水の循環系モデリングと利用システム

 

第3回領域シンポジウム
ポスターセッション

  

沖大幹研究チーム


P001 世界水循環モデリング
P002 世界水資源アセスメント及び将来予測
P003 高解像度アジア水田分布図の作成
P004 国際交易と農業土地利用変化
P005 都市用水および工業用水使用量の全球分布と将来予測


 
P001 世界水循環モデリング
沖 大幹(東京大学生産技術研究所)

 現在の地球水循環状況を世界各地の研究機関が出す複数の陸面モデルを使って、1986-1995年の同一のフォーシングデータでシミュレーションし、アンサンブル平均で陸地の水、エネルギー循環量の再現ができ、さらに高解像度の土地利用情報などを使って、現在地球上主なランドスケープにおける水循環図を作成した。河川流量をダムの調節による大きく変わり、本研究チームはダム操作と農業用水需要を考慮した農業・ダム・河川結合モデルを開発した。よって人間取水の影響を全球の水循環プロセスに組み込むことができた。より小さい時空間スケールでの水資源評価もできるようになった。

 
P002 世界水資源アセスメント及び将来予測
沖 大幹(東京大学生産技術研究所)

 世界6機関の大気大循環モデルのIPCC窶粘RESシナリオに沿った気候予測と人口・経済発展予測を基づいて現在と将来の水資源需給状況を推定した。流域ベースでの評価では、全球において高い水ストレス(取水量/水資源量>0.4)がかかる人口は、現在約20億強、将来(2055年頃)にはシナリオによって、40-70億人に増加する。さらに、2075年ころに、シナリオによっては減少する傾向もあれば、増え続けるものもある。このような相違性は、人間社会の水利用・水管理に対しての行動指針になるものと考えられる。この結果と現在の水循環水資源の結果をマージして、サイエンス誌にレビュー論文として公表された。

 
P003 高解像度アジア水田分布図の作成
安岡義文(東京大学生産技術)

 水田は,世界の総面積のおよそ90%がアジアに分布するとされており,数十億人の食料源である米の生産場所として重要な地位を占めており,これから抱える人口増加問題や水問題においてその重要性を増すと考えられる。さらに近年は,地球温暖化ガスの一つであるメタンの主要な発生源として,西シベリアやカナダに分布する泥炭湿地とともに,その重要性が指摘されている。現在,全地球レベルでの水田での環境変動が激しく,どのような水田がどこに分布しているのか,また,その水田環境がどのように変動しているのか,正確な情報は極めて少ない。本研究では,これまで衛星観測の適用が限られてきた水田の分布図作成について,MODISとASTERによる可視・赤外のリモートセンシングを利用することにより,世界最大の稲作地帯であるアジアに適用する研究を行った。水田は地表面被覆状況が複雑で,広域低解像度衛星データのみでは判別の困難であったが,時間分解能と引き替えに失われる空間分解能の粗さを,高空間分解能センサであるASTERを併用することにより克服し,地表面の時系列変動を湛水状態に着目した指数を用いて定量化することで,分布図作成手法を確立した。可視赤外データの欠点である雲をはじめとしたノイズを合成画像作成手法の開発により最小限に抑え,大気補正,放射量補正,幾何補正といった前処理手法にも新たに検討を加えた。また,次世代観測計画に基づいた長期的展望および手法の汎用化を行い,世界最高精度である500m空間分解能での水田分布図を作成した。

 
P004 国際交易と農業土地利用変化
松村寛一郎(関西学院大学)

 人口増加、経済発展、地球温暖化の影響により地球規模で食料需給が逼迫する可能性がある。国連食糧農業機関により開発された国際交易モデル(IFPSIM)と効用関数に基づく土地利用変化モデル(LUCM)、生産性を説明するモデル(EPIC)の融合により小麦、トウモロコシ、米、大豆の各品目の作付面積および生産性の実勢値を表現可能なモデルの構築を試みた。融合されたモデルは、所得、人口、為替レートが外生変数として与えられている部分均衡モデルであり、東西方向3600×南北方向1405の格子点上に表現することが可能な構造となっている。IPCCのSRESシナリオ(A1b:高度成長社会、A2:多元化型、B1:持続発展型、B2:地域共存型に基づく経済成長率予測および国連の中位推計値を用いて西暦2020年までの作付面積予測および4品目に関する全世界の需要と供給を一致させる均衡価格の推計を試みた。A1bシナリオに基づいた経済成長率では、均衡価格が上昇し、増加する需要に供給が追いつかなくなる可能性があることが示され、A1bシナリオ以外への方向転換が必要であることが示された。

 
P005 都市用水および工業用水使用量の全球分布と将来予測
大瀧雅寛(お茶の水女子大学)

 グローバルな水の需給バランスを把握するため,都市用水使用量および工業用水使用量を,0.5〜1度のグリッド化データとする手法についての検討を行った。都市用水使用量においては,詳細データの揃っている数カ国において,都市人口比率および水道普及率との状況を調べ,都市域と非都市域,水道普及地域とそうでない地域における水使用量との関係を検討することにより,国別データをグリッドデータ化することができた。工業用水使用量は日本の詳細データを分析して,都市域面積と使用水量に明確な相関が存在するグリッドサイズを判定でき,その結果から全球グリッド化が可能となった。
 都市用水需要量未来予測に関しては,4つの温暖化シナリオ毎に,GDPおよび都市人口比率の推移を把握し,需要量予測に役立てた。また発展途上国としてタイ王国で実施した用途別生活用水使用量のデータを基に,経済発展および都市化における使用量の増加率を用途毎に把握することにより,一人当たり使用量の予測に根拠を与えた。工業用水需要量の予測に関しては,現在のGDPおよび水使用量の相関を外挿し,各国の主要産業を類型化して回収率をそれに応じて設定することで予測を行った。



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