【CREST】
○戦略目標「人間と調和する情報環境を実現する基盤技術の創出」の下の研究領域
「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」
研究総括:東倉 洋一(国立情報学研究所 副所長・教授)研究領域の概要
本研究領域は、コンピュータなどの情報機器、ネットワーク、コンテンツなどで満ち溢れた情報環境において、
実空間コミュニケーション、ヒューマンインターフェース、メディア処理などの要素技術を融合・統合し、
「人間と情報環境の調和」を実現するための基盤技術の構築を目指します。
具体的には、人間行動・実空間状況の取得・理解を行うセンサーネットワークやユビキタスコンピューティング
による実空間適応型認識技術、ロボットやユビキタスネットワークによる人間−機械コミュニケーションの円滑化技術、
および、テキスト、音声、音楽、画像などの多様なメディアの解析、検索、集積、構造化などに関わるコンテンツ技術を
連携・融合・統合した「人間調和型情報環境」を構築するための研究を推進します。さらに、人間とこれを取り巻く
情報環境の調和的な相互作用を行う技術のブレークスルーを生み出す研究や、人間と情報環境の調和という視点を
意識した認知プロセスの研究と情報環境構築技術の研究を、異分野融合課題として推進・発展させる研究も含みます。
研究総括の募集・選考・研究領域運営にあたっての方針
情報通信技術の発展によって新しい情報環境が生まれています。そこでは、さまざまな情報が利用に供されつつありますが、
その活用においては依然として「情報環境に合わせる」ことが求められています。しかし、誰もが状況に応じて必要な情報を
得るためには、「人間と情報環境の相互作用」「人間と情報環境の調和」、いいかえれば、「情報環境の知能化」という考え方が
必要です。
従来、情報環境の知能化技術は、それぞれの分野で研究開発が推進されてきました。これらの技術は、人間調和型情報環境技術としては
充分に成熟しているとはいえないまでも、ポテンシャルを備えた技術が多く存在し、分野間の連携・融合・統合によって、研究を
推進・発展させていけば、人間調和型となることが可能です。このように、異分野間連携・融合によって、人間調和型情報環境を
創出する革新技術を目指した共同研究の提案を期待します。
情報環境が知能をもてば、人間側からではなく、情報機器やネットワークから能動的に働きかけることが可能になります。そうすれば、
利用者個人が、努力や意識することなく、時と場所と場合に応じて、必要かつ最適な情報を得ることができます。しかし、このことは、
自ら「考える」「行動する」ことをしない人間を生み出すことを危惧させます。情報環境として重要なことは、このような受動的な人間を
生むのではなく、逆に、人間の知力や行動力を最大限に引き出すことです。このように、人間との知的・行動的な相乗効果を発揮する
情報環境を構築する革新技術を期待します。
また、この研究領域では、人間の意図・行動や空間情報の認知プロセス、人間と情報環境の調和の度合いを定量的に知る認知プロセスを、
人間調和型情報環境技術と連携・融合した形で、心理学・認知科学的に解明することも大切であると考えています。ただし、
認知プロセスの解明だけを目的とするものは対象としません。
さらに、人間調和型情報環境技術は、将来、日常生活のどのような場面に利用するのかの社会実装を見据えた研究の推進が必要です。
このように、研究領域が広範で多岐にわたるため、研究期間における達成目標の具体的イメージとこれに至るマイルストーンを明確にした
提案を行ってください。