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  研究課題の紹介
鉄ニクタイド系化合物の高圧下における物性測定

氏名
高橋 博樹 役職 教授
所属 日本大学 文理学部
研究室URL http://w3p.phys.chs.nihon-u.ac.jp/~takahashi/index.html
※所属・役職名は研究参加期間終了時点のものとなります。

研究実施の概要(終了報告書より抜粋)

1)実施概要

 鉄系超伝導が新たに高温超伝導ファミリーのメンバーとなったことで、銅酸化物超伝導体を含む強相関電子系物質の物理学上の未解決問題の糸口が得られる可能性が増えた。すなわち物理学上の新しいパラダイムの創出が期待される。この大きな問題を解決するためには、純良の試料を合成し、超伝導特性をはじめとする電気的磁気的な精密測定を行い、理論的なモデルとの整合性を検証する必要がある。本研究では、この大きなテーマのうち、低温高圧下での基本物性を調べることにより、これらの手がかりを得ることである。超伝導メカニズム解明による「新概念」創製、すなわち基礎科学発展に寄与することを第一の目標とし、Tcの圧力効果から「新超伝導物質」合成の指針を得ることを第二の目標とした。

  我々のグループは、東京工業大学細野秀雄教授のグループにより発見された超伝導体LaFePOの圧力効果の共同研究をきっかけとして、鉄系超伝導体の研究を開始した。LaFePOの場合、層状構造を持つことから、銅酸化物超伝導体と同様に大きな圧力効果が期待できるのでないかと考え実験を行ったところ、Tcは2GPa の加圧で4Kから10Kまで非常に大きく上昇することがわかった。その後、2008年2月に東京工業大学細野秀雄教授のグループによって報告された鉄ニクタイド超伝導体LaFeAsO1-xFxTc = 26 K)の圧力効果を測定したところ、Tcが銅酸化物超伝導体を除く最高の43 Kまで上昇することが明らかになり、超伝導メカニズムのみならずどこまでTcが上昇するのかということに大きく関心が集まった。このようなことから、この物質系ではTcの圧力効果が大きいことが一つの特徴であると考えられ、より高いTcを持つ超伝導体の発見をめざし、また超伝導メカニズム解明につながる基礎データ収集を目的として、試料作成グループと連携をとりながら高圧下での物性測定を進めた。

 我々のグループの実験手法は、ピストンシリンダー装置およびダイヤモンドアンビルセル(DAC)高圧発生装置を用いて、高圧下での電気抵抗、磁化率測定およびX線回折測定を行うことである。低温高圧X線回折実験は、研究室のX線発生装置および放射光(PF, SPring-8)で行っている。圧力効果の利点として、元素置換効果の場合によく見られる、不純物や格子欠陥などの副次的効果を排除できる点がある。圧力を変数として物理量を測定する際に、不純物や格子欠陥の量は基本的に変化しないためである。また、研究の対象とした主な物質としては「1111系」、「122系」「11系」鉄系超伝導体である。試料は東工大細野グループ、東京大学為ヶ井グループ、NIMS高野グループから提供を受けている。1111系超伝導体のLaFeAsO1-xFx, SmFeAsO1-xFx,に対しては、我々のグループはTcの圧力効果を測定し、共同研究者の日本大学川上グループが高圧メスバウワースペクトル測定を、京都大学藤原グループが高圧NMR測定を行った。1111系超伝導体のCa(Fe1-xCox)AsFに対してはCo濃度を変化させながら圧力効果の測定を行い、CoドープのTcに対する影響を調べた。122系のBa(Fe1-xCox)2As2ではTcの圧力効果の測定を行い、122系Srサイトの電子ドープに成功したLa1-xSrxFe2As2に対してはTcの圧力効果の測定および結晶構造の圧力効果の測定も行った。11系ではFe(Se1-xTex), Fe(Se1-xSx)に対してTcの圧力効果および結晶構造の圧力効果の測定を行った。Fe(Se1-xSx)では高圧下で原子位置の決定まで行っており、Tcの圧力効果との関連を調べた。これらの結果より、鉄系超伝導における電子状態、磁性、および結晶構造の関係について考察を進めることができた。最近細野グループではFの代わりにHを置換元素とした、SmFeAsO1-xHx, Ca(Fe1-xCox)AsHや、122型超伝導体La(Co1-xFex) 2B2等の新物質を作製しており、これらの高圧実験を進めている。また、中国Zhejiang UniversityのMinghu Fang教授のグループと共同で (Tl,K)Fe2Se2についての高圧実験を進めている。まだ不明な点が多いが、特に磁性と超伝導の関係、構造との関係について圧力下で調べる予定である。



2)顕著な成果

1)1111系超伝導体Ca(Fe1-xCox)AsF, CaFeAsHの圧力効果

概要: CaFe1-xCoxAsFはCo置換によってTcが上昇するが、Tcの圧力効果からは、CaFeAsFが高圧下で最も高いTcを示すことがわかった。Co置換によりFeAs層に生じるdisorderによりTcの上昇が抑制されると考えられる。高いTcを得るためにはCaF層への元素置換によるキャリアドープが有効であることが示唆された。

2)11系Fe(Se1-xTex), Fe(Se1-xSx) の圧力効果

概要:Fe(Se1-xTex)のTcはx=0.5で最も高い値を示すが、圧力下ではx=0が最も高いTcを示す。FeTeは圧力下で構造相転移を示し、20GPaまで超伝導を示さない。またFe(Se1-xSx)のTcは圧力下で一旦減少してから上昇する。これを高圧下での構造変化とともに考察した。

3)122系電子ドープLa1-xSrxFe2As2の圧力効果

概要:Srサイトへのホールドープ超伝導体であるLa1-xSrxFe2As2Tcの圧力効果の測定を行った。Tcは圧力で減少し4GPa程度で消失する。同じ圧力領域で高圧X線測定からtetragonal-collapsed tetragonal転移が観測され、超伝導を抑制していると思われる。他の122系との比較をおこなった。


  



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