研究課題
1期生
2期生
3期生
■石坂 智 ■北野 晴久 ■黒田 隆 ■清水 明 ■村尾 美緒
固有ジョセフソン接合と超伝導共振器を用いた量子状態制御の研究
北野 晴久 研究者紹介ページへ
 近年、量子計算機に関する研究が盛んですが、数十ミリケルビンという極低温の実験は実用化に向けて障害となります。本研究では、高温超伝導体の固有ジョセフソン接合を用いた「量子ビット」の実現により、温度への制限の緩和を目指すと共に、非常に高いQ値を持つ超伝導共振器内のフォトンと、固有ジョセフソン接合系の量子ビットを相互作用させて、量子計算に必要な「量子もつれ合い」状態の実現を目指します。高温超伝導体が量子計算機へ応用可能なことが示されれば、実用化がさらに加速されるものと期待できます。
図1 本研究のねらい.高温超伝導体は超伝導層と絶縁体層が交互に積層した結晶構造を取り,ジョセフソン接合が原子スケールで形成されている.本研究では,この固有ジョセフソン接合を利用した位相量子ビットの実現と,超伝導空洞共振器内のマイクロ波フォトンとの「量子もつれ合い状態」の生成を目指している.
図1
図2 ジョセフソン接合の基本的な電流−電圧特性. ゼロ電圧でも有限の超伝導電流が流れることに注意.V=0とV≠0の状態間の遷移現象は,傾けた洗濯板状ポテンシャル中の古典粒子の運動と結び付けて理解することができる.V=0状態からV≠0状態への脱出は,クロスオーバー温度T0よりも高温では熱揺らぎ(TA過程),T0よりも低温では巨視的量子トンネル(MQT過程)が支配的となる.位相量子ビットでは,MQTが支配的な極低温でポテンシャル井戸内に形成される量子準位を量子ビットとして利用する.
図2
図3 高温超伝導体の固有ジョセフソン接合の物理的特徴.こうした特徴は量子情報分野への応用だけでなく,物性物理分野への新たな展開も期待させる.
図3
図4 本研究で作製した固有ジョセフソン接合素子のメサ構造と顕微鏡写真.
図4
図5 熱揺らぎが支配する温度領域でのスイッチング電流分布測定.(a)λJよりも十分大きい素子の場合,位相の空間変化の効果を取り入れた“大きい”接合モデルでないと実験結果を説明できない.
(b)接合サイズを小さくすると,臨界電流密度が極端に小さくなって「位相拡散」と呼ばれる領域に入り,スイッチング電流分布の幅が熱揺らぎのモデルから計算される脱出確率分布の幅よりも狭くなる現象が観測された.固有接合素子でMQTを観測するには,1μm以下の接合サイズと少なくとも103A/cm2以上の臨界電流密度が必要と考えられる.
図5
図6 固有接合ジョセフソン量子ビットとマイクロ波フォトンとの「量子もつれ合い状態」を生成するために考案した空洞共振器と,電磁界解析から求めた共振器内のマイクロ波電界分布.内蔵した金属チップの効果により「量子もつれ合い状態」の生成に必要な強電界を固有接合素子近傍に生じさせることが出来る.
図6
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