さきがけニュース
「生体分子の形と機能」領域
蛋白質ジスルフィド結合をde novoに創生するための基本原理を解明
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戦略的創造研究推進事業「生体分子の形と機能」研究領域(研究総括:郷 信広)において、領域内でうまれた共同研究テーマとして、稲葉 謙次研究者(平成13年度採択)および林 重彦研究者(平成15年度採択)らは、大腸菌などの原核細胞におけるキノン分子に依存した蛋白質ジスルフィド結合創生のための基本化学原理を実験および理論的に深く追究いたしました。この成果は、米国科学雑誌「米国科学アカデミー紀要」(2006年1月10日号)に論文として掲載されました。 大腸菌中では、フォールディング途上の蛋白質に効率よくジスルフィド結合を導入するためDsbA-DsbB-ユビキノン酸化システムが存在します。すなわち、ユビキノン分子の強い酸化力が膜蛋白質であるDsbBの巧妙な仕掛けによりジスルフィド結合という形に変換され、ここで創生されたジスルフィド結合がDsbAを介して多くの基質蛋白質に受け渡されます。本研究では、DsbBのシステイン残基の一つがキノン分子と電荷移動錯体および付加生成物を過渡的に形成することで、DsbB中のキノン分子に依存したジスルフィド結合形成反応が速やかに進行することを実験および理論的に示しました。またこの過程において、DsbB蛋白間で高度に保存されたアルギニン残基の正電荷が必須の役割を有していることについても、提唱いたしました。 興味深いことに、本研究で提唱したキノン分子に依存したジスルフィド結合創生機構は、真核生物でみられるFAD (flavin adenine dinucleotide) 分子に依存したそれと多くの類似点が存在します。つまり、FAD分子を介したジスルフィド結合形成過程においても、酸化酵素中でシステイン残基とFADとの間で電荷移動錯体および付加生成物が過渡的に形成され、またその際、近傍に存在するNADP+などの正電荷が重要な役割を担っています。真核細胞と原核細胞の間で、それぞれ独立してジスルフィド結合創生システムが進化したにもかかわらず、その基本となる化学原理を共有していることは単なる偶然とは思えず、奥に潜む生物学的意義を感じずにいられません。 |
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