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  研究課題の紹介
鉄系超伝導体のフェルミオロジーに挑む

氏名
寺嶋 太一 役職 主席研究員
所属 (独)物質・材料研究機構 環境・エネルギー材料部門
研究室URL http://samurai.nims.go.jp/TERASHIMA_Taichi-j.html
※所属・役職名は研究参加期間終了時点のものとなります。

研究実施の概要(終了報告書より抜粋)

1)実施概要

 本研究のねらいは、量子振動や角度依存磁気抵抗振動(AMRO)の観測により鉄系超伝導体のフェルミ面を直接的に明らかにし、その電子状態の解明につなげることである。殊に、ディスオーダーをもたらすドーピングによらず、高圧により超伝導を発現するとの報告がある122系AFe2As2(A=Ca, Sr, Ba, Eu)に研究を集中した。

主たる実施内容は以下の3点。

1)122系母物質BaFe2As2のShubnikov-de Haas (SdH)振動測定、過剰ホールドープに当たるKFe2As2のde Haas-van Alphen (dHvA)振動測定、角度依存磁気抵抗振動(AMRO)測定、サイクロトロン共鳴測定を行い、両物質の電子状態を詳細に調べた。
デツインした単結晶のSdH測定から反強磁性状態のBaFe2As2のフェルミ面を実験的に完全に決定した。LSDAのバンド計算はFeの磁気モーメントを過剰に見積もるにもかかわらず、フェルミ面を基本的に再現できることを明らかにした。過去の角度分解光電子分光で報告されたフェルミ面には見直しが必要なこと、いわゆるディラック電子が仮にあるとしても伝導への寄与は極めて限られたものであることなども明らかにした。一方、KFe2As2のフェルミ面についてはバンド計算の予想とあわず、恐らく計算でFe 3dの結晶場準位が正しく得られていないと思われた。さらに、質量増強(多体効果による有効質量のバンド質量に対する増強)はBaFe2As2で2−3倍であるのに対し、KFe2As2では主要フェルミ面で3−7倍の大きな値となり、KFe2As2における電子相関の重要性が裏付けられた。
更に、KFe2As2では鉄系超伝導体では初めてAMRO、サイクロトロン共鳴の観測にも成功し、前者からはフェルミ面の面内形状が明らかになり、後者からはバンド内、バンド間の電子間相互作用のいずれも無視し得ないことが示された。

2)EuFe2As2の交流磁化率、電気抵抗、磁気抵抗、ホール効果などの高圧下物性測定を行い、この物質の圧力誘起超伝導と電子状態について詳細に調べた。
バルク超伝導は磁気・構造相転移が消失する約25 kbarから約30 kbarまでの極めて限られた圧力域でのみ発現し、Eu2+モーメントの反強磁性秩序と共存することを示した。なお、磁気・構造相転移が消失する近傍の圧力では広い温度範囲で電気抵抗の温度依存性が温度の一次となる非フェルミ液体的振る舞いが観測される。圧力の静水圧性は重要なファクターで、固体圧力媒体を用いた静水圧性の悪い条件ではバルク超伝導は観測されないことが明らかになった。25 kbarにおける上部臨界磁場Bc2の温度変化を測定し、その解析からEu2+モーメントから伝導電子に働く交換磁場が100 T程度であることが明らかになった。また、Eu2+モーメントによるスピンディスオーダー散乱や異常ホール効果の大きさについて定量的に見積もった。

3)KFe2As2、LiFeAsについて上部臨界磁場Bc2の温度変化を測定し、WHH理論で解析した。いずれの場合も、磁場がc軸方向では軌道効果が支配的なのに対し、ab面内では常磁性効果が顕著に現れる。結果的に、Bc2の異方性が低温で減少することになる。



2)顕著な成果

1)BaFe2As2のフェルミ面を完全に決定

概要:BaFe2As2単結晶をデツインして、シュブニコフ=ドハース振動を測定し反強磁性斜方晶におけるフェルミ面を完全に決定した。局所密度近似のバンド計算がFeモーメントを過大に見積もるにもかかわらず概ね正しいフェルミ面を与えることを示した。

2)KFe2As2における電子相関の重要性を指摘

概要:KFe2As2単結晶のドハース=ファンアルフェン効果、角度依存磁気抵抗振動、サイクロトロン共鳴の測定を行い、そのフェルミ面が局所密度近似のバンド計算の予想と異なり、また質量増強も大きく、電子相関が重要であることを示した。

3)EuFe2As2の圧力誘起バルク超伝導の確証と詳細な高圧相図の決定

概要:EuFe2As2の圧力誘起超伝導がバルクであり、かつEu2+の反強磁性と共存することを示し、その詳細な高圧相図を決定した。さらに、上部臨界磁場を決定し、その解析から磁性超伝導体にとって重要なパラーメータである局在磁気モーメントから伝導電子への交換磁場を見積もった。


  



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