低炭素社会戦略センター

教員養成・研修に求められる低炭素教育リテラシー

低炭素社会戦略センター (LCS) 特任研究員  寺木 秀一

2011年7月25日 教育新聞掲載

教員の多くは、教員養成時に低炭素教育の基盤となるエネルギー・環境教育やその指導方法論等を学ぶ機会を、多くは持ちませんでした。そのため、今日の複雑で多様化する地球規模の環境問題の現状・原因を捉えて、低炭素教育を推進することは困難です。まして、3.11以降の日本のエネルギー問題を解決するため、学校教育に求められる課題に応えるのはより困難なことでしょう。
 教員養成課程でのエネルギー・環境教育の履修はもとより、教職大学院や教員免許更新時においても、環境教育関連の履修コースを増強して必修科目にするべきという意見は多くあります(日本学術会議 環境学委員会 環境思想・環境教育分科会2008年8月28日 )。また、環境省も、教員養成課程での環境教育履修を義務化すべきという立場をとっています。
 大学の教員養成課程では、教職課程の枠を超えて、エネルギー・環境リテラシー及びその教育の科目を開設し、将来的には必須科目にすることが求められています。

その一方で、現職教員の低炭素教育リテラシーは、研究団体での研修という形で行われることが多いのが現状です。その事例のいくつかを以下に示します。

全国小中学校環境教育研究会は、1964年より小中学校の環境教育をテーマとして教師の実践研究をすすめています。近年では、テーマを「豊かな人間性を育てる環境教育」として、環境教育がつくり出す低炭素社会を追究しています。23年度は、東日本大震災の被災地である気仙沼市の教育長の強い要請を受けて、同市の大谷小学校で全国大会が11月25日に開催されます。そこでは全国の学校から、教員の研修と実践の成果が寄せられ、活発な議論が交わされることになるでしょう。

同会が毎年実施しているエネルギー教育の現地研修会では、首都圏にある火力発電所を見学しています。ここではLNGを燃料としたコンバインドサイクルを使っています。ガスタービンで発電し、さらに排ガスで高温の蒸気を発生させて蒸気タービンに送り、蒸気タービンでも発電を行います。このシステムは、発生する電力あたりのCO2排出量が少なく、熱効率の高い発電方式で、研修参加者はエネルギーの有効利用について学ぶことができます。なお筆者は、今日の即応性を要する状況では、この発電方式は現実的な選択だと考えています。

日本エネルギー環境教育学会はその設立趣旨(2005年)の中で、以下の3つを掲げています。

  • 持続可能な社会の構築に向け、日常生活や産業活動の基盤となるエネルギーの開発・利用・供給と環境保全の在り方について、総合的な観点から考える。
  • 次の時代を担う青少年層が、エネルギー・環境に関する問題や課題を自分自身の問題や課題として考え、将来において適切な意思決定と行動をするための素地を養う。
  • 科学的思考力、社会的思考力、日常生活の中での実践力、総合的な判断力に基づいた意思決定能力や問題解決能力等の育成を目指すエネルギー・環境に関する教育に関する研究。

全国大会の論文集からは、近年の地球環境問題に対する危機意識の高まりや発展途上国の急激なエネルギー需要増加に伴う国際石油需給の逼迫化等を背景に、教師及び教師教育を進める大学教員等のエネルギー・環境教育への関心の高さを感じられます。
 たとえば、多彩なゲストティーチャーを招いて学習し、その成果を学校内外に発信した「家庭・地域と連携したエネルギー・環境教育の実践(小学校)」や、エネルギー・地球温暖化問題における原子力の役割、原子力エネルギーの安全と安心等について述べた「原子力の教え方?先生の疑問・質問に答え、意見交換をする(小・中・高) 」という論文があります。また、実験校の特設教科で、エネルギーと社会・環境の関わりについて基礎的な知識の習得と現状を認識し、生徒が自ら判断する態度を養う「スマートグリッド生活の関わりを考える科学技術科の実践(中)」などの事例も紹介されています。また23年度には、「原子力エネルギーにたよらない社会に対する児童の意識」の調査や、「未来に展望が開けるエネルギー・環境教育をめざして」など、今日の課題に対応したものが多く掲載されています。
 しかし、社会全体を低炭素の視点で捉えることは複雑なため、2011年7月実施の段階では、「低炭素社会」や「低炭素教育」というキーワードを持つ論文は見当たらず、低炭素教育へのリテラシーの低さが表れています。

この記事は教育新聞に掲載されました。