品目について最新機器を導入するだけで家庭全体で約25%の省エネが実現する。一般的に、家電の寿命は10年~12年と言われているので、今後10年間で全家電が置き換わると仮定すると、家庭における25%のCO2削減が可能であると考えている。これら3品目以外にLEDへの転換等も含めると、25%以上の削減も十分実現可能である。

三村 三村

温暖化問題に関心を持ったきっかけは、ラブロックという世界的な環境学者との対談である。それ以降、地球温暖化という世界的な問題の中で、我々のできることを1つ1つやっていこうという信念を持っている。住民に対して身近な生活レベルでの危機を訴えうることで、地球温暖化に対する意識付けが出来ればと考えている。

青森県では、セントラルパークで低炭素型モデルタウンを計画している。セントラルパークでは、小宮山LCSセンター長の助言のもと、54の民間企業が叡智を結集してプランニングを行っている。青森県ではその他にも様々な取組を行ってきたが、一番重要なのは住民の暮らしの中で地球環境に一人一人が貢献できるような仕組みづくりだと考えている。

青森県は低炭素モデル地区になると同時に、若者が住みたいと思えるような魅力的なまちづくりも目指している。そのために人と人とが触れ合うコミュニティづくりが重要である。雪国特有の積雪に関するトラブルを住民が協力して解決していくことで、これを実現できると考えている。

日本における1400兆円の個人資産を活用して、各人が少しずつ温暖化に寄付できるような仕組みを作ることで、住民を巻き込んだ温暖化対策を実施していければと考えている。このような青森のチャレンジを温かく見守ってほしい。

松橋 松橋

LCSは、「科学の論理に基づいて低炭素社会を実現していこう」という長期的なビジョンをもっている。ここでは、中期的な目標について説明する。

日本では2020年に温室効果ガス25%削減という目標を掲げている。この目標に向けて温暖化対策を推進していく中で、国民の生活にどのような影響が生じるかを応用一般均衡モデルを利用して分析している。応用一般均衡モデルでは、所得を18階層に分けて分析している。省エネ機器への買い換えなどは中・高所得層が中心になるので、所得階層ごとの分析が重要になる。

このモデルに様々な政策を盛り込んで分析をしている。政策に後押しされた家庭の消費行動が経済へ波及していく過程を分析することが可能となっている。

分析の一例を示す。家電や自動車の効率向上が無かった場合、全所得階層で所得が減少してしまうのに対して、家電や自動車の効率向上を想定した場合では、所得が増加するという結果が出ている。これは低炭素に向けた取組が経済にとってもプラス(約8兆8000億円の社会厚生の増加)になるということを示している。

省エネ、新エネ投資の多くはライフサイクルでみるとコストは低減する。家計でのコストが低減されれば、可処分所得が増加し、国全体としても経済効果として表れてくる。このように、国民の生活が豊かになる中で、CO2排出削減が実現可能なのである。

他の分析例として、PVの技術革新について説明する。PVの技術革新を想定すると、技術革新がない場合に比べて6000億円程度の社会厚生の増加があることが分析結果から得られている。これは、科学技術によってグリーン・イノベーションを推進していくことで、経済的にも効果があることを示している。

次に経済施策についての分析例を説明する。炭素税の導入により削減を促進する場合と、排出権取引で削減量の不足を補てんした場合を比較すると、後者の方が4兆円ほど社会厚生が多い結果が出ている。これは炭素税導入という政策が悪い結果をもたらすことを示しているが、政策を否定している訳では決してない。政策を通じて国民の家計にどのように還元していくかを細かく議論していくことが必要である、というメッセージとして捉えていただきたい。

最後に我々の分析結果から低炭素社会に向けた3つのメッセージを示す。1つ目が、現存の省エネ・新エネ技術を加速普及する必要があることだ。2つ目が、新しい技術開発を進める必要があること。3つ目は、経済・国民への影響を詳細に分析し、議論を重ねて制度設計をしていくことが重要であることだ。

議題中心のディスカッション
パネル1パネル2パネル3パネル4パネル5 山田

国で科学技術についてどう考えており、課題をどうやって解決することを考えているのかを相澤さんからお話しいただいたが、一方、メーカー等ではどのようにグリーン・イノベーションを進めるための課題を解決したらよいのか、低炭素社会にどう結びつけるのかお話頂きたい。

濱野

成長戦略には、二面的なものがある。技術革新は長期的視点で進めることが重要である。企業単独でやるのは大変なので、産官学の長期の視点で行う必要がある。また、技術革新を成長戦略につなげるには、ボリュームを上げていく視点が大事である。海外では日本の10倍の規模のメガソーラー事業が行われており、技術革新とボリュームを作っていくことにコミットしていく姿勢がみられる。また、需要創造と共にインセンティブや投資減税策を打ち出し、工場の誘致を進めている。現地で生産し、現地で販売することでコスト力も増すことになる。成功事例はドイツであり、イタリアもやろうとしている。シャープもイタリアで現地企業と協業をやっていこうとしているが政府のバックアップを頂いている。成長戦略を描くためには工場誘致政策等の対応が日本政府でも必要であると考えている。

山田  新しい社会をつくっていくためには、税制などは確かに大事であるが、科学技術としてこういうところを伸ばしていきたいというところはあるのか。
濱野   明日なくして将来はないので、長期的な成長を目指しながらも明日のことに取り組み、短期的な戦いに勝っていかなければならない。短期計画の中である程度のロードマップは描いているが、変換効率40-50%を目指すとなると大きなリスクを伴う。メーカーだけの見通しとして革新的な目標を目指していくのは厳しいので、長期の視点に立った政策でボリュームを担保することが必要だと思う。
三村

要素技術の開発だけではなく、技術の普及によって産業がうまれる。青森県の事例のように54社が同時に1つの事業に集中している場合は、国が実施者を選ぶくらいの動きが必要ではないかと考えている。普及、実証へ持っていくやり方を考える必要があると思う。実証研究に国が思い切って勝負をしていって欲しい。 

相澤

三村知事の発言は説得力がある。国の施策を先導していく立場として、いろんな意味での壁がある。府省、国・自治体・企業等のいろんな集まりが壁を持っている。この壁を乗り越え1つの目標に向かって、力を結集して課題解決に力を向けないといけない。今まで、みんな自分の研究に自信をもってやっているが、その取り組みが結集されていないために全体の解決に向かわない。

今まで日本にはイノベーション政策というのがしっかりと位置づけられていなかった。新成長戦略では、科学・技術政策とイノベーション政策を一体化したものとなっている。来年度の予算編成に向けて、こういうところをこう直せというご指摘があれば、そういうところを直していくチャンスであると思う。

伊藤

国内で自治体と事業をするのに、手続きが煩雑である。実際に明日にでもすぐできる実証試験が手続きだけで1年かかる場合もある。昔に比べれば早くなっているが縦割り行政の障害である。国際協力をする場合にも、各国の法律の違いや税制上の食い違いなどからプロジェクトそのものが潰れることもあり、大きな機会喪失につながる。政策面での改善をすぐにでも実現して欲しい。

相澤

規制が障害になっているところに関しては、今取り組んでいるところである。ポジティブ規制というのもある。抑制・制限というのが今までの規制だった。しかし、規制をかけることによって、ある方向に向けていくためのポジティブ規制というのを巧みに使ったのがドイツ等の海外の事例にもある。

三村

石原知事が行った規制のおかげで、地方からの電力売買ができるようになった。東京のように先駆けた取り組みを行っている地域と手を組んでいくことも今後考えていってもいいのではないか。

山田   攻めの話に重点が置かれて大変よいことであるが、実際の自治体の状況はどうか。
三村   早い時期に早く手を打っている自治体であれば、いろんなことができる。青森県はいろんな特区を持っている。
山田

県の職員もオープンマインドになっているのか。

三村

職員からも後押しされている。また、日本には1400兆円ものたんす貯金があり、これをどう生かしていくのか。また、日本の金融機関も資金を持っているが、その投資先が海外に向けて行われ、しかも負けていることが多い。日本のグリーンの部分に金融をまわして欲しい。

山田

大学として、科学技術の政策をどう考えたらよいか。

松橋

LCSでは科学技術の構造化を進めている。エネルギーの場合、技術だけを新しくすればよいのではなく、システム変化に関連する異なるステークホルダー間の合意形成が重要であるが、これが難しい。スウェーデンではバイオガスの自動車をみてきた。行政はバイオガスには税制優遇をしていた。エネルギー供給者、行政、メーカーが協力して合意して進めることが必要である。その合意形成ができたときに社会のイノベーションというのが起こる。すみやかに合意を取るという仕組みが必要である。

濱野

ボリュームというのが先ほどの話につながる。海外だと、フランス、ドイツ、イギリスも電力会社は1社である。そういうところの合意形成はやりやすい。日本で100MWプラントを検討するというのが一つのトリガーになるのでは。

山田  グリーンイノベーションに結びつけるには何が必要だと考えているか。
相澤

青森県のモデル都市の構想には関心を持っている。現状では、いろんな科学技術の施策はあるがバラバラである。これをモデル都市に集中して実証させていき、最大限の効果を得るようなことができるのではないか。各自治体がやっていることに国がコミットすることを進められるとよいのではないか。国がモデル都市というラベルだけを貼って、あとは勝手にやれと言っているだけではなく、もと積極的に個別施策を集約してやってもいいと考えている。

山田

青森のモデル都市では本当に生活の向上等に役に立っているのか。

三村

低炭素社会を作るのに、住民のコンセンサスを得ることが重要であると感じている。これまでは、先ほどの講演で示したように、いろんな技術をバラバラに実証してきた。具体的に、人が住んで、低炭素まちづくり第一世代で何が問題かを広く示したい。この実証が、低炭素型ライフスタイルのコンセンサスを得ることにつながり、社会に広まっていくと考える。若い世代からお年寄りまで、新しいモデルシステムを作って過ごしやすくなれば、自分のお金で住んでくれることが好ましいが、コンセンサスが得られなければ継続的に進めることができない。

最初の金をどう出すのか、ファンドにするぐらいの国でなければならない。政府がグリーンファンドをやるくらいの施策をやる必要があると思う。前をみんなで向いていけるような実証を進めていく必要がある。政治がリードしていく必要がある。

山田

エネルギー会社としての将来展望はどうなっているのか。

伊藤

METIの次世代社会システムについて、自治体と話をしていても、その地域のくらしぶりや低炭素の取り組みに対してどう考えているのかがよくわからない。そこに住まれている方々が新しいエネルギーシステムについてどのように感じているかが重要である。電気自動車の実証にも参画しているが、1回の充電で100km以上も走るにもかかわらず実際には最後の充電設備から20km程度に走行範囲がとどまる。逆にいえば20km毎に充電ステーションがないとなかなか郊外への走行距離の延びが期待できない。こういったことは、実際にやってみないとわからないし、まして住民感情は実際に話をしてみないとわからない。そのようなところから勉強を始めている。住民の意識によってインフラ整備の在り方も変わってくる。住民の方との意思疎通が重要である。

山田

一人2分ずつぐらい今後の決意等をお話頂きたい。

松橋

LCSでは、2020年と2050年を見据えて、省エネ家電、技術の普及にどういうバリアがあるのか研究をしていきたい。技術の普及に必要なファイナンスの仕組みを考慮した有効な施策やスマートグリッド等の研究も進めていきたい。

三村

現場の方々のコンセンサスがとれるかどうかが重要である。実証から実際に住むように現場と話をしながら進めていきたい。

濱野

メーカーとして何ができるかを考えながら進めていきたい。コスト面の目標に対するロードマップは作成している。しかし実現するためには一定の市場規模が必要であり、安定した中長期の政策が必要である。そうでなければ海外に出て行かざるを得なくなる。

伊藤

太陽電池事業の推進とともに、総合エネルギー会社へ脱皮する道筋を明確にしていきたい。既存の石油系燃料はこのまま供給する必要があるが、バイオ、水素、電力を含めた供給のインフラ作りが重要であると考える。住民、自治体との対話も重要なファクターと認識している。

相澤   今日、この会議に出席して非常に明るい気持ちになった。毎日、国の予算をどう切り詰めるかを考えていた。人類の持続性を得るためには何かをしなければならないという気持ちはあると思っている。グリーン・イノベーションでは、これから描く施策の戦略とともに投資が必要である。さまざまな意見もあると思うが、希望が持てる投資かどうかを考え、施策を継続し、成長することができると信じることが必要。個人負担が増えるのはこれまでの施策。みんなが、それぞれの立場で信じ込んで新しい取り組みを行っていくことで明るい未来がみえるのではないか。
山田

太陽電池の例を取り上げると、単一の製品だけの市場規模は10兆円もいかない。国全体で明るい社会ができて、経済的に豊かになるにはどうしたらよいのか。青森県のような実証試験を事例に、我々も科学的な論理性をもって実際に対策の有効性を示し、それに国民の皆様が賛同して、一緒に取り組めるようなものをLCSとしても出していきたいと考えている。10年後、20年後に明るい社会になるんだというところを、確信をもってもらえるように、そして皆様からの協力もしていただけるようにLCSの取り組みを進めていきたいと考えている。

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