新物質や新材料は、21世紀の重点研究開発課題であるとともに情報通信、環境・エネルギーなどの分野に必要な新製品やシステムを提供するためにも不可欠である。これまでの材料設計では結晶学、熱力学、量子化学などの原理や理論をもとにした組成-構造-物性の相関性が用いられてきた。
しかし、この指針は均一系あるいは単純な結晶系をもとにしているために、既存物質の機能向上のための同形異類物質の創出には威力を発揮しても構造制御によりもたらされる新物質・新材料の創製には無力である。
物質や材料の構造には非晶質のような無秩序状態から1次元・2次元・3次元の秩序性を持つ結晶状態があり、これに分子レベルから粒子レベルに至る形態的および組成的な繰り返しの秩序性の有無を考慮すると、無数の新物質・新材料が存在するといえる。
従って、原子レベルからマクロレベルまでの構造の秩序性と物性との関連を実験的・理論的に明らかにすることによって、画期的な新機能性物質・材料が生まれる可能性が高い。  

本領域「秩序と物性」は、色々な手法を用いて固体の構造を低次元化、非晶質化、あるいはハイブリッド化することで、原子からナノ・ミクロ・マクロに至る構造や組織上の秩序性の変化によりもたらされる物性や特性を調べ、構造秩序性と物性の関連を原理的に明らかにすることを通じて、高性能や新機能を示す金属・無機・有機・複合材料創出のきっかけを切り開くことを目標としている。既存の材料設計概念に捕われない独創的なアィデアを持つ研究者が、その発想を実験的に確かめ、未知分野に挑む積極的・意欲的な提案を期待したい。