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山本チーム・谷口グループ・村島 隆浩 特定助教、谷口 貴志 准教授の研究成果が、" Europhysics Letters"に掲載されました。

研究者: 村島 隆浩(京都大学大学院工学研究科・特定助教)
      谷口 貴志(京都大学大学院工学研究科・准教授)

掲載日: 2011年9月15日
掲載誌: Europhysics Letters


説明文:

  村島 隆浩 特定助教、谷口 貴志 准教授ら(山本 量一 チーム)は、計算流体力学法と高分子動力学法の組み合わせによる「高分子流体のためのマルチスケールシミュレーション法」を用いて、円筒の周りを流れる高分子溶融体の複雑な流動挙動を再現することに成功しました。
  私たちの身の回りで使われる製品は、プラスチックに代表される高分子系材料で作られています。高分子系材料は分子鎖が長く(分子量が大きく)、それらが複雑に絡み合っているため製品に十分な強度を持たせることが可能になります。プラスチック製品は、高温で溶融した高分子材料を金型に流し込む「射出成形」という方法で作られますが、金型といった複雑な流路の中で高分子が流体として、どのような挙動を示すかを理解することは、材料や製造プロセスの設計を行う際に非常に重要です。しかし、これまでは(1)工学的に重要な高分子は分子量が大きく、絡み合いがあるために高分子鎖の計算流体力学シミュレーションの計算負荷が大きいこと、(2)マクロスケールとミクロスケールを組み合わせたマルチスケールシミュレーションは、高分子鎖の状態が流れに沿って同じである場合に限られていたこと――の2点から現実の高分子材料の問題に広く適用できませんでした。
  本研究チームは今回、個々の流体粒子の計算負荷を軽減するモデルで絡み合い高分子鎖をシミュレーションし、マクロな計算流体力学シミュレーションに埋め込むことで、流体とともに流れるシミュレーション法の開発に成功しました。具体的には、ミクロスケールでは複雑に絡み合った高分子液体が、マクロなスケールの円柱周りを流れる際の流動挙動の解析や予測、またミクロスケールで発生する高分子の絡み合い状態との関係を明らかにしました。今回の成果は、現実の高分子材料のマクロな流動物性を、高分子鎖のミクロな性質から直接予測可能な方法を世界で初めて提案・実装したものであり、計算科学と物質科学の両分野において非常に大きな進歩で、2012年に完成するスパコン「京」を利用することにより、大規模なシミュレーションも可能にする画期的な成果です。
  今後、新機能性材料の開発や物質科学のさまざまな分野に応用できるものと期待されます。







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