「相互作用と賢さ」 講 演 概 要



(1)研究報告会プログラム
(2)発表研究者の講演概要
(3)会場のご案内
(4)参加申込用紙
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平田 泰久  東北大学大学院工学研究科 助手
人間・環境適応型知的歩行支援システム
写真:平田 泰久  本研究では、運動機能や視覚機能などの障害により、日常生活環境下での歩行が不自由な人を支援するため、システムと利用者との力学的相互作用を前提とし、利用者の操作力に基づいて適切にその運動が制御される歩行支援システムを開発した。はじめに、利用者の操作力や環境情報に基づいてサーボモータを適切に制御し、高性能・多機能を実現するアクティブ型システムを開発した。また、まったく別の観点から、サーボモータを一切用いず、利用者の加える力をシステムの駆動力として考え、その操作力をサーボブレーキを用いて適切に制限することにより、安全かつ多機能なシステムを実現するパッシブ型システムを開発した。そして、安全性と操作性の観点からそれらの運動制御手法を構築し、利用者の障害や環境に適応するディペンダブルな人間支援システムの実現を目指した。

今井 倫太  慶応義塾大学理工学部情報工学科 助教授
  認識と演出の相互作用に基づくコミュニケーションロボットの実現
写真:今井 倫太  本講演では、人間の感覚を利用した演出により、人間をロボットとのコミュニケーションへと没入させる手法を提案する。人間とコミュニケーションするロボットが沢山開発されている一方で、その多くは、人間がロボットとコミュニケーションする気があることを前提としている。しかし、町中でロボットが自律的に人間とコミュニケーションする場合、ロボットとのコミュニケーションへと人間を引き込むことが最重要課題である。本研究では、センサネットワークを用いて、人間からの共感を誘発する演出を行うシステムを開発する。さらに、被験者実験により、人間をコミュニケーションへと引き込む効果が演出にあることを示す。

久保田 直行  首都大学東京システムデザイン学部 准教授
  人間とロボットの相互関係形成のための構造化学習
写真:久保田 直行  人は、他者の発話内容や身振り・手振りに基づき、見ている環境から必要な情報を探索しながら、円滑なコミュニケーションを進める。本研究では、このようなコミュニケーションを支えるためのパートナーロボットの知覚システムを開発するとともに、模倣学習に基づく行為システムと人間や環境とのインタラクションを評価するための価値システムを統合した構造化学習を提案した。また、小学校での英会話教育への適用例では、子供がロボットに身の回りのものを見せて覚えさせ、ロボットは子供に英語を教えることによる双方向的な学習の効果を示した。このような学習の双方向性や相互適応は、パートナーとしてのロボットと人との相互関係の構築や自然なコミュニケーションの実現に貢献できるものと思われる。

砂田 茂  大阪府立大学大学院工学研究科 助教授
  環境・防災モニタリング用小型2重反転回転翼機の開発
写真:砂田 茂  地震発生直後の数十分間は情報収集が行えない情報空白期間と呼ばれるが、この情報空白期間を埋めること(防災モニタリング)が、地震被害を小さく抑えるために有効であると言われている。また、上空の大気分析、上空からの産業廃棄物や植生の調査等、環境モニタリングの必要性が高まっている。これらの防災・環境モニタリングを行うため、短時間で高高度まで上昇し、上空からの映像、上空大気の取得を可能にする小型回転翼機の開発を行った。本開発機の特徴は以下の通りである。(1)直径が約35cmの発泡スチロール製ロータで飛行し、衝突時に人体に重大な損傷を与えない。(2)一般に、小型の回転翼機は風に流されてしまう問題を持つが、機体後方の小型プロペラによってロータ、すなわちロータの発生推力を大きく機体前方に傾け、風に対抗できる。(3)GPSを始めとする小型センサによって、プログラムされた位置へ向かう自律飛行が可能である。

友納 正裕  科学技術振興機構 さきがけ研究者
  環境とのインタラクションによる空間構造の獲得
写真:友納 正裕  ロボットが人と共生して物の操作や運搬などの作業を行うには、環境中の物体を認識し、その位置を知ることが不可欠である。ところが、従来のロボットによる環境地図の構築では、環境全体の形状をひとまとまりにとらえており、個々の物体は認識していなかった。本研究は、ロボットが環境を物体単位に認識して、3次元の空間構造を記した環境地図を構築することを目的とする。本研究では、このための要素技術として、レーザスキャナによる地図構築、カメラ画像列からの物体モデル生成、カメラ画像による物体認識の各方式を開発した。さらに、これらの技術を統合して、レーザスキャナと単眼カメラを用いて3次元物体地図を構築することに成功した。

長谷川 修  東京工業大学像情報工学研究施設 助教授
  学習によるシーン理解の研究
写真:長谷川 修  近年、日常生活環境で人と対話しながら知的に振舞うロボットが多数発表されているが、そうしたロボットの知的機能は、殆どの場合、対話のシナリオが想定され、組み込まれたものとなっている。我々は、人の赤ちゃんが知識を持たない状態から徐々に知的に発達するように、視覚や聴覚を介した人との相互作用を通じ、視覚的概念や言語を複合的に学習して発達するロボットを世界で初めて構築した。このロボットの学習機能には、独自に研究開発した「自己増殖型ニューラルネットワーク」を用いた「持続的発達学習メカニズム」を導入している。実験の結果、対話による教示・育成を通じ、ロボットに人間の2歳児程度の知能を持たせることに成功した。

工藤 卓  産業技術総合研究所セルエンジニアリング研究部門 研究員
  賢くなる2次元神経回路網によるパターン認識
写真:工藤 卓  多点電極皿上に於いて分散培養された神経回路網のネットワークの特性を解析した。培養系に於いて、自発的活動時空間パターンはダイナミックに変動する機能的細胞集成体の存在を示唆していること、自律的に構成された回路網がランダムではなく、スケール・フリーネットワークの特徴を持っていることを発見した。これらの結果は、培養神経回路網が情報処理に適した機能的構造を自律的に獲得しうることを示唆する。この再構成された回路網に環境と相互作用する媒体を与えることで、外界を反映した機能構造が新たに出現するのではないかと言う仮説を検証するため、第一段階としてリアルタイムでフィードバック刺激を入力しながら培養を行った。その結果、外界との相互作用により、回路網がある一定の対応を保つために機能的に再編されることを示す予備的な結果を得た。さらにこの結果をふまえ、環境と相互作用する媒体として小型ロボットを接続して継続的に解析できる系を構築した。

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