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  研究課題の紹介
鉄ニクタイド系における新規超伝導体の探索と線材化に関する研究

氏名
室町 英治 役職 理事
所属 (独) 物質・材料研究機構
研究室URL http://www.nims.go.jp/amlaml/
※所属・役職名は研究参加期間終了時点のものとなります。

研究実施の概要(終了報告書より抜粋)

1)実施概要

 層状鉄ニクタイド系、層状鉄セレナイド系を中心に、合成・新物質探索研究と線材化基盤研究を有機的連携を持って推進した。

 合成・新物質探索研究においては新規超伝導体の開発及び鉄系超伝導体の化学的解明を目指して、ニクタイド系及びセレナイド系を中心に、高圧合成技術等を活用して合成、探索、評価研究を行い、次のような結果を得た。1)高圧下で合成したTbFeAsO1-δ系の超伝導について、酸素欠損量とTcの関係を詳細に求め、それが酸素欠損量(キャリアー濃度)に対してパラボリックに変化すること、すなわち、アンダードープ、最適ドープ、オーバードープの領域が存在することを明らかにした。2)LaFeAsO0.85 (1111系)、AFe2As2(122系、A:アルカリ土類等)超伝導体に対して、高圧合成を用いて鉄を種々の異種遷移金属で置換し、不純物効果を検討した。特に非磁性元素Znの置換を綿密に行い、1111系に於いては、わずかのZn置換が顕著なTcの抑制効果があることを明らかにした。また、122系については、電子ドープ、ホールドープの両系について種々の不純物置換を行い、その効果を系統的、総合的に明らかにした。3)その他として、Sr4Sc2Fe2As2O6について、高圧下で合成をすすめ、系統的に酸素欠損を導入した試料の作成に成功した。また、LaFeAsO1-xHx系の高圧合成を行い、HドープによるTcの上昇を確認した。

  線材化基盤研究においては、鉄系新超伝導体の線材化技術の基盤を確立する、という目標の下に研究を進めた。鉄系超伝導体の線材化の手法として種々の候補があるが、最も可能性の高いと思われる、PIT(Powder-in-tube)法の基礎的検討を行った。特に超伝導体の合成が比較的容易と考えられる(Ba,K)Fe2As2(122)相を対象に金属管や組織について検討した。

 所定の組成比のBa(チップ状)、K(小片状)、FeAs(塊状)をグローブボックス内でTa管に挿入し、アーク溶解を用いてTa管を完全密閉した。このTa管をさらにSUS管にアーク溶解で完全封入した後、FeAsの融点以上の1150℃で30分の熱処理を行った。熱処理後、Ta管を取り出し、0.5-1mm厚のテープ状に加工後、再びSUS管に封入して上記の熱処理を繰り返してTaシースのテープ線材を作製した。Ta被覆材を剥がして得られたコア部について4端子抵抗法および磁化測定による臨界特性の評価を行った。WHH理論で外挿したHc2(0)は230Tに達し、またHirr(T)とHc2(T)との差は銅系酸化物ほどの大きな差が無く、強磁場超伝導体として優れた潜在能力をもつことが判った。
続いて銀管を用いたex situ法を適用した。上述した122相の原材料に、結晶粒の結合性を改善するためにAg粒子を添加し、BNルツボの中に入れ、さらにステンレス管に封入した。これをまず1050oCで熱処理して均一な混合物とし、次に1100oCで5分間熱処理して反応を起こさせた。このバルク材を乳鉢で粉砕して粉末とし、これを銀管に充填し、これを溝ロールならびにスウェージングマシンを使って径2mmのワイヤーに加工し、850oCで3、15、ならびに30時間熱処理した。本線材の臨界電流密度Jcを、4.2K、磁界中において通常の四端子抵抗法で測定した。その結果、4.2K、ゼロ磁界で104A/cm2という、鉄系超伝導線材としては当時で世界最高の臨界電流密度を達成した。しかしながらJcの磁界依存性は非常に大きく、10テスラでは1,100A/cm2にまで低下した。このような磁界印加によるJcの急激な低下は、これまでにも鉄系線材で報告されてきたものであり、超伝導結晶同士の接合性に問題があるためと考えられる。今後は、この結晶粒の結合性をさらに詳しくしらべるとともに、接合性を向上させるプロセス技術開発が必要である。



2)顕著な成果

1)PIT法による(Ba,K)Fe2As2線材開発

概要: (Ba,K)Fe2As2についてPowder-In-Tube(PIT)法により線材試作を進めた。あらかじめ超伝導体粉末を合成して、これを金属管に充填して加工をするex situ法で線材作製を進め、4.2K、ゼロ磁界で104A/cm2という、鉄系超伝導線材としては当時世界最高の臨界電流密度を達成した。

2)鉄系超伝導体に関する不純物置換効果の解明

概要:LaFeAsO0.85 (1111系)、AFe2As2(122系)に対して、高圧合成を用いて不純物効果を検討し、1111系においては、低濃度の非磁性元素のZnが顕著なTc抑制効果があることを発見するとともに、122系について、多種多様な不純物についてその効果を系統的、総合的に明らかにした。

3)高圧環境を利用した鉄系超伝導体への水素ドープ

概要:LaFeAsO1-xHx系の高圧合成を行い、HドープによるTcの上昇を定量的に明らかにした。


  



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