低炭素社会戦略センター

センター長挨拶

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小宮山センター長からの最近のメッセージ

センター長  小宮山 宏
低炭素社会戦略センター長
小宮山 宏

~「2050年の『明るく豊かな低炭素社会』実現のための課題と展望」(社会シナリオ第3版、平成28年12月13日公表)巻頭言より~

低炭素社会実現のための課題と展望

 低炭素社会戦略センター(LCS)の目標は、「明るい豊かな低炭素社会」を実現する戦略をつくることです。現在ある技術、あるいは、それを合理的に発展させた技術で「家庭のエネルギー需要」は約4分の1に減らすことが可能であると考えています。今後、2050年に向けて電気料金は多少変動するかもしれませんが、エネルギーにかかるコストは減少する傾向にあると考えています。このことが、個人にとっての「明るく豊かな低炭素社会」の具体的なイメージとなります。
 その際、適切な技術開発は併せて必要になります。技術開発には「低炭素社会のシナリオ」に沿った、あるいは、その少し先を見据えた「チャレンジングな技術開発」も含まれます。一方、そうした将来像に対するバックキャスティングとなる技術開発を進めると同時に、技術開発を後押しする社会制度もつくる必要性があります。
 現在、日本のエネルギーは約6割が民生で消費されており、工場での消費は約4割になりました。このことは、工場では今後もエネルギー効率は向上すると期待されますが、それ以上に民生部門に膨大な効率向上のポテンシャルがあることを意味しています。このポテンシャルを顕在化させるには、技術革新と制度、社会の革新(法律、条例、認可のスピード等)が必要になります。それらがイノベーションを活性化し、ポテンシャルを顕在化するというシナリオになります。

 ここ10年ほど、日本をはじめアメリカ等先進国のエネルギー消費は既に減り始めています。日本では、1973年の第一次エネルギー危機を契機に、エネルギー効率の改善がスタートしました。それまでは、GDPの伸びとエネルギーの伸びとは1対1でした。つまり、日本の産業の中心は重化学工業で、GDPを倍にするためには、エネルギーも倍使うという時代が続いてきました。ここに、省エネが始まったのです。エネルギー危機でエネルギー価格が10倍、20倍と跳ね上がったことで、日本は国を挙げて省エネに取り組んできました。すなわち、工業と省エネの時代です。このときのGDPは200兆円です。200兆円から330兆円までGDPを増やす間、日本はエネルギー消費を増やしませんでした。日本は、エネルギーと経済のデカップリングを、世界で初めて明確に実現した国なのです。
 人工物は飽和してきており、今あるものを一旦壊してから新しく作る時代になりました。GDPは増えていきますが、エネルギーは減り始めていく時代です。国連のデータによると、日本のみならず世界の出生数はピークアウトしました。今後もしばらく人口は増大しますが、この人口の増大は寿命の延びによるものです。人口が飽和し、それに対して人工物も飽和し、エネルギー効率が向上して、エネルギー消費は減ります。

 ここでは、CO2を発生しないエネルギー源である再生可能エネルギーが、考え方の基本になります。少し前までは、再生可能エネルギーはコストが高いと言われてきましたが、今は既に十数円/kWhにまで安くなっています。LCSでは、資源から最終製品までのプロセス・システムを設計した上で、太陽電池、風力発電、バイオマスなどのコスト評価を行っています。
 例えば、プロセスの途中の効率が上がれば、最終製品がいくら安くなるかということを、常に評価しています。日本ではガスによる発電が最も多く、資源エネルギー庁によるコストは13.7円/kWhです。対して、現在の太陽電池と風力発電のコストは、両者とも16円/kWhです。つまり、再生可能エネルギーは高くて駄目だという時代は、既に終わっているのです。地熱による発電コストは12円/kWhですから、ガス発電より安い状況となっています。したがって、我々は、2030年までに再生可能エネルギーが最も安い時代がくると確信しています。これらが、「明るい低炭素社会」を実現できる根拠となります。
 COP21に向けた2015年11月10日に、IEAが2040年までの世界エネルギー見通しを発表しました。世界における電力供給の構成は、2014年は石炭火力発電の比率が最も高く、第2位は再生可能エネルギー、次にガス火力、原子力発電と続きます。2040年の予測では、今後は電力に対する投資の60%は再生可能エネルギーになるというのが、IEAの中間シナリオです。2040年には再生可能エネルギーは、石炭火力を抜いて最大のエネルギー源になることを、IEAも指摘しています。

 では、日本は今後、どうすべきでしょうか。明るい低炭素社会のために、エネルギー効率を上げて、エネルギー消費を減らし、再生可能エネルギーを増やす。そうすることで、日本のように人口密度が高く、面積が狭い国でも、再生可能エネルギーでエネルギー自給国家がつくれるという、世界のモデル、特にアジアのモデルになるのです。
 地球温暖化の防止は、依然として人類共通の課題です。2015年末のCOP21(パリ)に先立ち、我が国は2030年に26%の温室効果ガス排出削減目標とした約束草案を提出しました。また、我が国の「地球温暖化対策計画」(2016年5月13日閣議決定)では、2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことにしています。COP21でのパリ協定の採択、及び2016年11月の発効等を踏まえて、低炭素社会実現のための社会シナリオ・戦略の提案、将来に向けた低炭素社会像の選択肢の提示の重要性は、一層高まっています。
 LCSは、明るい低炭素社会実現のための社会シナリオ研究を推進し、社会シナリオ・戦略の提案、2050年までに我が国の温室効果ガス排出量の80%削減という目標に向けた2030-2050年の選択肢を提示するとともに、再生可能エネルギーと省エネルギーに対するビジョンの明確化、我が国における再生可能エネルギーが大量に導入された社会へのトランジション・マネジメント(移行期間のマネジメント)等の課題に取り組んでいきます。

低炭素社会戦略センター長 (小宮山 宏) の挨拶

低炭素社会戦略センター (LCS) は、持続可能で活力のある低炭素社会を構築するため、豊かな生活と両立しうる社会の姿を広く提示して、それを実現することを目的としています。

日本は温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減するとの中期目標を掲げて、その達成に向けた具体的取り組みを進めています。これは日本にとって、科学技術と経済と社会を発展させ、国際的な影響力を高める大きなチャンスです。

日本は資源に乏しく狭い国土にもかかわらず、産業が発達し、多くの人々が高度な生活をしています。その上で、日本のものづくりは環境に配慮した非常に高いエネルギー効率を誇っています。このような状況は、エネルギー消費の削減や汚染した環境の改善など、解決すべき課題を設定しそれを解決してきた成果によるものです。すなわち、日本は抱えた課題を解決する力を十分に備えている国であることが分かります。

21世紀に入り、「有限の地球」、「社会の高齢化」、「知識の爆発」という新たなパラダイムへシフトした現在、これらに沿った新しい産業の創出は、社会にイノベーションを起こし閉塞した経済を活性化する大きな可能性を持っています。日本は、先進的に世界の課題を先取りしている「課題先進国」であり、一番成長するアジアにいるという意味で地政学的にも絶好の位置にいます。今後も人類が経験したことのない課題を解決し続けていけば、日本は世界のモデルを作ることができるのです。

日本のエネルギー消費は「エネルギー変換」、「ものづくり」、「日々のくらし」の3つに分類できます。従来、日本の政策はエネルギー消費を「ものづくり」において削減させようとしてきましたが、実は、「日々のくらし」にこそ、エネルギー消費を削減する大きなポテンシャルがあります。エコでバリアフリーで快適なまちづくりを推進すれば、「日々のくらし」におけるエネルギー消費を削減し、かつ、高齢社会への対応と新たな雇用創出も図ることができるのです。

生活の視点から社会の諸課題を解決し、低炭素社会の将来像を具体化するには、高度な科学技術が必要不可欠です。科学技術の知識を活用して、どのように低炭素社会実現に向けて諸課題を克服していくのか、構造化によって関係付けなければなりません。同時に、細分化された知識や行動をどのように構造化して活用し、低炭素社会を構築するのか、その道すじを示すシナリオを、科学技術の発展に即して策定することが重要です。

低炭素社会戦略センター (LCS) では、明るく豊かな低炭素社会の姿を描き、それを実現するための総合戦略とシナリオを策定します。科学技術と低炭素社会との関係付けを図るとともに、科学技術の発展をリアルタイムで反映できるシナリオを策定することに重点的に取り組み、低炭素社会づくりに貢献します。

平成23年4月