生命現象と計測分析
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小澤岳昌研究者
小澤岳昌研究者が平成22年度日本学術振興会賞を受賞(2011年2月3日)。

概要

小澤岳昌研究者が,平成22年度の日本学術振興会賞を受賞しました.日本学術振興会賞は,優れた研究を進めている若手研究者を見出し,早い段階から顕彰してその研究意欲を高め,独創的,先駆的な研究を支援することにより,我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させることを目的として創設されたものです.

受賞題目

蛍光タンパク質の切断と再構築を利用したレポータータンパク質の再構成法

研究概要

生物が生きた状態で,生体分子の機能やシグナルを検出する分析方法が強く望まれてきた.小澤らは,独自の技術「タンパク質再構成法」を世界に先駆けて創出し,様々な生体分子の可視化法を開発してきた.タンパク質再構成法とは,緑色蛍光タンパク質を特定の場所で二分割するとその蛍光が失われる.この二分割された蛍光タンパク質を,それぞれ標的タンパク質Aと標的タンパク質Bとの融合タンパク質として細胞内で合成する.標的タンパク質Aと標的タンパク質Bが相互作用すると,二分された蛍光タンパク質が近接し元の蛍光タンパク質が再構築され蛍光を発する.この方法により,生細胞内でのタンパク質間相互作用の定量的検出およびミトコンドリア・タンパク質の網羅的解析法や内在性ミトコンドリアRNA の可視化法の開発に成功した.
タンパク質再構成法は現在,国内外の研究者に多く利用されており,基礎生命科学研究に大きく貢献している.今後,本法により生命現象の解明に繋がる多くの研究成果が期待できる.また,生体分子の可視化による薬物スクリーニングや実験動物の非侵襲的分子イメージングなど、創薬や医学の臨床研究にも多大な貢献が期待できる.

上村想太郎研究者
さきがけ専任研究者(研究実施場所:米国 スタンフォード大学 医学部)の上村想太郎研究者が 理化学研究所 横浜研究所オミックス基盤研究領域 LSAシステム構築グループ ゲノム解析技術展開ユニット ユニットリーダーに就任しました(2011年2月1日)。

「生命現象解明のための計測分析」さきがけ・CREST研究報告会が開催されました
さきがけ「生命現象と計測分析」領域の3期生10名、さきがけ「構造機能と計測分析」領域の3期生1名、CREST「生命現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」領域の研究者代表者6名の研究成果の報告がなされました。
日時:2010年12月13日(月)〜14日(火)
場所:東京ガーデンパレス
プログラム(PDF:913KB)

秋山修志研究者
シアノバクテリア時計たんぱく質KaiCの分子鼓動の可視化に関する研究成果がThe EMBO Journal のオンライン速報版に掲載されました。(2010年11月26日)

掲載誌

The EMBO Journal のオンライン速報版(2010年11月26日)

プレス発表

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20101127/index.html

発表テーマ

Tracking and Visualizing the Circadian Ticking of the Cyanobacterial Clock Protein KaiC in Solution

発表概要

シアノバクテリアの時計タンパク質(KaiC)が時を刻む様子を,X線小角散乱を始めとする分光学的手法により可視化したものです.KaiCのX線結晶構造が米国の研究グループよって2004年に報告されましたが,当時,その静的な描像のみから分子時計が時を刻む機構を読み取ることは容易でありませんでした.昨年,リン酸化変異体の結晶構造についての続報が発表されましたが,機能発現に直結した構造変化は見出されていませんでした.
 本論文は,X線小角散乱を始めとする各種分光法を用いて,KaiCの構造変化を捉えた世界初の研究成果です.KaiCはドーナツを2つ積み上げたような2重のリング状構造をしています.片方のリングにある「周期を規定するATPase」の制御状態と密に連動して,もう片方のリング半径が膨らんだり,縮んだりを繰り返します.あたかも,心臓が拍動するかのように形状をリズミカルに膨張・収縮させることで,24時間周期で時を刻むことが解明されました.この分子鼓動は,蛍光分光法などを用いて非破壊的にリアルタイム追跡ができるため,時計機能に影響を及ぼす様々な外的要因や化学物質の探索研究への展開が期待されます(Faculty 1000 of Biologyに選出されました).

松崎政紀研究者
東京大学大学院医学系研究科 准教授の松崎政紀研究者が自然科学研究機構 基礎生物学研究所 教授に就任しました。(2010年9月1日)。

喜多村和郎研究者
東京大学大学院医学系研究科 助教の喜多村和郎研究者が准教授に昇任しました。(2010年8月1日)。

渡邉恵理子研究者
(独)物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 独立研究者の渡邉恵理子研究者が、電気通信大学 先端領域教育研究センター 特任助教に就任しました。(2010年7月1日)。

上村想太郎研究者
上村想太郎研究者の「リボソームにおいてたんぱく質が作られる課程の1分子レベルでのリアルタイム可視化に関する研究」が Nature Biotechnology のNews and Viewsに紹介されました(2010年6月28日)。

掲載誌・タイトル

Nature Biotechnology・“Complex molecular dynamics in the spotlight”

掲載内容

Pacific Biosciences社と共同研究者らは次世代DNAシーケンサー技術をタンパク質翻訳に応用したことでリボソーム1分子の翻訳過程を可視化することを可能にした。上村研究者らは次世代DNAシーケンサー技術で用いられたZero-Mode Waveguides法を応用することで別々の色の色素を結合させた高濃度アミノアシルtRNA存在下で従来までは観測することのできなかった翻訳中のtRNAのダイナミクスを理解することに貢献した。この手法はDNA複製反応を逸脱した新しい可能性を示唆するものである。用いると翻訳システムだけでなくあらゆる生体反応に応用することができるだろう。この高分解能イメージング手法を用いて将来は細胞内の相互作用のダイナミクスやタンパク質構造変化のゆらぎなどを計測できる可能性を秘めている。

福間剛士研究者
科学・技術フェスタ in 京都―平成22年度産学官連携推進会議の若手研究者による科学・技術説明会で展示・発表しました(2010年6月5日)。

技術の名称

固液界面の原子分解能イメージング技術

新技術の成果の概要

周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)では、原子レベルに鋭く尖った探針で、試料表面の凹凸をなぞり、その際の探針の軌跡から表面形状を原子レベルで知ることができる。従来、本技術は真空中でのみ利用可能であったが、近年我々は、この装置のノイズを大幅に低減する技術を開発し、世界で初めて液中でのFM-AFMによる原子分解能観察に成功した。
本技術では、柔らかい生体分子の構造だけでなく、その表面に形成される水和層やイオンの分布までも、サブナノスケールの分解能で観察できる。 さらに最近では、FM-AFMで使われるスキャナ、周波数検出器7などを高速化し、探針を水平・垂直方向に高速走査することで、水分子の3次元分布を原子スケールの分解能で可視化する技術の開発に成功した 。

上村想太郎研究者
上村想太郎研究者の「リボソームにおいてたんぱく質が作られる課程の1分子レベルでのリアルタイム可視化に関する研究」が Nature Methods のResearch Highlightに紹介されました(2010年5月28日)。

掲載誌・タイトル

Nature Methods・“A grow on protein synthesis”

掲載内容

次世代DNAシーケンサー技術をタンパク質翻訳に応用したことでリボソーム1分子の翻訳過程を可視化することが可能となった。1950年代からタンパク質翻訳の研究は盛んに行われてきたが、最近では2009年のノーベル化学賞が記憶に新しい。タンパク質翻訳研究は1分子研究によって詳しく研究が行われてきたが、μMの翻訳因子濃度領域における翻訳のタイミングの研究については限界があった。上村研究者らは次世代DNAシーケンサー技術で用いられたZero-Mode Waveguides法を応用することでtRNAに別々の色の色素を結合させることで従来までは観測することのできなかった翻訳中のtRNAのダイナミクスを理解することに貢献した。この手法を用いると翻訳システムだけでなくあらゆる生体反応に応用することができるだろう。

上村想太郎研究者
リボソームにおいてたんぱく質が作られる課程の1分子レベルでのリアルタイム可視化に関する研究成果が Natureの Articles に掲載されました(2010年4月15日)。

掲載誌

Nature 464, 1012-1017, 2010

プレス発表

http://www.jst.go.jp/pr/info/info728/index.html

発表テーマ

Real-time tRNA transit on single translating ribosomes at codon resolution

発表概要

リボソームはすべての細胞に存在する分子で、DNAの遺伝情報がmRNAへと転写された後、その遺伝情報に沿ってtRNAが運ぶアミノ酸をつなげる反応を担っている。結果としてできあがるアミノ酸の長い鎖は、複雑な反応によってさらなる加工を受け、目的のタンパク質となる。mRNAの遺伝情報からアミノ酸鎖が作られる翻訳過程の研究は、生命の基本原理を探求することにつながるが、翻訳過程の詳細については、未解明の部分が多く残されていた。本研究では、複数種類のtRNAにそれぞれ別の色の蛍光分子を結合させて色分けし、特殊なZero-mode waveguides(ZMW)法を用いて1分子レベルで蛍光イメージングを行った。具体的には、リボソームをZMW基板の穴の底に固定し、3種類のtRNAを3色の蛍光色素で染色して、mRNA上のコドンに対応した色の蛍光色素を高濃度(従来法による測定限界のおよそ50倍濃い濃度)で溶液内に存在させて細胞内にほとんど近い環境を実現させ、その蛍光tRNAが次々とコドン情報に従って基板の底に固定されたリボソームに結合・解離する様子を可視化することに成功した。
リボソームには3つのtRNA結合部位が存在するが、どの部位に、いつ、どのように、何分子のtRNAが同時に結合するのかは従来まで不明な点が多くあった。この方法で観測されたtRNAシグナルによって、これらを直接可視化することが可能となった。  その結果、翻訳中はtRNAが2分子結合した状態と1分子結合した状態とを繰り返すことが分かり、E部位に結合したtRNAの解離はA部位に結合する次のtRNAにかかわらず、自発的に解離することが証明された。さらに、フシジン酸やエリスロマイシンの抗生物質薬剤による翻訳阻害反応も可視化することに成功した。これらの結果は抗生物質の薬剤反応機構のメカニズム解明につながり、新薬開発が期待される。

上村想太郎研究者
上村想太郎研究者の「リボソームにおいてたんぱく質が作られる課程の1分子レベルでのリアルタイム可視化に関する研究」が Nature のNews & Views に紹介された(2010年4月15日)。

掲載誌・タイトル等

S.Brakmann Nature 464, 987-988, 2010 "A ribosome in action"

掲載内容

タンパク質合成においてリボソームはmRNAのコドンに従ってtRNAを介して特定のアミノ酸を合成する反応を触媒しており、細胞内で極めて重要な役割を担っている。リボソームが精度よくタンパク質を合成できないと細胞内毒性を引き起こすことにつながる。
上村研究者らは1分子技術を用いて今までに前例のないほど高分解能でコドンごとの反応を直接可視化することに世界で初めて成功し、その成果はNature誌の同じ号にArticleで掲載された。通常、分子過程の研究では生化学的アプローチが主流であったが、無数の分子からのシグナルが平均化されてしまうため多くの重要な過程が失われてしまう。一方、1分子計測によるアプローチでは個々の分子のシグナルを直接観測するために稀に起こるイベントや重要な過程を捉えやすい。上村研究者らはtRNAに別々の色の色素を結合させることで従来までは観測することのできなかった翻訳中のtRNAのダイナミクスを理解することに貢献した。光ピンセット法を用いてコドンごとのステップ運動を観察した先行研究は存在するが、大きく異なる点として上村研究者らはtRNAを蛍光で区別したこと及び、新しいZero-Mode Waveguides法を応用することで細胞内環境に近い高濃度条件で測定したことについて先行研究を大きく超える成果となった。この1分子によるリアルタイム翻訳過程のモニタリングはタンパク質翻訳研究においてブレイクスルーであり、今後様々な分子メカニズムに応用されるようになるだろう。

喜多村和郎研究者
喜多村和郎研究者が平成22年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞(2010年4月13日)。

概要

平成22年4月13日に、京王プラザホテルにおいて文部科学大臣表彰が行われ、喜多村和郎研究者が若手科学者賞を受賞した。本賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象に授与されます。

受賞題目

生物物理学分野における先端的イメージングの研究

研究概要

生命現象を明らかにするためには、その担い手である分子や細胞の挙動を直接観察すること、すなわち、生体分子1分子の挙動を高精度で観察・計測することや、脳のような複雑な生体システムを保ったまま個々の細胞機能を観察する技術が不可欠である。独自に開発した1分子イメージング・ナノ計測システムを用いて、生体分子モーターミオシン1分子が発生する変位の単位ステップを発見した。この発見は、長年の論争となっていたミオシンの分子メカニズムに関して、重要な知見を与えた。続いて、2光子励起観察法を用いた、ニューロンの動物個体内での可視化・同定技術を新たに開発した。これにより、これまでは困難であった、脳内における選択的パッチクランプ計測を容易にし、実験効率を飛躍的に向上させることに成功した。さらに、脳内の1個のニューロンに選択的に遺伝子を導入するという従来の方法とは一線を画する新しい方法を確立した。
これらの研究成果は、いずれも従来では困難と思われていた研究を可能にするものであり、複雑な生体システムの理解に役立つと期待される。

王子田彰夫研究者
京都大学大学院 工学研究科 講師の王子田彰夫研究者が、九州大学大学院 薬学研究院 生体分析化学分野 教授に就任しました(2010年4月1日)。

谷知己研究者
北海道大学 電子科学研究所 准教授の谷知己研究者が、米国Marine Biological Laboratory, Cellular Dynamics Program(ウッズホール海洋生物学研究所 細胞ダイナミクスプログラム)のAssociate Scientistに就任しました(2010年4月1日)。

福間剛士研究者
福間剛士研究者の「AFMによるマイカ/水界面の原子スケール3次元水和構造計測に関する研究」がNature のNews & Views に紹介された(2010年3月4日)。

掲載誌・タイトル等

J.W.M.Frenken,T.H.Oosterkamp "When mica and water meet," Nature, 464 (2010) 38-39.

掲載内容

周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)は、鋭くとがった探針を試料表面近傍において水平方向に走査することで、2次元的な表面形状像を原子分解能で観察する手法である。福間らは、この技術をさらに発展させて、探針を水平方向に低速で走査しながら、垂直方向にも高速に探針を走査することで、固液界面における水分子の3次元分布を計測する技術を開発した[1]。さらに、この技術を用いてマイカ/水界面における水和層と吸着水の3次元分布を直接原子スケールで可視化することに成功した[1]。マイカ/水界面における水分子の挙動は、これまでにも様々な計測手法で研究されてきたが、特に水分子の状態がsolid-likeであるのかliquid-likeであるのかという点は、長年にわたって未解決の問題として議論されてきた。福間らの得た結果は、これまで他の計測手法で得られた一見矛盾するかに見える実験データを、ともに矛盾なく説明できるモデルを提示するものであり、この長年続いた議論を解決に向けて大きく前進させるものとなった。また、solid-likeな水分子は自然界のいたるところに存在しており、生物物理や科学技術に関係する多くのプロセスにおいて重要な役割を果たしている。したがって、それらの分野においても、固液界面における水分子の挙動が正確に理解できれば大きな助けとなる。

[1] T. Fukuma, Y. Ueda, S. Yoshioka, H. Asakawa, "Atomic-Scale Distribution of Water Molecules at the Mica-Water Interface Visualized by Three-Dimensional Scanning Force Microscopy," Phys. Rev. Lett. 104 (2010) 016101.

「生命現象解明のための計測分析」さきがけ・CREST研究報告会が開催されました
さきがけ「生命現象と計測分析」領域の2期生10名、CREST「生命現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」領域の研究者代表者6名の研究成果の報告がなされました。
日時:2010年1月13日(水)〜14日(木)
場所:コクヨ・ホール
プログラム(PDF:877KB)

福間剛士研究者
福間剛士研究者が第19回日本MRS学術シンポジウム奨励賞を受賞(2009年12月7日)

概要

第19回日本MRS学術シンポジウムで研究成果を発表し、第19回日本MRS学術シンポジウム奨励賞を受賞した。

受賞題目

周波数変調原子間力顕微鏡によるナノバイオ界面の可視化

研究概要

生体システムは様々な分子から構成されており、それを取り囲む生理溶液環境中にも水分子、イオン、その他多くの分子が含まれる。したがって、それら2つの領域の界面においては、それぞれの領域を構成する分子・イオンが複雑に相互作用して様々な複合体を形成している。このような界面現象は、生体システムの構造や機能に影響を及ぼし、多くの生体プロセスの発現に関与している。われわれは、従来超高真空中での利用が一般的であった周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)に改良を加えることで、世界で初めて液中FM-AFMによる原子分解能観察に成功した。この技術を用いて、DPPC二重層およびDPPC/コレステロール混合膜の表面構造、DPPC二重層上に形成された水和層、脂質分子と相互作用するイオンの分布などを直接分子スケールの分解能で可視化することに成功した。これらの結果は、液中FM-AFMにより、生体システムの表面構造だけでなく、それと相互作用する水分子やイオンの分布をも可視化できることを示しており、ナノバイオ界面の可視化技術を大きく進展させた。

田川陽一研究者
田川陽一研究者が第22回日本動物実験代替法学会総会で優秀演題賞を受賞(2009年11月14日)

概要

第22回日本動物実験代替法学会総会で優秀演題賞を受賞。

受賞題目

ES細胞等を用いた肝組織チップの開発

研究概要

マウスES細胞やヒトiPS細胞を用いて、肝細胞だけでなく内皮細胞を有した肝組織を構築した。独自に開発した流路を有するマイクロ培養装置でこれら肝組織を培養し、薬物代謝能力が通常の培養よりも優位に高かった。本研究で開発したES細胞等由来の肝組織チップは動物実験代替になりうる計測システムであることを示した。

渡邉恵理子研究者
さきがけ専任研究者(研究実施場所:日本女子大学)の渡邉恵理子研究者が(独)物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 独立研究者に就任しました(2009年11月1日)

西山雅祥研究者
西山雅祥研究者が第47回日本生物物理学会年会で若手奨励賞を受賞(2009年10月31日)

概要

第47回日本生物物理学会年会の若手招待講演で研究成果を発表し、第5回若手奨励賞を授与された。

受賞題目

バクテリアべん毛モーターの熱力学的コントロール

研究概要

生体分子機械は、周囲を取り巻く水分子に激しく揺さぶられ熱力学的に不安定な条件下にありながらも、効率よく駆動しており、その巧妙な仕掛けは明らかにされていない。西山研究者は、タンパク質とその周囲をとりまく水との相互作用を変調しながら機能評価を行える「高圧力顕微鏡」の開発を行い、バクテリアの運動器官であるべん毛モーターの回転計測を行ってきた。自然界にある大腸菌は、走化性応答を経てシグナル伝達分子の結合解離によって、べん毛モーターの回転方向を変化させている。今回、さきがけ研究で開発した高圧力顕微鏡を用いて、高圧力下でべん毛モーターの回転計測を行ったところ、シグナル伝達分子なしで回転方向を逆にできることを明らかにした。この研究成果は、生理的な条件下では測定できないタンパク質の隠された側面を明るみにするものである。

中西淳研究者
中西淳研究者が日本分析化学会「奨励賞」を受賞(2009/9/25)。

概要

分析化学に関する研究が独創的であり、将来を期待させる若手研究者に贈る日本分析化学会「奨励賞」の表彰式が9月25日に札幌で開かれ、中西 淳研究者が受賞した。

受賞題目

タンパク質構造変化の生細胞内可視化および細胞の光パターニング

研究概要

生細胞分析では、細胞内現象を読み取る計測技術の開発とともに、分析対象細胞に然るべき生育環境を提供する培養技術が重要である。中西研究者は、タンパク質構造変化の生細胞内可視化法と細胞の光パターニング法の開発を行った。前者では、小分子蛍光試薬を用いた高感度・低侵襲計測を実現し、後者では、細胞培養の足場材料の精密設計をもとに、生細胞分析の確度・精度の向上を図るべく細胞操作技術を創成した。これらの技術は生細胞分析の根幹に位置し、今後の分析化学の発展に貢献するところが大きい。

平成20年度終了課題に関する「研究領域 領域活動・評価報告書」ならびに「研究課題別評価書」がJSTの下記webサイトで一般公開されました。
「生命現象と計測分析」研究領域の1期生の課題が含まれています。(2009年6月25日)。
http://www.jst.go.jp/kisoken/presto/ja/report/kadai.html
荻博次研究者
荻博次研究者が第8回産学官連携推進会議の若手研究者による科学技術説明会で展示・発表 (2009年6月20日-21日)。

技術の名称

無線・無電極多チャンネル水晶振動子バイオセンサ

新技術の成果の概要

レセプタたんぱく質を固定化した複数の水晶振動子の共振周波数を,水中でアンテナによって非接触に測定する技術を開発。検体たんぱく質を注入しレセプタと反応させると振動子質量が増加し,共振周波数が減少する。この現象をモニタリングすることにより,複数の生体分子反応をリアルタイムに観察することができる。無電極素子のため,高感度化(高周波化)が容易であり,基本振動周波数は170MHzにもおよぶ。

小澤岳昌研究者
小澤岳昌研究者が武田計測先端知財団から「バイオ先端知賞」を受賞(2009年3月16日)。

概要

武田計測先端知財団が,国際社会の健全な発展と人類の豊かさと幸福に寄与することが期待されるバイオ技術に対して表彰する表彰式が,第9回バイオビジネスコンペJAPAN主催の下,3月16日に大阪府で開かれ,小澤岳昌研究者が受賞した。

受賞題目

新薬開発を支援する光分子イメージング技術の開発と事業化

研究概要

生きた細胞や生物個体の中で機能する生体分子を直接可視化法は,新薬開発のための新たな技術として大きく期待されている。小澤研究者は,蛍光タンパク質や発光タンパク質を2つに分割するとその発光能は失われるが,この分割したタンパク質を細胞内で近接あるいは再連結(スプライシング)させると,その発光能が回復することを初めて見いだした。この基本原理を応用し,タンパク質間相互作用,タンパク質の細胞内局在,RNAの動態,酵素活性など,様々な生体分子の動態と機能を,生きた細胞や動物個体内で可視化することに成功した。この基本原理は,「タンパク質再構成法」として,世界的にその応用研究が展開されている。またこの斬新な研究方法は,化学・基礎生物学・医学など,分野横断的に利用され大きな波及効果を産んでいる。今後,生体分子の可視化技術を応用した薬物のスクリーニングや,小動物の非侵襲的分子イメージングなど,創薬や医学研究に大きな貢献が期待できる。

上村想太郎研究者
上村想太郎研究者が光科学技術振興財団で研究表彰を受賞(2009年3月4日)。

概要

光科学技術振興財団(理事長=晝馬輝夫・浜松ホトニクス株式会社 取締役社長)が、光科学に関する基礎的な研究又は光科学技術の向上に役立つ研究で優れた業績を上げた新進研究者に贈る研究表彰の表彰式が3月4日、静岡県浜松市で開かれ、上村想太郎研究者が受賞した。

受賞題目

光ピンセット技術の1分子タンパク質翻訳機構への応用

研究概要

光ピンセット技術とは1980年代にAshkinらが開発した手法で、近赤外レーザーを高いN.Aを持つ対物レンズにより焦点面に集光させることで、直径数十nmから数 mの粒子を捕捉し、自由自在に操作する技術である。上村研究者はこの技術を初めてタンパク質翻訳系に応用し、さらに蛍光染色tRNAの蛍光エネルギー移動法FRETを用いることでリボソーム分子内の構造変化を捉えることにも成功した。この結果、翻訳初期においてリボソーム内でペプチド結合を形成すると初期配列結合を不安定化するアロステリック機構を1分子レベルで明らかにすることができた(Uemura. S., et al. Nature 2007)。

上村想太郎研究者
東京大学大学院薬学系研究科 助教の上村想太郎研究者が退職して、米国Stanford University, School of Medicineへさきがけ専任研究者として異動した。(2009年2月1日)。

さきがけ3領域合同研究報告会が開催されました
「生命現象と計測分析」領域の1期生12名、「代謝と機能制御」領域の1期生12名、「構造機能と計測分析」領域の2期生7名の研究成果の報告がされました。
日時:2008年12月23日(火)〜25日(木)
場所:東京ガーデンパレス
プログラム(PDF:581KB)

福間剛士研究者
福間剛士研究者が日本生物物理学会で若手奨励賞を受賞(2008年12月4日)。

概要

第46回日本生物物理学会年会の若手招待講演で研究成果を発表し、第4回若手奨励賞を授与された。

受賞題目

周波数変調原子間力顕微鏡によるモデル生体膜上に形成された水和層の分子分解能観察

研究概要

周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)は、従来、超高真空中での原子・分子分解能観察を行うための表面分析手法として発展してきた。われわれは、近年この手法・装置に大幅な改良を加え、世界で初めて液中でのFM-AFMによる原子分解能観察に成功した。本研究では、この液中FM-AFM技術を用いて、リン酸緩衝溶液中のDPPC脂質二分子膜上に形成された水和層を直接分子分解能観察することに成功し、水和層が脂質膜上にナノスケールの広がりを持って安定に存在していることを示した。さらに、脂質頭部とイオンとの相互作用によって形成される、脂質-イオン複合体の構造や生成・消滅過程、それに伴って生じる脂質頭部の構造変化を直接原子スケールの分解能で観察することにも成功した。これらの結果は、従来から知られる生理溶液中のイオンが生体膜の力学的強度を高める効果の原子スケールの起源を直接解明した点で大きな意義を持つ

川上勝研究者
川上勝研究者が第2回AFM BioMed ConferenceでBest poster Presentation Awardを受賞(2008年10月17日)

概要

フランス原子力庁とカリフォルニア州 QB3(California Institute for Quantitative Biomedical Research QB3)が合同主催した第2回AFM BioMed ConferenceでBest poster Presentation Awardを受賞。

受賞題目

A single-molecule force spectroscopy study on the influence of temperature on the mechanical unfolding of proteins

研究概要

タンパク質Titinについて、原子間力顕微鏡を用いた1分子力学測定実験を各温度において行い、力学的安定性の伸長速度依存性、温度依存性から、タンパク質のフォールディングに関するエネルギー地形に関する詳しい情報を定量的に描出することに成功しました。

秋山修志研究者
さきがけ専任研究者(研究実施場所:(独)理化学研究所 播磨研究所)の秋山修志研究者が 名古屋大学大学院理学研究科 講師に就任しました(2008年8月1日)。

秋山修志研究者
秋山修志研究者が平成20年度文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞(2008年4月15日)。

概要

平成20年4月15日に、虎ノ門パストラルにおいて文部科学大臣表彰が行われ、秋山修志研究者が若手科学者賞を受賞した。本賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象に授与されます。

受賞題目

X線小角散乱を用いたシグナル感知・伝達・応答機構の研究

研究概要

分子機械(まとまった機能を持つ蛋白質複合体)は、外界からのシグナルに応じて構成部品の数や種類を時々刻々と変化させるが(離合集散)、その動的な様相を理解することは生物学分野の重要な課題の一つである。
本研究において、X線小角散乱計測が離合集散機構の解明につながる可能性を秘めていることを提案し、結晶構造解析のみで解決困難な問題に挑んできた。藍藻の時計蛋白質が溶液中で離合集散する様子をX線小角散乱で実時間計測し、時計蛋白質が分子間相互作用を概日的に組み変えつつ時を刻む仕組みを明らかとした。一方で、2成分情報伝達系の分子機械についても研究を展開し、分子機械の形状やシグナル伝達経路の解明に成功している。
本研究成果は、X線小角散乱が分子機械の離合集散を解明する有力な計測手法であることを示すもので、今後、生物時計に代表される複雑な生命現象の機構解明が期待される。

横田彰浩研究者
(財)東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所 主席研究員の横田浩章研究者が 京都大学 物質―細胞統合システム拠点 講師に就任しました(2008年4月1日)。

加納英明研究者
加納英明研究者が日本化学会で進歩賞を受賞(2008年3月26日)。

概要

化学の基礎または応用に関する優秀な研究業績を挙げた若手研究者に贈る日本化学会「進歩賞」の表彰式が3月27日、東京都内で開かれ、加納英明研究者が受賞した。

受賞題目

白色レーザーを用いた分子分光イメージング法の開発と生細胞のin vivo分子レベル追跡

研究概要

加納研究者は、coherent anti-Stokes Raman scattering (CARS)過程と呼ばれる、微弱なラマン散乱光を増強する非線形光学過程を、白色レーザーという新しい光源を用いることで実現し、分子性結晶から生細胞まで、様々な系を振動コントラストにより分子レベルで可視化することのできる、まったく新しい顕微分光法を開発した。これにより、対象を各々の振動モードに基づいて"色分け"することを可能とする、"分子分光イメージング"という新しい分野を切り拓いた。

谷正彦研究者
大阪大学 レーザーエネルギー学研究センター 准教授の谷正彦研究者が福井大学 遠赤外領域開発研究センター 教授に異動しました。(2008年3月16日)。

秋山修志研究者
時計タンパク質が離合集散を繰り返しながら時を刻む機構の解明に関する研究成果が、米国科学雑誌「Molecular Cell」の速報版として掲載されました(2008年3月13日)。

掲載誌

Molecular Cell オンライン速報版(doi:10.1016/j.molcel.2008.01.015)

プレス発表

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20080314-2/index.html

発表テーマ

Assembly and Disassembly Dynamics of the Cyanobacterial Periodosome

発表概要

藍藻(らんそう)は生物時計を備えた最も下等な生物で、3つの時計タンパク質(KaiA、KaiB、KaiC)の複雑な相互作用によって生み出される概日リズムを指針に、光合成や窒素固定といった生命活動を昼夜環境サイクルと同調させている。時計の振り子に相当するのがKaiCで、KaiAがKaiCのリン酸化を促すのに対し、KaiBはKaiAの働きを抑制することでKaiCの脱リン酸化を促す。3つの時計タンパク質をATP存在下で混合すると、KaiCはリン酸が付与された状態(リン酸化型)とリン酸が外れた状態(脱リン酸化型)を概日周期で行き来することが知られている(Nakajima et al. 2005 Science 308, 414-415)。
このような興味深い現象を解明するべく構造生物学的研究が精力的に進められ、既に各々の時計タンパク質の単独構造が解明されている。機械仕掛けの時計になぞらえると、時計を構成する個々の歯車の構造が明らかになっている状態である。しかし、歯車同士の噛み合わせ(Kaiタンパク質同士が会合した複合体構造)が不明であるため、時計が動く仕組みを深く理解するには至っていない。その主たる理由は、KaiCがKaiAやKaiBと常に一定の会合状態を保っているのではなく、ときにKaiAと会合してリン酸化を促進させ、またときにはKaiBと会合して脱リン酸化を促すように、分子の形状や組成を時々刻々と変化させる離合集散系であるためである。
本研究では、大型放射光施設(SPring-8)の理研構造生物学ビームラインT(BL45XU)にて、Kaiタンパク質の離合集散を72時間にわたる実時間・X線小角散計測で追跡し、その途中で過渡的に蓄積するKaiタンパク質複合体の分子形状を決定した。その結果、KaiCがペースメーカーの役割を担い、KaiCがリン酸化を受けた度合いに応じてKaiAやKaiBをKaiCに呼び寄せたり(会合)、また突き放したり(解離)しながら離合集散タイミングを計っていることが示された。本研究成果は、X線小角散乱が離合集散系を調べるための有力な計測手法であることを示すと同時に、生物時計の動作機構を解明するための反応モデルや構造基盤を与えると期待される。

加納英明研究者
加納英明研究者が光科学技術振興財団で研究表彰を受賞(2008年3月6日)。

概要

光科学技術振興財団(理事長=晝馬輝夫・浜松ホトニクス株式会社 取締役社長)が、光科学に関する基礎的な研究又は光科学技術の向上に役立つ研究で優れた業績を上げた新進研究者に贈る研究表彰の表彰式が3月6日、静岡県浜松市で開かれ、加納英明研究者が受賞した。

受賞題目

スーパーコンティニューム光を用いた新しい分子イメージング法の開拓

研究概要

ラマン分光法は,生きた細胞内の分子分布やそのダイナミクスを,非染色・非侵襲・非破壊で観測することのできる,非常に強力な方法である.加納研究者は、スーパーコンティニューム光という新しい光源を,ラマン散乱光を増幅できるcoherent anti-Stokes Raman scattering (CARS)過程に応用し,生細胞を含む様々な生体試料を振動コントラストで可視化できる,新しい分子イメージング法の開拓を行った.

福間剛士研究者
(社)未踏科学技術協会 バイオ・ナノテクフォーラムの「高木賞」を授賞(2008年3月4日)。
第2回バイオ・ナノテクフォーラムシンポジウに、福間剛士研究者の発表に対して「高木賞」が授与された。高木賞は、(社)未踏科学技術協会 バイオ・ナノテクフォーラムが、本シンポジウム及び国際会議での最優秀論文発表に対して与える国際的な学術賞です。

受賞題目

「液中原子間力顕微鏡による脂質二重層/生理溶液界面現象の分子分解能観察」

研究概要

溶液中で原子分解能観察を可能とするAFM技術を開発し、それを用いてモデル生体膜と生理溶液界面で生じる水和層やイオン-脂質分子複合体のネットワーク構造を原子スケールの分解能で直接可視化した。これは生体分子の構造だけでなく、それと相互作用する水分子やイオンなども可視化できることを示す画期的な結果となった。

松崎政紀研究者
中枢神経細胞シナプス構造可塑性のタンパク質合成・神経成長因子依存性に関する研究成果がScienceに掲載されました(2008年2月28日)。

掲載誌

Science 319 (2008), published on line 28 February (ScienceExpress).

発表テーマ

Protein-Synthesis and Neurotrophin Dependent Structural Plasticity of Single Dendritic Spines

発表概要

グルタミン酸作動性シナプスにおける長期増強は学習・記憶の素過程であると考えられている。長期増強が起こる時、シナプス後部スパインの形態は肥大化するが、それがタンパク質合成を必要としているかは不明であった。今回我々は、スパインに対して、活動電位と2光子励起法によるグルタミン酸刺激を同期して繰り返して与えることで、刺激したスパインのみで、長期増強と形態肥大化が起こり、これは、脳由来神経成長因子の分泌とタンパク質合成を必要とすることを見出した。この結果は、神経回路網の中で、同期して繰り返し発火する細胞がある場合には、その細胞間の情報の受け渡し場所であるシナプスに特異的に、タンパク質合成依存的な形態変化が起こり、記憶が貯蔵されることを示している。

渡邉朋信研究者
さきがけ専任研究者の渡邊朋信研究者(研究実施場所:米国のUniversity of Massachusetts Medical School 生理学部)が大阪大学免疫学フロンティア研究センター 助教に就任しました(2008年2月1日)。

森田将史研究者
滋賀医科大学 MR医学総合研究センター 助教の森田将史研究者が、大阪大学免疫学フロンティア研究センター 助教に異動しました(2008年2月1日)。

松崎政紀研究者
東京大学大学院医学系研究科 助教の松崎政紀研究者が、准教授に昇任しました(2008年1月1日)。

喜多村和郎研究者
脳内の未標識ニューロンから選択的に記録する方法に関する研究成果がNature Methodsに掲載されました(2007年12月29日)。

掲載誌

Nature Methods, (2008) Vol.5, p61-67.

発表テーマ

Targeted patch-clamp recordings and single-cell electroporation of unlabeled neurons in vivo

発表概要

脳内で標識されていないニューロンから選択的にパッチクランプ記録を行う方法を開発した。パッチクランプの電極から蛍光色素を細胞外領域に注入し、ニューロンのネガティブ像(影)を2光子励起顕微鏡で可視化する。ニューロンの種類を細胞の形態から特定した後に、パッチクランプ電極を近づけて選択的に記録を行うことを可能にした(シャドウパッチ法)。この方法を用いることで、動物個体脳内の様々なニューロンから、長時間安定した記録を行うことができることを示した。さらに、同様の可視化法を用いて、脳内の単一ニューロンに電気穿孔法によって遺伝子発現を行うことを可能にした。すなわち、前もってニューロンを標識することなく選択的記録や選択的遺伝子改変が可能であることを示した。

秋山修志研究者
秋山修志研究者が日本生物物理学会で若手奨励賞を受賞(2007年12月22日)

概要

第45回日本生物物理学会年会の若手招待講演で研究成果を発表し、第3回若手奨励賞を授与された。

受賞題目

リアルタイムX線小角散乱でみたシアノバクテリア時計蛋白質の離合集散ダイナミクス

研究概要

シアノバクテリアは生物時計を備えた最も下等な生物で、3つの時計タンパク質(KaiA、KaiB、KaiC)をATP存在下で混合すると、KaiCのリン酸化状態が概日周期で振動する(Nakajima et al. 2005 Science 308, 414-415)。既に、各々の時計タンパク質の構造が解明されているが、時計タンパク質同士の会合した複合体構造が不明であるため、時計が動く仕組みを深く理解するには至っていない。その主な理由は、時計タンパク質が常に一定の複合体を保持しているのでなく、会合や解離を繰り返しつつ分子の形状・組成を時々刻々と変化させるためである(離合集散)。そこで本研究では、時計タンパク質の離合集散をX線小角散乱を用いてリアルタイム計測し、その振動過程に蓄積する時計タンパク質複合体の分子形状を検証した。その結果、主にKaiCがペースメーカーの役割を担っており、KaiCのリン酸化状態に応じてKaiAやKaiBをKaiCのC末ドメインに呼び寄せたり(会合)、また突き放したり(解離)しつつ離合集散タイミングを計っていることが明らかとなった。

金子智行研究者
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 助教の金子智行研究者が、准教授に昇任しました(2007年12月1日)。

喜多村和郎研究者
NIPS-JST 国際ワークショップ - From photon to mind -
Advanced Nonlinear Imaging and Fluorescence-based Biosensors
開催のお知らせ(岡崎カンファレンスセンター、2008年4月18-19日)
開催日: 2008年4月18日(金)― 19日(土)
開催場所: 岡崎カンファレンスセンター
参加費: 無料
ホームページおよび参加登録:http://www.nips.ac.jp/hsdev/iws2008/

主要テーマ

多光子励起顕微鏡の個体・生物応用、蛍光プローブの最先端、レーザー技術の最先端

主なシンポジスト

Helmchen, Fritjof (Switzerland)、Murphy, Timothy (Canada)
Portera-Cailliau, Carlos (USA)、Belousov, Vsevolod (Russia)
河西春郎(東京大学)、永井健治(北海道大学)
平等拓範(分子科学研究所)、菊池和也(大阪大学)

オーガナイザー

鍋倉淳一(生理学研究所)、岡部繁男(東京大学)、喜多村和郎(東京大学)

開催趣旨

多光子励起法の脳科学への応用は、個体および生体組織における微細構造および機能のダイナミックな変化を可視化することが可能となり、脳科学領域における大きなブレークスルーをもたらした。そのため、多光子観察技術の国内外での普及は急速に加速しつつある。しかし、現在、多光子技術を十分使いこなしている研究室は限れていることも現実である。多光子励起法の更なる普及のためには、いくつかの解決すべき技術的な問題が存在する。その中でも、緊急性を要する2つの点、1)本技術のin vivoおよびin vitro標本へのアプローチ技術およびその解析法、2)多光子励起に最適な蛍光化学物質・蛍光蛋白、および光活性化物質の開発および選択、について国内外の神経科学・生物学および化学分野の最先端研究者が一同に介し討論する場を提供する。さらに、多光子励起法のキーであるレーザー最先端技術についても討論をおこなう。
この研究集会では、それぞれの研究者の最新の成果を提供するばかりでなく、それぞれの研究室における問題点を明らかにし、更なる技術構築のための情報を共有する場にする。

上杉志成研究者
京都大学 化学研究所 教授の上杉志成研究者が、世界トップレベル国際拠点形成促進プログラムに採択された京都大学 物質―細胞統合システム拠点 教授を兼務することとなりました(2007年10月1日)。

中西淳研究者
(独)物質・材料研究機構 若手国際研究拠点 主任研究員の中西淳研究者が、世界トップレベル国際拠点形成促進プログラムに採択された(独)物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 若手独立研究員に異動しました(2007年10月1日)。

田川陽一研究者
東京工業大学大学院生命理工学研究科 准教授の田川陽一研究者が、東京工業大学 フロンティア研究センター 准教授を兼務することとなりました(2007年10月1日)。

小澤岳昌研究者
自然科学研究機構 分子科学研究所 准教授の小澤岳昌研究者が、東京大学大学院理学研究科 教授に就任しました(2007年10月1日)。

喜多村和郎研究者
大阪大学大学院医学系研究科 助教の喜多村和郎研究者が、東京大学大学院医学系研究科 助教に異動しました(2007年9月1日)。

「生命現象と計測分析」領域のH19年度新規採択者の決定
H19年度新規採択者(3期生)として、10名の研究者が採択され、10月1日から研究を開始しました。

王子田彰夫研究者
京都大学大学院工学研究科 助教の王子田彰夫研究者が、講師に昇任しました(2007年8月1日)。

小椋俊彦研究者
膜蛋白質TRICチャネルの構造と機能に関する研究成果がNatureに掲載されました。

掲載誌

Nature(2007)Vol.448,p78-82

発表テーマ

TRIC channels are essential for Ca2+ handling in intracellular stores

発表概要

TRICチャネルは、主に骨格筋や心筋細胞の細胞内小胞に存在し、小胞の電位変化を打ち消す役割を担っている。これまで、細胞内小胞の膜電位変化を打ち消す機構は不明であったが、今回の研究によりその分子実態を世界で初めて明らかにした。このチャネルは長さが100Åほどの砲弾型をしており、電子顕微鏡画像からの画像情報処理により3次元構造が解明された。この解析にあたり、さきがけ研究中に開発された新規アルゴリズムを適用することで、迅速な3次元構造の解析を可能とした。

桐野豊 徳島文理大学 学長・香川薬学部教授が、新たに、領域アドバイザーに就任されました。
渡邉朋信研究者
さきがけ専任研究者の渡邊朋信研究者が研究実施場所を東北大学 先進医工学研究機構から、米国のUniversity of Massachusetts Medical School 生理学部へ移しました(2007年4月20日)。

末田慎二研究者
九州大学 情報工学部 生命情報研究科 助教の末田慎二研究者が、准教授に昇任しました(2007年4月1日)。

小椋俊彦研究者
(独)産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門の主任研究員に昇任
小椋俊彦研究者が2006年10月1日付けで、(独)産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門主任研究員に昇任しました。

2期生10名がさきがけ研究を開始しました。
「生命現象と計測分析」領域の2期生10名が2006年10月1日から、さきがけ研究を開始しました。

中西淳研究者
(独)物質・材料研究機構 若手国際研究拠点 主任研究員に就任
さきがけ専任研究者の中西淳研究者が2006年10月1日付けで、物質・材料研究機構 若手国際研究拠点 主任研究員に就任しました。

中西淳研究者
日本分析化学会 第55年会にて、発表「光応答性基板上に形成した一細胞アレイを用いた細胞移動の顕微観察」に対してイノベーション賞を受賞しました(2006年9月20日)。

秋山修志研究者
XIII Internatinal Conference on Small-angle Scattering(国際小角散乱学会)にて、発表「Signal Transduction Pathway in Histidine Kinase and Response Regulator Comolex Revealed by Joint Usage of Crystallography and Small-Angle X-ray Scattering」に対して SAS Young Scientist Prize を受賞しました(2006年7月9日)。

上杉志成研究者
東京テクノ・フォーラム21のゴールド・メダル賞を授賞
「東京テクノ・フォーラム21」(代表=滝鼻卓雄・読売新聞東京本社代表取締役社長・編集主幹)が優れた業績を上げた新進研究者に贈る「ゴールド・メダル賞」の授賞式が4月12日、東京都内で開かれ、上杉志成研究者(京都大学化学研究所教授)が受賞した。

受賞題目

「有機化合物を基盤に生命現象を解明するケミカル・ジェネティクス研究」

研究概要

石油からつくった小さな有機化合物が人の命を救ったり、それがきっかけとなって生命の仕掛けが明らかとなることがある。上杉研究者の研究目標は、生体に劇的な変化を生む有機化合物を見つけ出して、それらを道具として生物や疾病の謎を解くこと。有機化合物を起爆剤としたこのような生物学研究はケミカルジェネティクスとよばれ、創薬を加速する基礎学問と考えられている。

楯真一研究者
広島大学 大学院理学研究科 教授に就任
さきがけ専任研究者の楯真一研究者が2006年4月1日付けで、広島大学 大学院理学研究科 教授に就任しました。

金子智行研究者
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 助手に異動
東京大学 大学院総合文化研究科 助手の金子智行研究者が、2006年4月1日付けで、東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 助手に異動しました。

楯真一研究者
第43回日本生物物理学会・札幌年会シンポジウム(2005年11月23日)
「インタラクトーム構造生物学の展開に向けて」で招待講演を行った。

発表テーマ

「動的蛋白質間相互作用研究のための磁気共鳴技術」

発表概要

私は、動的な蛋白質構造変化と機能との連関を直接捉えたいという興味で研究を進めている。今回の発表では、単独では安定な立体構造を持たない蛋白質が、過渡的に形成する立体構造により蛋白質間相互作用を担っているという現象を、基本転写因子TFIIEとメディエーター複合体サブユニットの相互作用において発見したことを報告した。もう1つの話題として、リガンド結合により誘導されるドメインの再配向(re-arrangement)を直接観測する新たなNMR技術とその解析例を報告した。従来のNMR技術では構造解析の対象とはなりえない高分子量蛋白質を対象として、溶液中でのドメイン再配向の定量的観測を実現する独自に開発した方法の重要性を示した。これは、さきがけ研究の中で構造解析技術として精密化、それを用いた応用研究の拡大を目指して進めている研究の成果である。