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  研究課題の紹介
薄膜法によるFeAs系およびその周辺超伝導物質の探索

氏名
向田 昌志 役職 教授
所属 九州大学 大学院工学研究院
研究室URL http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K002682/
※所属・役職名は研究参加期間終了時点のものとなります。

研究実施の概要(終了報告書より抜粋)

1)実施概要

研究の狙い
 鉄ニクタイド系材料;(1111)構造(REFeAsOF)、(122)構造(BaFe2As2)、(11)構造(FeSe)が銅酸化物超伝導体と同様に二次元伝導面からなる積層パターンを持つことに着目し、積層パターンを自在に操ることのできる(1)layer by layer エピタキシャル技術、(2)最適組成を高速に探すコンビナトリアル膜作製技術、また(3)GaAs系化合物半導体エピタキシャル膜作製経験や蒸気圧の高いTl系超伝導体膜作製技術等を活かし、薄膜による物質探索・高品質鉄系超伝導膜実現を目指す。特に図1に示すように、一枚の基板上に多彩な組成・構造を持つ材料を作製し、それを低温レーザー走査顕微鏡や走査型磁気顕微鏡等で超伝導転移温度等を高速に評価することにより、超伝導特性の微小領域評価を行う。その中で、転移温度の高い部分の微小領域X線回折、EBSP(方位解析)、さらにはマイクロサンプリングによる透過電子顕微鏡観察・制限視野回折による結晶構造解析と多種多様な方法で微小領域の組成・構造とその超伝導特性との一括評価を高速に行い、鉄ニクタイド系材料の全容を早期に明らかにできるようにすることを目的としている。

概要
 
当研究チームでは、レーザー蒸着法による高品質な薄膜作製とその必須条件の探求のために、グローブボックス等酸素の流入しない研究環境の整備と毒性のあるヒ素やセレン等が流出しない研究環境を整備しつつ薄膜試料の作製と構造解析、超伝導特性評価を進めた。しかし当初、酸化物基板上に作製した超電導薄膜の特性は、作製方法、あるいは、作製者によりバラつきがあり、物質本来の特性を議論できる薄膜かどうか疑わし状況であった。そこで、各種酸化物基板を用いて、超電導特性測定および微細構造評価を実施した結果、基板材料により超電導薄膜の成長、および、超電導特性が変化することが明らかになった。特に酸化物基板では、酸素が薄膜内に拡散していることを走査型組成分析(STEM-EDX)で明らかにし、酸素を含む基板での酸素の拡散という警鐘を鳴らし、酸素のないCaF2基板を用いた薄膜作製へと移行した。

  これらの薄膜作製・超伝導特性評価と並行して、コンビナトリアル膜実現時に向けて、微小領域の超伝導特性を非接触で迅速に評価する新規な評価手法として提唱していた、走査型レーザー顕微鏡、走査型磁気顕微鏡を従来の80Kほどの高い測定温度領域から、5Kほどの極低温動作への抜本的な装置改造を行った。これらの改造により当研究チームが作製している11系Fe(SeTe)やFe(TeS)系超伝導膜のようTcが10K以下の膜でも測定できるようになり、薄膜内微小領域の超伝導特性分布を短時間で可視化できるようになった。



2)顕著な成果

1)酸素を含まない鉄系超伝導薄膜の作製には、酸素の除去が不可欠であり、盲点となっていた酸素を含まない基板の使用が重要であることを見出した。これを国内外に報告することにより、鉄系超伝導膜の高品質化が大きく推進させることとなった。

概要:エキシマレーザーPLD法により各種酸化物基板上に作製されたFeTe0.5Se0.5薄膜について透過型電子顕微鏡を用い基板界面近傍の微細構造評価や組成分析を行ったところ、基板材料の違いにより、膜内部に拡散していく酸素量が大きく異なることを見出した。これにより、フッ化物系基板を用いること、フッ素の供給源とすること等の技術発展につながった。

2)鉄系超伝導体発見の東工大細野グループに続いて、ゼロ抵抗となる鉄系超伝導薄膜を日本で二番目に実現するとともに、Fe(SeTe)、Fe(TeS)系など11系超伝導膜作製に集中して電流輸送特性を明らかにした。

概要:FeSeTe系では日本で最初に、ゼロ抵抗の超伝導膜作製に成功し、またFeTeS系では世界で初めて、FeTeS超伝導体のエピタキシャル薄膜化に成功しTc=6K程度の膜を得た。その微細組織観察や米国ロスアラモス研究所の強磁場施設を用いて直接的な上部臨界磁場の測定を行った。またこの膜は4.2KでのJcとして1kA/cm2程度の値を得た。現在ではFe(SeTe)系でTc=16K、Jc =0.3MA/cm2@4.2Kを達成し、磁場中Jcの劣化も少ないことを確認。Fe(TeS)系では8Kのゼロ抵抗温度を持つ11系薄膜を実現しており、Jcの磁場角度依存性も明らかにしている。

3)磁気顕微法による超伝導薄膜中の高速特性分布評価技術の確立

概要:試料内のTCならびにJCの空間分布を定量的にかつ短時間で評価する手法を開発した。本手法は、非破壊・非接触で評価可能なことから、1)迅速なTCならびにJCの空間分布評価、2)試料形状による制限が少ない、さらに3) 透過電子顕微鏡による微小領域観察などや他の評価手法との複合化により、コンビナトリアルケミストリー化が容易であるという利点を有する。


  



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