低炭素社会戦略センター

地域と学校が連携して進める低炭素教育

低炭素社会戦略センター (LCS) 特任研究員  寺木 秀一

2011年6月20日 教育新聞掲載

日本は2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減するという中期目標を掲げて、その達成に向けた具体的取り組みを進めてきました。さらに2011年5月26日の主要国(G8)首脳会議では、福島第一原子力発電所の事故を背景として、2020年代の早い時期までに、再生可能エネルギーで発電量の20%以上を賄う考えを強調しました。しかし、現在の日本は水力発電を除く再生可能エネルギーの発電比率が1%程度と低いのが現状です。東日本大震災による電力供給不足を始めとするエネルギー問題は、低炭素社会の実現という課題を地域、家庭、学校が連携して取り込む良い機会となるでしょう。

今夏の電力事情は、最大需要見込み6000万kWに対し、供給見込みは5380万kWと言われており(2011年5月13日現在)、企業や官公庁をはじめ学校や家庭でも、節電に取り組むことが強くもとめられています。

この電力不足に対応するため、低炭素社会戦略センター (LCS)は東京電力管内の複数の自治体と協力し、停電防止システムの構築を目指した社会実験に取り組んでいます。電力供給不足が懸念される場合に地域の緊急ネットワーク連絡網で保護者(家庭)に節電を呼び掛けるもので、各家庭は取り組んだ節電対策を記録すると共に、予めエアコンやテレビなどの家電製品に取り付けた電力量表示器で使用電力量(kWh)を計測します。実験の結果を検証した後は、夏の電力不足解消のために都区や周辺の自治体と共同して家庭でのピークカットの取り組みを開始します。

その計測データを学校の授業でも展開できれば、有効な低炭素教育になります。小学校学習指導要領(社会科、3学年及び4学年)でも、「地域の人々による飲料水,電気,ガスの使われ方や使用量などを取り上げ,人々の生活や産業に欠かすことのできない飲料水,電気,ガスがいつでも使えるように必要な量が確保されていることを具体的に調べる」とあります。

低炭素教育とは、学校教育とその影響の派生する家庭から低炭素社会を実現するための取り組みです。科学技術の知識を活用して生活の視点から社会の諸課題を解決することを、学校教育の場で具体化することを目指します。
 児童生徒には、低炭素教育を通じて、日々の生活に楽しさと明るさをもたらす科学技術の役割を教えます。また、生きる力を身に付けるために将来やりたいことを選択し、そのために必要な知恵・知識を獲得し、目標を定めて道を切り開く力を身に付けられるようにします。さらに日常生活での小さな成功体験を積み重ねることで、自己を肯定的に受け入れ、将来の夢を持てるようにします。このことは学習指導要領の改訂趣旨である「生きる力」を培うことに繋がります。

環境教育、消費者教育、安全教育などの「○○教育」といわれる教育は、通常は時間割りに示されることはなく、既定の時間が確保されるわけではありません。そこで学校では、学習指導要領に示された各教科等の目標及び内容の達成を図りながら、子ども達の発達段階と学習への関心意欲に応じた低炭素教育を展開することが求められます。また、低炭素教育を推進するには、教科横断的な学習をはじめ、社会、理科(技術)、家庭科を中心とした教材の作成、指導課程の開発が必要です。たとえば、ESD(持続可能な開発のための教育)として先進的に進められている実践事例から、低炭素教育の要素を抽出・体系化して、価値づけをすることや、あらたに今日のエネルギー問題の解決に対応した目標と内容の開発を行うなどは喫緊の課題となります。

この記事は教育新聞に掲載されました。