植物や微生物の光合成は、太陽エネルギーを使って高エネルギー化学物質を効率の良く作り出すシステムである。これを人工的に模倣することができれば、環境に優しい省エネルギー型化学プラントを構築することが可能となる。最近、光捕集複合体LH2を構成するタンパク質・色素複合体の立体構造が解明された(Fig.1)。太陽エネルギーを捕獲するための色素分子が環状に配列していることから、色素の配列とエネルギー移動のための励起子伝達の関係が重要視されているが、なぜ環状構造なのか?という疑問に対してまだ解答は得られていない。色素分子の環状配列を再現できればこの疑問に答えることができると期待される。しかし、従来の化学ではこのような色素分子の環状構造を作り出すことは困難であった。
そこで本研究では、DNAの分子認識を利用することで、色素分子を環状に配置した分子集合体の構築を目指した。DNAの二重らせん構造を形作っている核酸塩基間の特異的な水素結合に着目して、一本鎖DNAと色素分子の分子集合体を作製した。一本鎖DNAが鋳型となり、DNAの塩基配列に応じて色素分子を気水界面で配列できることがわかった。大きく分けて下記の成果が得られた。
1)環状DNAを鋳型としたアゾベンゼンの環状配列(Fig.2)
2)オリゴヌクレオチドを鋳型にしたアゾベンゼンの精密配列
3)DNAの伸長固定化
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