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  研究課題の紹介
ナノブロックヘテロ重合による鉄ヒ化物系高温超伝導体の創製

氏名
野原 実 役職 教授
所属 岡山大学 大学院自然科学研究科
研究室URL http://www.physics.okayama-u.ac.jp/nohara_homepage/index.html
※所属・役職名は研究参加期間終了時点のものとなります。

研究実施の概要(終了報告書より抜粋)

1)実施概要

 層状の結晶構造は銅酸化物高温超伝導体と鉄系超伝導体に共通する特徴である。いずれも超伝導を担うCuO2層あるいはFe2As2層の間にスペーサー層(あるいはブロッキング層)と呼ばれる層間物質が挟まった構造を持つ。これはサンドイッチに例えることが出来る。パンにあたる部分が超伝導層で、ベドノルツとミュラーはCuO2でできたパンを、細野らはFe2As2でできたおいしいパンを発見した。この2種類よりも魅力的なパンは今のところ見つかっていない。限られたパンしか入手できない状況において、コックたちの腕の見せ所は具材の工夫にあると言える。すなわち、本研究課題「ナノブロックヘテロ重合による鉄ヒ化物系高温超伝導体の創製」のねらいは革新的な具材の発見である。結晶を構成するナノブロックをパンと具材にみたて、これらをヘテロに積層(重合)させることで、革新的な結晶構造を持つ新規超伝導材料の創製を目指した。

  上述の目標を達成するために「新物質開発に特化」した4つの研究グループを組織した。岡山大グループは「固体中における化学結合の形成・切断」を念頭においた化学的な物質開発を、東大新領域グループは「非自明な秩序相の融解」を念頭においた物理的な物質開発を担った。また東大物性研グループは酸素欠損の制御など「精密化学」を意識した物質開発を、理研グループは「高圧合成」を特徴とする物質開発を担った。また、チームから産出される純良単結晶を物理の出口にも向けた。すなわち分光イメージングSTMによる超伝導ギャップ符号変化の検出である。

本研究チームから多数の新超伝導体を発信することができた。Ca10(Pt4As8)(Fe2–xPtxAs2)5 (超伝導転移温度38 K)は、鉄系超伝導体のグループの中で3番目に高い転移温度を達成した。その層間物質は分子状As2の化学結合生成によって出来た革新的具材で、鉄系超伝導体に新たなサブグループを付け加えることになった。鉄系超伝導体のドープ系ではSr(Fe1-xPtx)2As2 (17 K)とCa(Fe1-xRhx)2As2 (14 K) を見出し、ドープした化学種に依存して電子相図が変化することを明らかにした。

 Ca(Fe1-xRhx)2As2ではc軸方向のAs-As結合の生成による格子コラプス転移に伴って、スピン揺らぎと超伝導が同時に消失することを見出した。122型構造の「非」鉄系ニクタイドでは研究初期の段階でBaRh2P2 (1.0 K), BaIr2P2 (2.1 K), SrIr2As2 (2.9 K)を発見し、122型構造が超伝導の宝庫であることを示した。SrPt2As2 (5.2 K) では超伝導が電荷密度波と共存することを発見した。ペロブスカイト構造から派生するニクタイドSrPt3P (8.4 K), CaPt3P (6.7 K), LaPt3P (1.5 K)では、白金が主役の超伝導体中でホウ炭化物 YPt2B2Cの10 Kに次ぐ高い臨界温度を達成した。化学ドープによる非自明な秩序状態の融解という観点では、金属絶縁体転移の臨界点における超伝導Ru1-xRhxP (3.7 K)、Ru1-xRhxAs (1.8 K)、RuSb (1.2 K) 、Ir三角格子のボンド秩序抑制による超伝導Ir1-xPtxTe2 (3.1 K) 、構造相転移の臨界点におけるソフトフォノン超伝導BaNi2(As1-xPx)2 (3.3 K) を見出した。MgB2関連構造ではSrPtAs (2.4 K) とSrNixSi2-x (2.8 K) がある。高圧合成からはHgxReO3 (7.7 K)と巨大保持力材料Sr5Ru5-xO15の発見という成果がでた。これらの成果は、国内学会や国際学会での招待講演や一般講演、国際的な学術誌を通して発表した。また新聞報道などにより広く社会にも発信した。



2)顕著な成果

1)鉄白金系超伝導体Ca10(Pt4As8)(Fe2–xPtxAs2)5 の発見

概要:白金ヒ化物を層間物質とする新物質において転移温度38 Kの超伝導を発見した。従来のイオン結合性の層間物質だけでなく、ヒ化物のような共有結合性の層間物質が存在することを示したこの成果は、鉄系超伝導体の物質開発を大きく前進させた。日本物理学会欧文誌の注目論文に選出。日経産業新聞など3紙でも報道された。。

2)RuP: 量子臨界点超伝導への非磁性ルート

概要:二元Ruリン化物RuPが約270 Kにおいて擬ギャップ金属から非磁性絶縁体への金属絶縁体転移を示すことを発見した。RuをRhで部分置換すると金属絶縁体転移が抑制され、T = 0で擬ギャップ金属相が消失する臨界領域で3.7 Kの超伝導が発現した。この結果は、従来の磁気的量子臨界点に加えて、非磁性量子臨界点が超伝導へのルートとなることを示している。

3)分光イメージングSTMによる超伝導ギャップ符号変化の検出

概要:分光イメージングSTMにより、鉄系超伝導体の超伝導ギャップが電子面とホール面で符号を変えるS+−波であることを指摘した。Science誌に掲載。低温物理国際会議を含む多数の招待講演。本研究チームが育成したFe(Se,Te)系の高品位結晶も、この成果の鍵となった。


  



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