独立行政法人科学技術振興機構

トップ

山本チーム
山本 量一教授、安田修悟特定助教が
高速振動する平板間の高分子液体の動きを新開発の「マルチスケールモデリング」で解析

山本量一
(京都大学大学院工学研究科化学工学専攻・教授)      
安田修悟
(京都大学大学院工学研究科化学工学専攻・特定助教)


概要:        
JST目的基礎研究事業の一環として、京都大学 大学院工学研究科の山本 量一 教授と安田 修悟 特定助教らは、計算流体力学法と分子動力学法の組み合わせによる新しい「マルチスケールシミュレーション法」を開発し、高速振動する平板間の高分子溶液の複雑な流動挙動を解析することに成功しました。           
 身近にある製品の多くにソフトマター(コロイドや高分子、液晶など)が含まれています。ソフトマターの特徴の1つは、その多くが固体的性質と流体的性質の両方を兼ね合わせていることです。物質の流動挙動をコンピューターでシミュレーションする場合、これまでは計算流体力学法や分子動力学法が別々に用いられてきました。計算流体力学法では、物質の力学特性をあらかじめ関数化してシミュレーションに用います。目的物質の力学特性や流動状態があまり複雑でない場合には有効ですが、高分子溶液の力学特性は一般に複雑であり、流動状態も高速振動する平板間では複雑になります。一方、分子動力学法は物質を構成する分子の構造をモデル化するもので、物質の力学特性や流動状態が複雑であっても有効です。しかし、物質中の分子の運動を全て計算するためには膨大な計算量を要し、今回のように分子の大きさに比べてはるかに大きなスケールの変動が問題となる場合には、分子動力学法を用いることは困難でした(わずか1グラムの物質のシミュレーションに、最も楽観的な予測でも100年はかかる見込みです)。           
 本研究グループは今回、計算流体力学法と分子動力学法をハイブリッドすることによって、それぞれの方法が持つ欠点を解決する流動挙動のマルチスケールシミュレーション法を開発しました。そして、この方法によって、ソフトマターのうち、ハードディスクやマイクロモーターなど高速稼働部を有するナノ・マイクロ装置における液体潤滑材のような、高速振動する平板間の高分子溶液の複雑な流動挙動を解析することにも成功しました。この成果は、新しい機能性材料の開発に貢献し、物質科学のさまざまな分野に応用できるものと期待されます。           
 研究成果は、2009年4月20日(英国時間)に欧州の物理学雑誌「Europhysics Letters (EPL)」のオンライン速報版で公開されます。        




Copyright(c) Japan Science and Technology Agency All Rights Reserved.