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本テーマの業務は平成27年4月1日より国立研究開発法人 日本医療研究開発機構に移管されました。
※記載内容は平成27年3月31日時点の情報に基づきます。

「ヒト生体イメージングを目指した革新的バイオフォトニクス技術の構築」

1.プログラムオフィサー

顔写真

 プログラムオフィサー(PO)

 高松 哲郎

 京都府立医科大学 大学院医学研究科
 教授
  専門分野
 心臓の機能病理学、顕微鏡による生体計測と加工




2.技術テーマの概要

ライフサイエンス分野における光を用いたイメージング技術の発達は著しい。それはカメラやレーザーに代表される光学系技術とGFPに代表される機能分子に特異的なプローブの作製技術とが両輪となって発達してきたことに支えられています。このように著しい発展を遂げてきた光イメージング技術は、現在、医療に応用されつつありますが、臨床に使えるプローブが少ないこと、組織深部の観察が難しいことなどの理由により、その技術を十分に活用できていません。しかし、医薬産業や医療・福祉産業などでは、生理学的・生化学的機能とその病態の検出のため、分子レベルから個体レベルまでの機能を非侵襲的にリアルタイムで計測する方法の確立が渇望されています。本技術テーマでは、組織の深部を観察するため、革新的な光テクノロジーを統合し、将来医療に応用できる基盤技術を構築することを目的とします。また、この制度の特徴である産業界と研究者との対話の場「産学共創の場」を活用することにより、産業界の基本的ニーズを共有し、世界をリードする基礎的な研究にも反映していきます。

本技術テーマが求める技術は、以下のようになります。

  • 生体内光伝播を正確に記述する数理モデルとシミュレーション技術
  • 拡散光・蛍光トモグラフィや光音響トモグラフィなどによるイメージング技術
  • 蛍光分子イメージングプローブの創製
  • プローブを用いない分子イメージング技術

3.POによる公募・選考・技術テーマ運営にあたっての方針

現在の医療現場においてCT、MRI、PETなどのイメージング機器の果たす役割は多大であり、必要不可欠なものです。しかし、これらの機器で用いられているイメージング技術は、リアルタイム性が低く、大掛かりな設備が必要となるなどの問題点を持ちます。一方、光を用いたイメージング技術は、分子を直接観察できる高い空間分解能と、ミリ秒のスピードで画像の取得が可能な高い時間分解能とを併せ持ち、かつ大掛かりな設備が不要なため、ベッドサイドで簡便に利用することが可能です。このような特徴をもつ光による生体分子イメージング技術を、癌や生活習慣病の超早期の診断・治療等に繋がる技術にするには、分子標的を探索・特定する分析技術、分子イメージングプローブの設計・合成の技術、プローブを画像化するイメージング技術、の3つの技術が必要となります。標的とする疾患と分子があり、その分子に対するプローブとそのプローブを画像化する技術が有機的に統合することによって、初めてこれまでの技術では不可能であった、癌や生活習慣病の超早期の診断・治療が可能になると考えます。

将来医療に応用できる光イメージング基盤技術の構築を目的とする本技術テーマで求めているのは次の二点です。一つは、光を使ったイメージングで組織の深部を観察できるようにすることです。光を使ったイメージングでは、CTやMRIのように身体の外側から内臓を見ることは困難です。ただし、消化管をはじめ、肺や膀胱など、癌ができるところは、内視鏡を用いることで身体の外側から観察することが可能です。このため、深達距離はさほど必要なく、数ミリメートルを超えることができれば、光で観察できる範囲は格段に広くなります。また、拡散光・蛍光トモグラフィや光音響トモグラフィなどによって深達距離の問題を克服することで、臓器レベルでの観察も期待できます。さらに、光だけで見るのではなく、現在使われている技術との相補的な組合せ、例えばCTや超音波との組合せなども考えられます。

二つ目は、革新的な蛍光プローブの開発です。医療に応用できるものなので、臨床で使えるプローブです。従って、ここでの蛍光プローブは、GFPなどの蛍光蛋白を用いたプローブではなく、分子特異的な低分子プローブを指します。この中には、今現在使われている蛍光プローブも含まれますが、光音響用のプローブなど、新たなイメージング技術へと繋がるプローブもあります。また、臨床で使えるプローブを作るには、複雑な工程と長い時間が必要ですが、これを回避する手段として、プローブを用いない分子イメージング技術の開発が挙げられます。例えば、ラマン散乱や第二高調波などの技術を用いるもの、内因性の蛍光を使ったものといった、外からプローブを加えることなく分子の動きを検出できるものなどが考えられます。

また、これらの基盤を支える要素技術として、非常に微弱な信号を検出するディテクターを作成すること、光を励起するためのレーザーなど、要素技術の開発についても、今後、重要性が増すものと考えられます(ただし、これら要素技術単独での応募は審査の対象となりません)。さらに、検出した非常に微弱な信号を眼に見える形にするためには、全体的なシステムインテグレーションや画像処理などを行う必要があり、医薬工が協同して取り組まなければなりません。本技術テーマのもと、他国に先んじて科学・技術的な跳躍を創出し、この分野における我が国の競争力強化を実現できれば、当該分野はもちろん、様々な産業の強化へ波及するものと考えられます。

以上のような観点から、上記課題の実現に資するような研究課題を「学」から公募します。対象とする研究は大学などによる基礎に根ざした研究でありますが、革新的要素技術につながる基盤技術の創出には、「学」の基礎研究力と「産」のニーズが十分に合致する必要があります。技術テーマ運営にあたっては「産学共創の場」を積極的に活用し、将来的に研究成果が産業界で活用できるよう、研究の遂行中に「産」と「学」との密接な意見交換を行いながら研究を推進します。応募にあたっては、癌や生活習慣病の超早期の診断・治療等に繋がる、光による生体分子イメージング技術を切り拓くための要素技術のブレークスルーが図れるような、斬新な提案が望まれます。皆様からの新規アイデアにあふれる提案をお待ちしています。

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用語の説明

4.研究課題

(五十音順)

◆平成23年度採択◆

  • 研究代表者:石原 美弥(防衛医科大学校医用工学 教授)
  • 研究課題名:機能性プローブに基づく生体深部光音響イメージング技術の確立:activatableプローブの開発研究とin vivo可視化イメージング技術の開発
  • 研究概要:
    機能性プローブを利用する光音響イメージング技術を構築し、臨床的に極めて意義のある深部(〜30mm)の数mm程度の微小がんの検出を目指します。具体的にはプローブシグナルのバックグラウンドからの分離性を向上させた光音響イメージング技術を開発し、activatable光音響プローブとして、がん部位を特徴づける酵素活性により光音響シグナルがONになる色素分子、および金ナノ粒子を合成するチーム研究として実施します。
研究成果


  • 研究代表者:大辻 英吾(京都府立医科大学 医学研究科 教授)
  • 研究課題名:5−アミノレブリン酸(5−ALA)とランタニドナノ粒子(LNP)併用による深部微小癌局在診断技術の構築
  • 研究概要:
    既存の診断技術では微小転移診断は困難です。5−アミノレブリン酸 (5−ALA)はがん細胞に蛍光物質プロトポルフィリンIX(PpIX)を蓄積します。この性質を用いた胃がんの術中表層微小転移診断(腹膜播種、肝転移)の有用性は確認できました。しかし、リンパ節転移や深層腹膜播種、肝転移の診断は困難でした。そこで、近赤外励起によりPpIXを励起することが可能なランタニドナノ粒子と5−ALAを併用することで深部の微小がん局在診断技術の開発を行います。
研究成果


  • 研究代表者:小川 美香子(浜松医科大学 メディカルフォトニクス研究センター 准教授)
  • 研究課題名:蛍光トモグラフィイメージングへの利用を目的とした、機能性ナノ粒子を用いた新規近赤外蛍光分子イメージングプローブの創製
  • 研究概要:
    本研究では、動脈硬化やがんなどの特異的検出を可能とする、近赤外蛍光分子イメージングプローブを開発します。近赤外蛍光を用いるため、トモグラフィイメージングへの応用が可能であり、放射性標識も施したマルチモダルプローブとすることで、トモグラフィイメージング実用化へ向けた検証も行います。
研究成果

  • 研究代表者:飛田 成史(群馬大学 大学院理工学府 教授)
  • 研究課題名:金属錯体を発光プローブとするヒトの低酸素病態イメージングプロジェクト
  • 研究概要:
    イリジウム錯体に代表される一部の金属錯体は、室温、脱酸素下で強いりん光を示します。りん光は蛍光に比べて発光寿命が長いため、酸素存在下で顕著な消光を受けます。この酸素消光現象を利用して、がんなどの低酸素組織をイメージングし、その酸素レベルを定量・画像化するための最適発光プローブの設計と合成、in vivoイメージング技術の開発を行い、将来、ヒトに応用できる低酸素病態イメージング技術の確立を目指します。
研究成果


  • 研究代表者:西村 吾朗(北海道大学 電子科学研究所 助教)
  • 研究課題名:ヒト組織深部のイメージングを可能とする定量的蛍光分子イメージング基盤技術の確立
  • 研究概要:
    蛍光を用いた吸収の3次元再構成のアルゴリズム(FA−DOT)を採用し、蛍光および励起光の時間応答波形から蛍光プローブの吸収として物質量とその位置や大きさを3次元的に定量し可視化する手法を開発します。特に、解析モデルの妥当性やそこでの仮定の破れ、実験的な誤差などの問題を解析し、それらの問題に対しロバストなアルゴリズムを構築し定量的3次元蛍光画像再構成技術を確立します。最終的にPETとの同時測定により定量性を検証します。
研究成果


  • 研究代表者:橋本 守(大阪大学 基礎工学研究科 准教授)
  • 研究課題名:高速誘導ラマン散乱スペクトルイメージングシステムの開発
  • 研究概要:
    ラマン散乱は、全ての分子が持つ分子振動により無染色に分子種・分子構造に関する知見を得ることが可能ですが、非常に微弱であるためにそのリアルタイムイメージングは困難でした。本研究では、誘導ラマン散乱の並列励起・検出を行い、非共鳴バックグラウンドの影響なく、分子識別能力の高い指紋領域(500−1800cm−1)での生体試料のリアルタイム(33ms/image)・ラマン・イメージングを実現します。
研究成果


  • 研究代表者:星 詳子((公財)東京都医学総合研究所 ヒト統合脳機能プロジェクト プロジェクトリーダー)
  • 研究課題名:バイオメディカル光イメージングにおける数理モデルと画像再構成
  • 研究概要:
    近赤外拡散光トモグラフィは、ダイナミック・マルチレベル生体イメージングを可能にする技術です。生体内光伝播の解明は、拡散光トモグラフィのみならず、光生体イメージング技術開発に共通した基盤となる課題で、本研究では、生体組織の光学特性値を決定し、高精度コンピュータ計算技術・シミュレーション技術を開発して、生体内光伝播を厳密に再現する数理モデルを構築します。さらに高速・高精度画像再構成アルゴリズムを確立して、拡散光トモグラフィの実用化を目指します。
研究成果


  • 研究代表者:山田 勝也(弘前大学 医学研究科 准教授)
  • 研究課題名:蛍光標識グルコース法による体内診断用プローブの開発
  • 研究概要:
    がんの画像診断法として放射性標識ブドウ糖(グルコース)を利用したPET(陽電子断層法)が用いられているが、小さながんの早期発見が困難であることに加えて、個々の細胞の違いを見分けられないなどの短所があり、微小ながんを明瞭に可視化して細胞を評価する方法が求められていました。本開発は、蛍光標識グルコース誘導体を生体内に適用してがん細胞の正確な可視化を実現しようとするもので、がんの早期発見や診断精度の飛躍的向上が期待されます。
研究成果



◆平成25年度終了◆


  • 研究代表者:西條 芳文(東北大学 医工学研究科 教授)
  • 研究課題名:透明圧電素子の応用による革新的光音響顕微鏡の開発
  • 研究概要:
    物質にごく短時間のレーザー光を照射したときに発生する超音波による光音響イメージングは、光を用いた方法では観察できなかった生体深部の形態やバイオメカニクスを画像化する方法です。本研究では、光を通過させる透明圧電素子により光学系と音響系を単一のセンサに統合し小型化することで、高精度光音響顕微鏡を開発するとともに、産学共創により内視鏡などの国際競争力のある医療機器への展開を目指します。
研究成果


  • 研究代表者:多喜 正泰(京都大学 地球環境学堂 助教)
  • 研究課題名:長残光蛍光体ナノ粒子を用いた癌細胞および細胞外マトリックスの無励起光型バイオイメージング
  • 研究概要:
    長残光蛍光体は数分間の紫外光照射により長時間発光し続ける希土類元素含有セラミックです。本研究では、緑色?近赤外発光を示す各種長残光蛍光体ナノ粒子を開発し、無励起光下におけるがん細胞や細胞外マトリックスの蛍光イメージング技術を構築します。さらに、近赤外光照射により発熱するという長残光蛍光体の特異な物性を活用することで、蛍光イメージングから部位選択的な光熱治療へと直接移行できる新たな治療技術を提案します。
研究成果


(※所属・役職は終了当時)

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5.アドバイザー

(敬称略 氏名五十音順)

氏名 所属機関/役職
小田 一郎 (株)島津製作所 基盤技術研究所 マイクロ・ナノシステムユニット長
菊地 眞 財団法人医療機器センター 理事長
近藤 科江 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 教授
寺川 進 常葉大学 健康科学部 看護学科 教授
中尾 英和 (株)ナード研究所 コーポレート研究部 主幹研究員
長谷川 晃 オリンパス(株) 研究開発センター 研究開発統括室長
山下 豊 浜松ホトニクス(株) 中央研究所 理事・研究主幹

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