水の循環系モデリングと利用システム

 

第5回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

砂田憲吾研究チーム


P016 持続的な流域水政策シナリオ作成の目的と気候モデルによる
気候変動外力評価,我が国首都圏河川流域の水政策の
歴史的経緯(A-1,A-2)
P017 洪水問題が中心となる河川流域での水政策シナリオの提示(B-1)
P018 洪水問題もしくは水不足問題が中心となる河川流域での
水政策シナリオの提示(B-1,B-2)
P019 水不足問題もしくは水質問題が中心となる河川流域での
水政策シナリオの提示(B-2,B-3)
P020 地下水利用と持続的保全政策シナリオの提示とアジア地域における
水管理のためのナレッジマイニングシステムの開発(C-1,C-2)


 
P016 持続的な流域水政策シナリオ作成の目的と気候モデルによる
気候変動外力評価,我が国首都圏河川流域の水政策の
歴史的経緯(A-1,A-2)
砂田憲吾(山梨大学大学院),藤田光一(国土技術政策総合研究所),鬼頭昭雄(気象研究所)

 本研究では、アジア地域等の水問題解決への貢献をめざし、湿潤地帯から乾燥地帯にわたるアジア地域において条件の異なる典型的な水問題を抱える9河川流域を選び、気候変動の影響を考慮しながら、それぞれの流域での水問題の実態を構造的に把握・分析して、問題解決のための水政策シナリオの提言を目的とした。まず、全球気候モデルを用いたシミュレーションにより、地球温暖化に伴う河川流量の将来変化予測を行った。河川流量の予測では降水分布の予測はきわめて重要であり、人間生活や産業に大きな影響を及ぼす極端現象(たとえば洪水と渇水)の変化の将来予測が問題となってきており、それらは時間・空間的に解像度の高いデータでないと表現できない。そこで、気象研究所で開発した高解像度(約60km格子)全球モデルによる温暖化実験を行い、河川流量の将来変化を調べ、極端現象に主に焦点を当てた解析を行い将来流量の推定を提供した。我が国の首都圏河川流域では、高度成長期に急激な人口流入と都市域の拡大に伴い様々な水政策が実行された。それらの水政策を整理・総括し、当時首都圏河川流域が置かれていた状況および経験した変動外力(人口変動に起因するもの)との関係から、水政策の効果発揮の条件等を抽出し、その普遍性、個別性を評価し、モンスーン・アジア地域等への適用可能性を議論した。

 
P017 洪水問題が中心となる河川流域での水政策シナリオの提示(B-1)
砂田憲吾・大石哲・宮沢直季(山梨大学大学院),吉谷純一(土木研究所),
小山内信智(国土技術政策総合研究所)

 長江流域の治水対策における遊水地の管理運用について、洞庭湖地区を事例として遊水地の住民移転の推進方策、洪水被害補償の実態の調査と分析、農業政策などの他政策との関連性の分析結果を、タイチャオプラヤ川流域、日本利根川流域などと比較分析し、遊水地運用方策の海外技術移転の可能性と必要条件を提示した。メコン川流域においては、丹治CRESTの成果を参照しつつ目標の重複を避け、深く議論されていない流域全体スケールでの問題の抽出と将来に向けてのその対応の方向性を検討した。研究では人口増、水需要などの流域での基本的な水課題を理解した上で、特に、流域の基盤を構成する「河道」と代表的な「生態環境」に注目し、より持続的な国際河川管理の方向について詳しい考察と施策案の提示を行った。ブランタス川流域では、人口が急増し、経済的にも発展したが、激しい土砂移動によってダム堆砂が急激に進行し、利水上の問題が生ずる一方、ダム下流では土砂供給量の低下や砂利採取に伴う河床低下が著しく、河川構造物が被害を受けている。研究では、社会条件と自然条件の整理、流域水問題の抽出、問題解決のための土砂生産源調査手法の有効性の確認を行った。以上をもとに、水・土砂管理に関する問題解決のための新しい調査手法および水政策シナリオの策定を行った。

 
P018 洪水問題もしくは水不足問題が中心となる河川流域での
水政策シナリオの提示(B-1,B-2)
吉川勝秀(日本大学),中山幹康(東京大学大学院),北村義信(鳥取大学)

 チャオプラヤ川流域においては、稲作農耕から都市が発展したモンスーン・アジアの多くの都市の代表として、特にタイ国バンコク市域での治水対策について、土地利用面での対策を含む総合的な治水対策について検討した。また、共に大河川の氾濫原に急速に都市化したバンコク首都圏の東郊外流域と、我が国の中川・綾瀬川流域の2つの流域で講じられた総合的な治水対策の有効性・妥当性の評価を行った。小アラル・シルダリア流域では、中下流域における灌漑農地の水不足・塩類化とその対策、上下流間の利水競合と調整、小アラルの保全とデルタ地域の環境・生態系保全の3つの大きな問題にあることを指摘した。中下流域における灌漑農地の水不足・塩類化とその対策では、二次的塩類集積防止のための水管理の提案を行い、上下流間の利水競合と調整では、ソ連崩壊後の上下流間の利水競合の分析と、今後関係国が取り得る水政策シナリオを整理した。チグリス・ユーフラテス川流域の水問題に関しては、「専門家会合」を複数回開催し、正規の外交交渉である「トラック1」を有意に補完および強化することが、研究者による「トラック2」活動により可能であることを例示した。特に、科学的解析から「最適な水資源の消費量」が国レベルで存在すること、「イシューのパッケージ化」の手法が国際河川に於ける流域国間での交渉を推進し得るとの知見を得た

 
P019 水不足問題もしくは水質問題が中心となる河川流域での
水政策シナリオの提示(B-2,B-3)
村上雅博(高知工科大学),藤木修・南山瑞彦(国土技術政策総合研究所),
滝沢智(東京大学大学院)

 ヨルダン川流域では、アジア国際河川流域で最も人口増加率が高く、構造的な渇水問題を抱える上に気候変動の影響を強く受けている。研究では政策目標のターゲットを20年後の2020年に設定して実施したヨルダンの水資源管理マスタープランをベースに、CREST研究の最新の成果である60km格子 MRI-AGCM(気象研究所モデル)の超長期(50年)降雨・流量変動予測の結果を組み入れた持続的な政策シナリオと開発戦略モデルを示した。ガンジス川流域の人口は約3億6千万人にもなる。河川水の利用用途は、上水、農業用水の供給だけでなく、宗教上重要な河川として、人々は聖なる川での沐浴を行っている。しかし、急激な人口増加により、河川の水質汚濁が問題化している。研究では巨大都市デリーをもつガンジス川主要支川のヤムナ川流域での新たな系統的で効果的な調査を実施し、その結果に基づく水管理政策シナリオを提示した。サイゴン・ドンナイ川流域において、ドンナイ川上流では、流下につれて食品加工工場などからの排水が直接放流されるなどの問題がある。一方、サイゴン川上流にあるヨウティン貯水池では、養殖漁業が盛んとなり、汚濁物質の流入量が増えている。水質調査では、乾期に貯水池の底部で溶存酸素がほぼゼロとなることも示された。下流域では、ホーチミン市からの汚水が未処理のままサイゴン川に流されており、深刻な水質汚濁を引き起こしている。これらの改善のためのシナリオを提示した。

 
P020 地下水利用と持続的保全政策シナリオの提示とアジア地域における
水管理のためのナレッジマイニングシステムの開発(C-1,C-2)
岸田弘之(国土技術政策総合研究所),砂田憲吾・大石哲(山梨大学大学院),
吉川勝秀(日本大学),村上雅博(高知工科大学)

 地下水の利用について、問題が深刻化しているベトナムの紅河(ハノイ)平野、メコンデルタ、ホーチミン平野、タイのチャオプラヤ平野、およびバングラデシュとインドにまたがるガンジス平野を取り上げた。研究では、まずそれらの地域の地下水の賦存状況、その利用と過度の汲み上げによって生じた障害、さらにその防止のために採られた地下水保全政策を歴史的な経緯とともに社会経済的側面を明らかにした。その上で、今後地下水資源を持続的に有効に活用するため、管理し保全するための施策について考察した。KMS(ナレッジマイニングシステム)の構築として、本研究で行われたアジアの代表的な河川流域についての水問題の分析・評価、影響評価、対策・政策シナリオの提示や首都圏河川流域の水政策分析、さらに水政策適用という観点からのこれら流域の横断比較を踏まえ、アジア向け流域水問題解決に資する二種類の経験・知識情報集約システムの開発を行った。ひとつは、従来国内外で展開された水政策・マスタープランも加えて、課題項目別での事例参照が可能な方法である(Excel型KMS-1)。もう一つはクロスリレーショナルデータベースとGISを用いて水課題、水政策を参照するシステムを構成し、その機能や有効性について検討した(wiki型KMS-2)。





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