|
|
図5:ポテンシャルの形状が対称なInAlAs/InGaAs/InAlAs量子井戸構造のポテンシャル図
|
|
今後の私の研究では、これまでの実験結果を踏まえて、スピンの自由度を利用した様々な新奇な電子デバイスを提案、開発していきたいと思います。例えば、これまでには、図6に示すような共鳴トンネル構造(RTD,
Resonant Tunnel Diode)(ポテンシャル障壁の形が"山"型にあることがミソ)を用いると、ある特定のスピンをもった電子のみを透過させるようなスピンフィルターを実現させることが可能であるということを提案しました[2]。このデバイスは、ある種のダイオードとみなすことができ、従来のダイオードが、プラス或いはマイナスどちらかの電気しか通さないことに類似して、上向きか下向きかの一方のスピンを持った電子のみしか通さないといった、スピン自由度を利用した整流デバイス(ダイオード)を実現します(図7参照)。その他のトピックとしては、図8に示すように、InGaAs量子井戸基板上にナノスケールの精度で微細構造を作製し、その中での電子波の干渉の効果を調べることにより、ナノ構造中でのスピン−軌道相互作用の効果と制御について研究を進めていく予定です。これらの研究の詳細は、またの機会にご紹介します。 |
|
|
|
図6:三重障壁共鳴トンネル構造を利用したスピンフィルターの提案
(図中桃色、水色で示した部分はそれぞれp型、n型にドープされている)。
|
|
|
|
図7:図6で示された共鳴トンネルスピンフィルターにおいて理論予測されるI-V特性。(a)-(c)は、障壁層へのドープ量をいろいろと変化させた場合の計算結果。インセットはそれぞれのドープ量に対応するポテンシャル図。 |
|
|
|
図8:InGaAs量子井戸基板上にナノスケールの精度で作製した微細構造。
ナノ構造中でスピン−軌道相互作用が電子波の干渉にどのような効果を及ぼすかを研究する。 |
|
【参考文献】
[1] T. Koga, J. Nitta, H. Takayanagi, and S. Datta, Phys.
Rev. Lett. 89, 046801 (2002).
[2] T. Koga, J. Nitta, T. Akazaki and H. Takayanagi, Phys.
Rev. Lett. 88, 126601 (2002). |