水の循環系モデリングと利用システム

 

第4回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

神田学研究チーム


P011 都市-大気圏における広域水・エネルギーフラックスの実態把握
P012 東京都心周辺における積乱雲の発生特性
P013 屋外模型都市を用いた気象実験と都市エネルギー収支モデル(SUMM)の構築
P014 Building scale〜neighborhood scaleにおける
都市の熱・水・運動量forcingの解明
P015 都市流域における水・エネルギー循環モデルの構築と適用


 
P011 都市-大気圏における広域水・エネルギーフラックスの実態把握
森脇亮(愛媛大学)、神田学・小田僚子(東京工業大学)、菅原広史(防衛大学校)

 都市圏の水・エネルギーフラックスの実態を詳細に把握するため、固定点における詳細な水・エネルギーフラックスの同時計測を首都圏において行った。久が原住宅街および東京湾の2地点において、1年間連続で詳細な水・エネルギーフッラクスデータを得た。久が原タワーのソースエリアにおける下水流量などの水文計測も同期させた。都市接地境界層内におけるモーニン・オブコフ相似則や熱・水収支に関する貴重な知見が得られた.都市域での連続フラックス観測は世界に先駈けて行われたものである.さらに、短期集中的に、久が原で多点同時フラックス計測を行い、点計測の空間分散の把握を行った。また都市キャニオンにおける顕熱および物質フラックスのパラメタリゼーション開発のため,東京都武蔵野市の集合団地内において気温・風の計測を行った.南北に並んだ建物間において通風管付き熱電対(40地点)および超音波風速計(13地点)を設置し,都市キャニオンの鉛直断面内での分布を計測し、都市構成面の熱交換と境界層レベルでのフラックスの関係を解析した。

 
P012 東京都心周辺における積乱雲の発生特性
小林文明・菅原広史・小川由佳・今井真希・菅原祐也(防衛大学校)

 都心で発生する積乱雲の発生メカニズムを解明する目的で観測を行った。観測は主として横須賀(防大)と都内で展開した。横須賀の走水に位置する防衛大学校において、Xバンド・ドップラーレーダ、ドップラーソーダ(音波レーダ)、ウェザーステーション(自動地上気象観測装置)、ビデオカメラ等を用いた観測を行った。都内における観測は、2004年に複数のドップラーソーダとウェザーステーションを用いた観測を実施した。ドップラーソーダは、海風の進入経路に対応するよう、新宿(新宿御苑)、練馬(区役所屋上)、朝霞(埼玉県)に設置し約1ヶ月の集中観測を行った。解析ではアメダスデータ(気象庁)以外に、東京都が独自に設置した地上観測データ(METROS)を使用した。レーダーエコーによる解析により、風のシアーラインが積乱雲発生のトリガーとなり、海風前線が積乱雲の発達に寄与していたことなどが示唆された。

 
P013 屋外模型都市を用いた気象実験と都市エネルギー収支モデル(SUMM)の構築
河合徹(東京工業大学・科学技術振興機構CREST研究員)、神田学(東京工業大学)

 本研究では大規模屋外模型都市実験(COSMO)および都市エネルギー収支モデルの構築を行った.COSMOでは通年で得られた観測結果を用い、熱収支、陸面パラメーターの検討を行った.熱収支の検討では,COSMOの結果及び現地観測より得られている結果を統一的にまとめ,これまで不明確であった都市熱収支の季節性,風速依存性,及び熱的な履歴を明らかにし,これらのメカニズムの解明を行った.陸面パラメーターの検討では,統一的な理解が得られていない都市域の熱粗度(スタントン数)に対する検討を行い,陸面モデルに適用することができるモデル式を提案した.
 都市エネルギー収支モデルの構築では,都市の3次元幾何構造を陽的に考慮したキャノピーモデルSUMMを構築した.COSMOより同定したスタントン数に対するモデル式をSUMMに適用し,COSMO,及び3現地観測より通年で得られた熱収支データベースを用いて詳細なモデル検証を行った.観測サイト,季節を問わずSUMMは都市の熱収支,表面温度を極めて良好に再現することが確認された.

 
P014 Building scale〜neighborhood scaleにおける
都市の熱・水・運動量forcingの解明
成田健一(日本工業大学)、谷本潤・萩島理(九州大学)

 本研究では壁面緑化、建物緑化および保水性舗装、を対象とした屋外観測を行い、渦相関法の適用が困難な都市域の小面積のwet面における顕熱・潜熱フラックスの観測手法を確立した。また、ポット植栽を用いた屋外実験を行い、単独樹木の蒸散量が高密度群落の樹木に比べ大きくなる事を示し、都市植生におけるオアシス効果の大きさを明らかにした。
 次に、キャノピー表面のスカラーバルク係数及び運動量バルク係数について風洞内模型、屋外縮小模型、屋外実大建物を対象とした観測を行い、運動量とスカラー、模型のサイズ等の影響についての検討を行った。
 次に都市における多様な人間活動のスケジュール予測モデルをベースとした、職業・年齢などの属性別、曜日別のエネルギー・水デマンドの予測モデル構築を行った。
 最後に、アルベド及び都市形状についての調査を行い、多層都市キャノピーモデルの入力パラメータの整備を行うとともに、多層都市キャノピーモデルのプログラムコードを様々な都市条件・気象条件に対応出来るように汎用化を施し、プリ・ポスト機能を付加したWindows用パッケージをFortranのソースコードとともにwebにて公開した。

 
P015 都市流域における水・エネルギー循環モデルの構築と適用
木内豪(福島大学),賈仰文(中国水利水電科学研究院),宮本守(日本大学)

 下水道・排水路・河川といった人工的水循環に関わる社会基盤整備の状況や流域の地形・土地利用・地質条件を反映した水循環・熱輸送のカップリングモデル(都市生態圏から水圏へのフォーシングモデル)を構築し,水循環に伴うエネルギー輸送量を動的に予測できるようにした。
 東京都区部内を流れる神田川流域を対象に,水・エネルギー輸送のカップリングモデルを適用した。当該流域の都市基盤・経済活動等(地形,地質,土地利用人口・世帯数,上下水道,排水路・河川)に関するGIS情報を整備し,分布物理型水循環モデル(WEP)に熱輸送モデルを組み込み,流域の水循環・熱輸送過程をシミュレーションにより再現した。
 本モデルによって河川流量・熱量や処理場への流入水量・熱量など,水・熱循環系について良好に再現できることが示された。また,都市河川の河川水温は,冬期には処理場からの放流水などの人工系水循環の影響を強く受ける一方,夏期には,日射の他,河床伝導熱,河川の幾何形状に依存した放射,周囲建物からの放射,街路樹等による日射の遮蔽が大きく関与していることや,地下水温・地温とも関係しており,水温形成過程はきわめて複雑であることが解析により示された。


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