本研究では補欠分子ヘムを有するヘム蛋白質に焦点をあて、蛋白質内の天然のヘムを非天然の機能化ヘムに置換することにより、新しい機能の発現、あるいは機能の向上をめざした。
具体的には、酸素保持蛋白質であるミオグロビンに基質結合部位を導入し、酸化触媒(酵素)としての機能を付与し、天然ミオグロビンの300倍以上の活性を示す新しい生体触媒を得た。
また、電子メディエータをヘムに修飾することにより、ミオグロビンにおいて初めて分子状酸素の還元的活性化を達成した。
一方、ヘムそのものの骨格を異性体であるポルフィセン鉄錯体に変換することにより、ミオグロビンの酸素分子結合能を天然の2600倍に向上させ、一酸化炭素よりも安定に酸素錯体を形成する超酸素親和性ミオグロビンを創製した。
得られた成果は、水中での錯体・触媒化学の新展開ならびに有機合成を駆使した蛋白質工学への新しいアプローチを提唱し、環境に配慮した生体材料(触媒・センサー・医薬等)の開発手法に有意義な指針を与えるものと期待される。
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