研究最前線

廃棄着色ガラスの再資源化技術を開発

無色透明なガラスにして回収
顔写真 赤井 智子
(あかい ともこ)
(独立行政法人産業技術総合研究所関西センター
生活環境系特別研究体生活環境素材研究グループ主任研究員)
独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業
研究領域「変換と制御」研究者
独立行政法人産業技術総合研究所関西センターの赤井智子主任研究員は、再利用の道がなかった使用済みの着色ガラスを無色透明な多孔質ガラスに変身させる新技術を開発しました※1。この多孔質ガラスに、さまざまな金属※2を極微量加えて焼成すると色鮮やかな光を放つ蛍光ガラスをつくることができます。大半が埋め立て処分されているワインボトルなどへの利用が期待されています。
※1:
戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけタイプ)の研究課題「水を変換プロセスに利用した廃ガラスの再資源化」の成果です。

※2:
銅、コバルト、マンガン、ユウロピウムなどです。
ねらいと背景
着色ガラスの多くは埋め立て処分に
 ガラスびんは、使用後に回収され、再びガラスびんの原料になります。しかし、ワインなどの着色びんは、着色のために加えられた金属元素が障害になって、リサイクルが難しく、その多くが埋め立てられています。着色剤の金属を取り除くことは技術的に難しく、リサイクルしようとしても新しい原料から製造されるガラスよりコスト高になるため、太刀打ちできないことが原因です。
 このため、赤井主任研究員は、廃棄ガラスを使うことがデメリットにならないような高付加価値ガラスにリサイクルする技術を模索し続けてきました。
 その結果、アルカリホウケイ酸という特殊な組成のガラスを用いて、多孔質ガラスを作る方法を応用したらどうかというアイデアを思いつきました。アルカリホウケイ酸ガラスは、ナノ(10億分の1)mのレベルでホウ酸相とケイ酸相の2つに分離しています。ホウ酸相は酸に融けやすく、硝酸などに浸すと溶けだして、微細な孔が無数に空いた多孔質のシリカ(酸化ケイ素)ができるという方法です。
処理前の着色ガラス(左)と、処理後の多孔質透明ガラス
写真
内容と特徴
“足し算”を“引き算”に変える
 今回開発した技術は、粉砕した着色廃ガラスにホウ酸などを加えて溶融し、再びガラス化することでホウ酸相とシリカ相に分離します。このとき、ホウ酸相に着色源の金属が濃縮し、それを酸で溶かし出すと、無色透明な多孔質のシリカが残るという仕組みです。
 これに改めて金属を極微量加えて加熱すると、蛍光を発するガラスを製造することができます。赤井主任研究員は「ガラスの製造には、従来、いくつかの化学成分を足し合わせて反応させる“足し算”だけしかありませんでした。今回、足し合わせてできたものから不要な成分を取り去る“引き算”の発想を加えたことで、これまでにないものがつくれました」と説明しています。
 この蛍光ガラスは、蛍光塗料などに使われる蛍光体の輝度(輝き)には及びませんが、ガラスとしては今までにない輝きを示します。安定性も高く、野外で長期間使用しても劣化したりしません。熱にも強く、バーナーの火にかざしても光り続けます。
 透明ですから昼間は周囲の景観を損なわず、夜間は紫外線を当てることで光る看板として活用するなどの用途が考えられます。また、いろいろな金属を加えることで微妙な色が出せます。
熱湯の中でも光る蛍光ガラス バーナーの炎に入れても大丈夫
写真 熱湯の中でも光る蛍光ガラス 写真 バーナーの炎に入れても大丈夫

展望
さまざまな用途期待できる
 この蛍光ガラスは、これまでにない優れた特徴を持っていますが、実用化までには、なお、いくつかのハードルを越えなければなりません。まず、製造に用いた酸を再生利用する方法を考えなければなりません。酸の処理は、製造コストにも大きく影響します。廃水を浄化して環境に負荷をかけないことも大切です。
 また、ガラスのサイズを大きくするための成形技術の開発も残されています。現在でも数cm角程度のものは作れますが、タイルのような大きさにするためには、新たな技術開発が必要です。
 赤井主任研究員によれば、さまざまな企業からコンタクトがあり、今後の展開を検討中だそうです。蛍光ガラスは、屋外の看板以外にも、イルミネーションや危険個所を示す道路標識などさまざまな用途が期待されます。着色廃ガラスが再資源化されるのは、そう遠いことではなさそうです。
研究者のコメント
「リサイクル技術は、有用性とコストがトレードオフ(取引)の関係にあります。機能材料の開発では、優れた機能がポンと出ればそのことだけで、十分評価してもらえます。しかし、リサイクル技術はそうはいきません。色が抜けた、と言っても、コストがかかれば誰も関心を持ってくれません。リサイクル製品と言えども、高付加価値化を重視し、これまでにない性質のものをつくり出すことが大切であることを痛感しています」

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