戦略的創造研究推進事業「生体分子の形と機能」研究領域(研究総括:郷 信広)における研究テーマの一環として、濡木理研究者(平成14年度採択)らは、「CCA付加酵素」、「tRNAプライマー」、および「ATP(アデノシン-3リン酸)」からなる複合体のX線結晶構造解析に成功し、CCA付加酵素が鋳型なしで特定のRNAを結合するメカニズムを解明して、その成果が英国科学雑誌「ネイチャー」(8月5日号)に掲載されました。
CCA付加酵素が、DNAなど核酸の鋳型なしで特定の配列のRNAを合成する機構は、仮説にとどまっており、未解明でした。濡木研究者らは、CCA付加酵素は、鋳型DNAの代わりに酵素のアミノ酸残基で構成された「タンパク質性の鋳型」によって、ATPなどの基質を固定し、tRNAの末端が伸縮することで、鋳型なしでも特異的にCCA配列を結合させることができることを明らかにしました。
この結果は、従来のタンパク質合成メカニズムの仮説を否定するものであり、生物学の教科書を塗り替えることになります。また、これまでにない非天然アミノ酸を含むタンパク質を合成する道を開くことにもつながり、タンパク質工学の分野に大きく貢献できると考えられます。
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