水の循環系モデリングと利用システム

 

第4回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

砂田憲吾研究チーム


P046 持続的な流域水政策シナリオ作成の研究目的と気候モデルによる
気候変動外力の評価(A-2)
P047 洪水問題が主なテーマとなる河川流域での水政策シナリオの作成(B-1)
P048 水不足問題もしくは水質が主なテーマとなる河川流域での
水政策シナリオの作成(B-2,B-3)
P049 人口変動に起因する変動外力の評価(A-1)
P050 水質問題が主な河川流域での水政策シナリオの作成(B-3)とアジア地域に
おける水管理のためのナレッジマイニングシステムの開発(C-1,C-2)


 
P046 持続的な流域水政策シナリオ作成の研究目的と気候モデルによる
気候変動外力の評価(A-2)
砂田憲吾(山梨大学大学院)、鬼頭昭雄(気象研究所)

 本研究では急激な人口増加と開発に伴う深刻な水問題が顕在化しているモンスーン・アジア地域の水問題解決への貢献をめざしている.湿潤から乾燥地帯にわたる多様なアジア地域において,典型的な水問題を抱える8河川流域を対象に水問題の実態を構造的に把握・分析し,地球規模の水循環変動を考慮しながら,問題解決のための政策シナリオの提言を目的としている.また,統合的水資源管理を実現するために知識と経験を集約するナレッジマイニングシステムも開発する.気候変動研究グループは,河川流量に対する大気モデルの解像度の影響を調べるため,水平解像度20km,60km,280km格子相当の3つの解像度の大気モデルを使った現在気候再現実験を行った.その結果,60km格子モデルは280km格子モデルに比べて精度の高い河川流量の再現を期待できることが分かった.また,河川流量に対する温暖化の影響を調べるため,気象研究所で開発している高解像度全球大気大循環モデル(水平解像度60km格子相当)を使って,21世紀中頃の河川流量の予測実験を行った.その結果,長江やメコンでは平均流量も月最大流量も共に増加すること,ユーフラテスでは月最低流量が著しく減少しているが,アムダリアでは年平均流量と月最低流量が増加し,渇水が緩和する傾向にあることなどが得られた.

 
P047 洪水問題が主なテーマとなる河川流域での水政策シナリオの作成(B-1)
砂田憲吾,大石哲,宮沢直季(山梨大学大学院)、吉谷純一((独)土木研究所)、
小山内信智(国土技術政策総合研究所)、吉川勝秀(日本大学)

 長江研究グループは,長江流域では治水対策として遊水地の建設が行われてきた.しかし,洞庭湖は分洪区に指定されているにもかかわらず,輪中堤建設・干拓が進行し,面積が減少している.遊水地を効率的に運用するために,水害補償制度と組み合わせた土地利用管理施策を提示し,これらの政策の他国への適用性を検討した.メコン研究グループは,メコン河下流域の持続可能な漁業資源管理のために,トンレサップ生態系の魚種を生態学的に分類するとともに,漁獲量に対する水文学的インパクトを評価するためのモニタリング指標として水文生態学的指標(HEI)を開発し,持続可能な内水漁業のための環境維持シナリオ作成を進めている.また,大流域に適用可能な流出モデル(YHyM)と土砂動態モデルの結合により,メコン河流域の土砂動態を数値解析的に検討し,全川的な河道管理施策を議論している.ブランタス研究グループは,1990年のクルド火山噴火に伴う火口湖溢流型ラハールのブランタス河への流入土砂量を推定している.

 
P048 水不足問題もしくは水質が主なテーマとなる河川流域での
水政策シナリオの作成(B-2,B-3)
中山幹康(東京大学大学院)、北村義信(鳥取大学)、
南山瑞彦(国土技術政策総合研究所)、
滝沢 智(東京大学大学院)、村上雅博(高知工科大学)

 シルダリア研究グループは,国際河川であるシルダリア川流域全般の水需要,流域関係国の水政策,水環境の現状把握・将来動向の評価を行い,水・環境問題解決のために水政策シナリオの提案をめざしている.本流域で最も重視すべき農業の実態と今後の用水需要について,これまでの現地調査の結果をもとに議論した.その結果,農地排水の塩分濃度(EC)は各地点の河川の2〜3.5倍であり,河川の塩分濃度はさらに増加する危険性が大きいこと,水田輪作の畑地における諸因子は塩類集積の危険性が高いこと,などが示された.ユーフラテス研究グループはティグリス・ユーフラテス川の最末端国であるイラクの水文分析を行い,水需要水準の予測が可能であること,それが水利用をめぐる国家間交渉を潤滑に進める上で有効な役割を果たすことを示した.ガンジス研究グループは,ガンジス川流域の水質問題に重点をおいた水政策シナリオを提示するために,ニューデリーのスラムで現地調査を実施した.その結果,スラムにおいても都市部の高,中,低所得者と同程度の排出負荷であったことを確認し,汚濁源の原単位を把握することができた.サイゴン研究グループは,サイゴン・ドンナイ川流域の水資源と水利用の現状を明らかにするとともに,水質汚濁が水利用に及ぼす影響,水管理の有効性について検証している.ヨルダン研究グループは,人口増加率の高いヨルダン川流域において,海水淡水化,水力発電複合計画を含めた長期的な政策シナリオを示している.

 
P049 人口変動に起因する変動外力の評価(A-1)
吉川勝秀(日本大学)、藤田光一(国土技術政策総合研究所)

 首都圏河川流域研究グループは,「外力」である人口急増と都市用水の需要増の実態,外力により生起した渇水事象,政策推進の駆動力に関係する住民の渇水問題への認知度,1930年代からの各種水政策の適用変遷と相互関係,関連要因としての地盤沈下と水質汚濁への対応および利根川の流量減少について整理し,これらを俯瞰的に分析して,水政策の適用の仕組みを客観的に検討する上で有効な知見を得ている.チャオプラヤ研究グループは,人口が急増する都市を含む流域圏での総合的・体系的かつ実践的な治水シナリオを設計・提示し,日本の東京首都圏の東郊外の中川・綾瀬川流域,タイのバンコク首都圏の東郊外流域,さらにはそれらの流域圏を含む大河川である利根川流域やチャオプラヤ川流域での計画策定や実践を踏まえたシナリオの検証を行っている.

 
P050 水質問題が主な河川流域での水政策シナリオの作成(B-3)とアジア地域に
おける水管理のためのナレッジマイニングシステムの開発(C-1,C-2)
村上雅博(高知工科大学)、高柳淳二(国土技術政策総合研究所)、
吉川勝秀(日本大学)、砂田憲吾,大石哲(山梨大学大学院)

 沖積平野の地下水研究グループは,モンスーン・アジアにおける洪水氾濫原平野の地下水管理政策シナリオ立案に向けて,地下水の流域比較を行っている.特にガンジス川下流平野では地下水の砒素汚染が問題となっている.ナレッジマイニングシステム(KMS)研究グループは,政策立案者等が流域における水関連の政策シナリオを立案する際の支援となる事例集を作成している.システムは政策実施環境,組織の機能・活動・情報の共有,水問題に関する現状・課題・評価の3カテゴリー,45項目で構成されている.また,本研究で得られた各流域の水問題と水政策シナリオの一覧表により,アジアの主要な地域での各水課題とそれらへの対策案の効果的な比較と包括的な把握方法を提示している.さらに,テキスト形式のデータベース内で,キーワードに関してWikiの技術そのほかを用いてデータベース間の語句が相互リンクすることで知識探索をする新たな方法も実装中である.





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