水の循環系モデリングと利用システム

 

第4回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

船水尚行研究チーム


P021 研究プロジェクトの全体像
P022 秩父実証実験(1)
P023 秩父実証実験(2)
P024 沖縄実証実験
P025 インドネシア実証実験


 
P021 研究プロジェクトの全体像
船水尚行(北海道大学)

 本研究プロジェクトの背景となる,なぜ今新しいサニテーションシステムが必要かMillennium Development Goalsの関係から概説し,新しいシステム構築にあたり,二つのキーワード「集めない」,「混ぜない」の重要性,そして,本プロジェクトで開発しようしている排水分離・分散型処理システムの概要とその利点を整理した.加えて,本プロジェクトを構成する4つの要素研究グループと二つの実証研究(国内,国外)グループの概要を記した.

 
P022 秩父実証実験(1)
船水尚行,伊藤竜生(北海道大学),横田光正(三菱商事(株)国際戦略研究所)、
大瀧雅寛(お茶の水女子大学)、蛯江美孝(国立環境研究所),
小野田優(いであ(株)環境創造研究所)

 農村や漁村などはそれぞれに応じた地域経済があり,また湖沼や海の汚染に直面している.これについて2002年,横田は地域の自然や文化,生活様式を重要視した環境保全を行うための最適化された概念に基づいたイノベーションプラットフォームを考案した.その翌年,埼玉県の山林地域である秩父市において,生活者,地域社会,地方自治体および研究機関が同じ将来像を共有した上で,その地域の自然に調和したバイオマスや水の循環を含んだ持続可能なサニテーションシステムを提案した.このシステムでは,雑排水を再利用し,屎尿の有機肥料としての利用が期待される.
 2004年には本研究チームはJST,CRESTの支援により,この新しいシステムを具体化すべく,屎尿や雑排水を混ぜない排水分離分散型処理システムを基礎とする実証試験施設を秩父市内の民家にて稼働させた.ここでは,屎尿や厨芥をコンポスト型トイレで処理,そのコンポストを農業利用し,また雑排水は傾斜土層法により処理する.
 傾斜土層における生活雑排水の1年間の処理結果について,BOD,CODおよびSSは90%以上が除去された.好気層と嫌気層が形成されたことが確認されたが,窒素の除去はそれほど高くなかった.リンについては約80%が除去された.

 
P023 秩父実証実験(2)
船水尚行,伊藤竜生(北海道大学),横田光正(三菱商事(株)国際戦略研究所)、
大瀧雅寛(お茶の水女子大学)、蛯江美孝(国立環境研究所),
小野田優(いであ(株)環境創造研究所)

 埼玉県秩父市の民家において排水分離分散型処理システムの実証試験を行った.ここでは,屎尿や厨芥をコンポスト型トイレで処理,そのコンポストを農業利用し,また雑排水は傾斜土層法により処理する.コンポスト型トイレを約1年間の運転し,病原性微生物,医薬品類の蓄積および,エネルギー消費についての検討を行った.その結果,腸内細菌の抑制にはコンポストマトリックス中の含水率を低く,また温度を高く保つことが効果的であると確認された.糞便性連鎖球菌については,腸内細菌とは異なりその個体数の減少速度が小さいため,取り扱いに注意を要することがわかった.コンポスト中に存在すると考えられる10種類の医薬品について,0.013〜1.1ppmの濃度の定量限界であり,ケトプロフェンは使用量とともに蓄積する傾向が見られた.電気エネルギー消費量を削減するため,米ぬかを毎週2kg投入した結果,順応に1ヶ月ほどかかり,その後は1日あたり5〜10MJの発熱量を得た.これは全体の電気消費エネルギー消費量を20〜30%ほど代替した.また,米ぬかが持つ低位発熱量の40%ほどが生分解による発熱として検出された.

 
P024 沖縄実証実験
(財)ダム水源地環境整備センター,沖縄工業高等専門学校,
北海道大学,国立環境研究所

 サニテーションシステムを構成するコンポストトイレと傾斜土槽システムの亜熱帯気候における性能を調べるため,沖縄において実証実験を行った.コンポストトイレについては,推奨使用頻度に対して実使用頻度が高い場合には水分過剰で悪臭も発生したが,反応槽内を70℃にすることで悪臭が押さえられた.この場合,1日の電力消費は高いが,使用1回あたりでは158Whと効率は向上した.一方で,極めて使用頻度が低い場合では極端に効率が悪くなり,アンケート調査の結果においても使用頻度に応じた水分管理が重要であることがわかった.雑排水処理のための傾斜土槽システムについては,これまでに行ってきた鹿沼土を充填したシステムと平行して地域に存在する充填剤として3種類の土壌を用い,その比較解析を行った.その結果,本システムでは26℃以上において特に高い処理効率が見られ,また地域の土壌を用いた場合,適切な種類の組み合わせによって鹿沼土と同等の処理性能が得られたことから,本システムは亜熱帯気候の様々な地域で省コスト・高効率な処理システムとして有効であることが示唆された.

 
P025 インドネシア実証実験
東京工業大学,インドネシア科学技術院

 バンドン市のスラムを対象として,トイレと周辺水環境に関する現地調査を行った.現地では水洗式トイレが普及し,そのための水使用量は家庭用水の41%に及ぶ.屎尿処理方法は47%がセプティックタンク,残りは未処理排水であった.セプティックタンクのスラッジは公然と河川に投棄されている.屎尿は実質垂れ流しに近い.この状況の根本的な解決方策として,コンポストトイレを用いたシステムが考えられる.検討にあたっては,コンポストトイレの現地向け改良,コンポストの収集輸送システムの構築が重要となる.現地向け改良として,プラスチック容器を用いた簡易版を作成し,テストを行った.収集輸送システムは,現行のゴミ収集システムを雛形に設計を行った.そして,ゴミ収集人の収集能力,賃金等からコンポストの収集量,収集費用を試算した.十分実現可能性があると考えられた.




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