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  研究課題の紹介
固体化学と磁気科学手法による新高温超伝導材料物質の創製

氏名
下山 淳一 役職 准教授
所属 東京大学 大学院工学系研究科応用化学専攻
研究室URL http://sogo.t.u-tokyo.ac.jp/project/index.html#section8
※所属・役職名は研究参加期間終了時点のものとなります。

研究実施の概要(終了報告書より抜粋)

1)実施概要

 本研究課題では、“新規高機能超伝導材料物質の化学設計と合成”、“異方的電磁物性の解明と制御技術確立”、“新高温超伝導材料物質の創製”の3つの研究実施を計画し、鉄系超伝導体を含めて、次世代新高温超伝導材料の創製を最終的な目標としてきた。結果的に新超伝導物質開発、臨界電流特性評価、磁気異方性の定性的理解に留まり、次世代超伝導材料の創製にまでは至らなかった。

 新物質探索においては、(Fe2P2)(Sr4Sc2O6)を皮切りにブロック層にペロブスカイト型酸化物層をもつ物質を次々と発見し、これらが2種のグループ(Fe2Pn2)(AEn+1MnO3n-1) [M 22(n+1)n(3n-1)相]および(Fe2Pn2)(AEn+2MnO3n) [M 22(n+2)n(3n)相]に分類できるホモロガスシリーズであることを明らかにした。これらは、我々が10年ほど前に取り組んでいた層状酸化硫化物にヒントを得て開拓したものであるが、鉄ニクタイドにおいてはより大きなn、つまりペロブスカイト層が厚いものまで生成し、結晶構造としても新規な物質を数多く発見することができた。特に、ペロブスカイト型酸化物層のBサイトに適当な比の2種の元素を用いる手法の採用によって、価数や格子サイズの制御が可能となったことが多くの新物質の発見に結び付いた。但し、Tcの更新はなく、PnがAsの物質群ではブロック層の厚さによらずTcが40 K前後でFeAs層の超伝導は本質的には40 K級であることが示唆された。
この物質群のなかで最も高いTcは、(Fe2As2)(Ca4(Mg,Ti)3O8)の47 Kで、これは鉄系超伝導体としては1111相に次ぐ高い値である。なお、最初の(Fe2P2)(Sr4Sc2O6)はTc =17 Kであるが、これは今なおFeP層による超伝導体として最高の値である。また、最も厚いブロック層を有する228618相の新物質では超伝導層間距離が3 nmにおよぶなど、これら一連の物質群は結晶構造的、電子構造的に極めて2次元性が高いことが特徴である。これを傍証する結果として、一連の厚いブロック層を持つ新物質群の不可逆磁場、臨界電流密度がブロック層が厚くなるとともに系統的に低くなることを見出した。キャリアドープ状態が精密に制御できていないことや、ブロック層の導電性の違いを考慮に入れる必要はあるが、その低下の割合は銅酸化物超伝導体よりも緩やかであり、CuO2面よりもFeAs層の超伝導のほうがブロック層への浸み出しが大きいことが示唆する結果である。一連のブロック層にペロブスカイト型酸化物層を持つ新超伝導体では、酸化物層の元素の選択や層数の制御によって超伝導層であるFePn層の局所構造を制御できることがわかった。その結果、a軸長を3.71〜4.13 Åの広い範囲で制御でき、a軸長が4.05 Å以上の物質は超伝導を示さないことを見出した。このほかNiPn層とペロブスカイト型酸化物層を有する新物質の探索も行い4種の新超伝導体を発見し、なかでも(Ni2As2)(Ba3Sc2O5),はニッケルニクタイドとしては最も高いTc =4.5 Kを示した。

 将来の高機能結晶配向材料作製に向けた磁場配向研究においては、鉄ニクタイド系は全てc軸方向に磁化困難軸を有し、回転磁場を用いることによってc軸配向体が得らることが明らかになった、構成元素に希土類(RE)を含む物質群でREイオンの磁気異方性が支配的に磁場配向に関与する挙動を認め、またペロブスカイト型ブロック層を持つ物質群では遷移金属元素の選択により1 T程度の低磁場で結晶磁場配向できることが示唆された。



2)顕著な成果

1)

概要:ペロブスカイト型類縁構造の酸化物層をブロック層に持つ2種のホモロガスシリーズを発見し、約20種の物質が超伝導を示した。Tcは最高47 Kに達し、これは鉄ニクタイド系超伝導体では1111相に次ぐ高い値である。構成元素の選択やブロック層の厚さの制御の柔軟性がこの新物質群の特徴である。3 nmと非常に厚いブロック層を有する層状FeAs化合物においても40 K級の超伝導が観測されたことは、FeAs層単層の本質的な超伝導が40 K級であることを意味する。

2)

概要:ペロブスカイト型酸化物層をブロック層に持つ一連の新超伝導体群の臨界電流特性を評価し、ブロック層が厚くなるとともに不可逆磁場が低下することおよび磁束系の次元性変化を反映した不可逆磁場の温度依存性の変化という銅酸化物超伝導体と同様な傾向を持つことを明らかにした。

3)

概要:さまざまなブロック層をもつ鉄系超伝導物質における室温での磁化軸および磁気異方性決定因子を明らかにした。c軸方向に磁化容易軸をもつFeTe以外、すべての物質はc軸方向に磁化困難軸をもつ。FeAs層の磁気異方性が系の磁化軸を決めているが、ブロック層へのd電子系遷移金属イオンの導入が磁気異方性を増強させる手法として有効であることを明らかにした。


  



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