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研究成果
第1期研究成果

プロテインメモリーを利用した低温高機能酵素のデザイン
田村 厚夫(神戸大学)
概要
 「望みの機能や構造を持ったタンパク質を、自由自在にデザインする」ことを最終目標として研究を行った。「望みの機能」には、自然界を超えた、あるいは自然界とは異なるタンパク質で実現する機能を含んでいる。タンパク質は20種類のアミノ酸が特定の配列で結合したヒモ状物質であり、このヒモは自動的に折り畳まれ、特定の立体構造を形成した後、初めて機能する。つまり、配列と構造機能には1対1の相関がある。そこで、アミノ酸配列を人工設計して「望みの構造機能」にすることを「デザイン」と称している。
 「望みの機能」として、本研究ではタンパク質分解酵素の低温(0℃程度)での高機能化を取り上げた。反応を低温で効率良く行うことが出来れば、有用であるばかりでなく、エネルギーを付加することなく反応が進行するため、省エネルギーにつながり、また水溶媒系で副産物を生じないなど環境にもやさしいことになる。
 具体的には以下の方法を組み合わせて用いることで、この目的に適う酵素のデザインを行った。


1) プロテインメモリー現象の利用:タンパク質(プロテイン)自身が、以前どんなタンパク質と結合していたかを記憶(メモリー)する現象がある。この現象を利用し、結合していた相手の履歴を辿ることで、合理的に酵素の構造機能を変化させる。
2) 試験管内高速進化法(進化工学)
3) 理論的予測:タンパク質の立体構造形成をシミュレーションする手法を、デザイン研究に適用し、望みの構造、ひいては機能となるようにする。
4) 新規固定化法:タンパク質分解酵素は、自分自身がタンパク質であるため、「共食い」を起こす危険がある。これを防ぐためには、酵素を固体につないでしまう(固定化する)と良い。ただし、固体が合成高分子では、環境にやさしいことにならないので、自然に存在するタンパク質分子を集合させ高分子にする手法を開発し利用する。

 この結果、酵素の活性、効率、安定性を向上させること、タンパク質の基本構造単位を新しい方法論でデザインすること、タンパク質の集合形態の制御に成功した。今後は、未だ断片的なこれらの成果を相乗的に組み合わせ、最終目標の「自由自在なデザイン」へ少しでも近付けるよう発展させて行きたい。
要旨
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