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  研究課題の紹介
鉄ニクタイド系高温超伝導体における臨界電流密度の高精度な評価

氏名
小田部 荘司 役職 教授
所属 九州工業大学 大学院情報工学研究院
研究室URL http://aquarius20.cse.kyutech.ac.jp/
※所属・役職名は研究参加期間終了時点のものとなります。

研究実施の概要(終了報告書より抜粋)

1)実施概要

 超伝導体が実際に利用されるためには、臨界温度が高いということも重要であるが、流すことのできる電流密度の最大値である臨界電流密度が大きいことが重要である。つまり超伝導体が他の材料と異なるのは、大きな電流密度を抵抗ゼロの損失無しの状態で流すことができることである。現在のところ鉄系超伝導体は臨界電流密度が低くこのままでは実用材料としては使えない。そこで、本研究ではまず臨界電流密度の正確な測定を行い、そしてなぜ臨界電流密度が低いのかということを明らかにし、これを製造プロセスに活かすことにより臨界電流密度の改善を図ることを目的にした。併せて将来どのくらいまで臨界電流密度を向上させることができるかどうかを、凝縮エネルギー密度を正確に評価することにより判断した。

 まず臨界電流密度の正確な測定であるが、単結晶でない試料の場合には、粒内と粒間の臨界電流密度の大きさが大きく異なるために、通常の磁化法から臨界電流密度を測定すると意味の無い値を評価してしまう。そこで、本研究では複数の方法を使って粒内と粒間の2種類の臨界電流密度を正確に分離して測定できる方法を確立した。この方法を利用して線材開発の際にどのように臨界電流密度が改善されているかということについて情報を得ることができるようになった。

 次に凝縮エネルギー密度の評価をおこなった。臨界電流密度は凝縮エネルギー密度、ピン濃度、ピン体積、ピン効率の積に比例する。したがって、凝縮エネルギー密度を正確に測定することにより、将来どのくらいまで臨界電流密度が向上するかどうかを判断できる。ここでは重イオン照射により人工的に作られた欠陥によるピン止めによる臨界電流密度特性を解析して、鉄系超伝導体における凝縮エネルギー密度の評価をおこなった。

 さらに、これらの知見を生かした線材開発をおこなった。研究のごく初期の段階から世界初のSm-1111系の線材を発表し、最終的にはBa-122系において4.2Kで180Aの臨界電流を持つ線材を開発した。



2)顕著な成果

1)粒内と粒間の2種類の臨界電流密度の正確な測定方法の確立

概要:焼結法で作られる鉄系超伝導体は多結晶であり、粒内では高い臨界電流密度があるものの、粒間では臨界電流密度が制限される。これらの大きさは100倍から1000倍にもなり、これを正確に分離して測定できる方法を確立した。その結果、粒内は1011A/m2におよぶような高い臨界電流密度があるものの、粒間は108 A/m2程度とかなり低い値であることを確認した。

2)鉄系超伝導体の凝縮エネルギー密度の評価

概要:臨界電流密度は凝縮エネルギー密度、ピン濃度、ピン体積、ピン効率の積に比例する。したがって、凝縮エネルギー密度を正確に測定することにより、将来どのくらいまで臨界電流密度が向上するかどうかを判断できる。そこで鉄系超伝導体において評価をおこなった。その結果、凝縮エネルギー密度は従来の銅系酸化物超伝導体と同程度の大きさを持ち、さらに異方性が小さいことから臨界温度付近まで高い値を保つよい性質を持つことを明らかにした。

3)鉄系超伝導における線材の開発

概要:超伝導材料を実用的な応用に用いるためには線材化が不可欠である。ここでは数種類の鉄系超伝導体において線材化を試み、最終的に臨界電流が4.2Kにおいて180Aにおよぶ線材の開発に成功した。


  



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